トルコ大国民議会司法委員会が、司法改革法案を承認した。法案では、裁判官・検察官の報酬増加、正当な疑いに対する身体・家宅捜査、行政裁判所及び最高裁判所の人員・法廷数の増加が盛り込まれている。
トルコ大国民議会司法委員会は、「司法改革法案」として知られる「複数の法改正実施に関する法律案」を承認した。
これによると、閉鎖、開設、あるいは4級から3級に移行する公証役場が政府広報で通知される。現行では、公証役場は政府広報のほか、イスタンブル、アンカラ、その他法務省が適当と認める地域で発行される各新聞で通知されている。トルコ公証協会が公証人に発行するIDカードは、全ての公的・民間組織により受け入れられる公式IDとなる。
任命の際、等級が同じであれば、公証人の序列が優先される。序列が同じである場合は、法務省が発行する公証文書の番号が若いものから選ばれていく。
公証人が病気を理由として職務を一時的に離れるに際して、共和国検察局ルートで官医あるいは国立病院の医師から診断書を取得するという条件は撤廃される。
公証手続きの電子化に向けた調整が行われる。これにより、電子環境において高度なセキュリティを備えた電子署名を用いることも可能となるだろう。ただし、取決め通りに行われなければならない手続きや意思表示に関する手続きにおいて高度なセキュリティを備えた電子署名を使用するには、公証人の前で行わなければならない。
公証業務におけるあらゆる情報、文書は、高度なセキュリティを備える電子署名により電子環境で処理・保管され、必要に応じて個人・組織に電子環境で送信される。アクセスされた情報、文書は、トルコ公証協会のシステムに記録、保管される。
公証手続きが書面に基づいて行われる場合、当事者、代理人あるいは代表者が書面の写しに電子署名を行い、電子環境で公証人に送信される。
行政司法で5年の実務経験を持つ裁判官若しくは検察官であり、大統領により選ばれた行政裁判所人員のうち法学部出身者でない者は、申請により、高等教育機関の法学部に、既存の定員に追加する形で、無試験で在籍できるようになる。
最高裁判所では十分な調査担当裁判官が存在することになる。調査担当裁判官は、裁判官・検察官高等委員会(以下、HSYK)により、最低5年の実務経験を持つ司法裁判官及び共和国検察官の中から選ばれる。
■司法年度年開きは撤廃
最高裁判所法規で「年開き」の催事を定める条項は無効となる。条項では、「司法年度は、アンカラの年開きにより開始される。最高裁判所第一長官が年開きのスピーチを行う。スピーチ原稿及び式次第には、事前に閣議の意向が反映される」との規定が設けられていた。
最低3年の実務を積んだ弁護士が、裁判官・検察官候補試験を受けることが出来るようになる。つまり、現行の5年の実務期間が短縮されるのである。
司法調査官に加え、HSYK調査官、法務省内部監査官の報酬も月額5%を上昇することとなる。
最高裁判所長官、行政裁判所長官、最高裁判所共和国主席検察官、行政裁判所主席検察官、行政裁判所長官代理、最高裁判所共和国副検事長、法務省次官、最高裁判所及び行政裁判所員、一級及び一級に数えられる裁判官及び検察官、その他裁判官及び検察官(1万5千人)に対し、公務員の月額報酬に適用される指数を係数で掛けた額が月額報酬に加えられ、支払われる。今回の改正により、裁判官及び検察官の給与は1,154リラ上昇する。
■裁判官及び検察官への懲戒処分に対する恩赦が行われる
民事・刑事司法裁判官及び行政司法裁判官と検事に対し、2005年2月14日~2013年9月1日まで行われた警告、月額報酬カット、譴責、昇進停止といったペナルティ全てが恩赦の対象となる。今後はこの恩赦の範疇に入る懲戒処分該当行為を理由とした、関係者に対する規律調査、取調べは行われなくなる。現在継続中の規律調査、取調べについても、調査対象外とされ、すでに課された処分も免除される。
2005年2月14日~2013年9月1日までに下された懲戒処罰に関する申請は、60日以内にHSYK総会で審査される。総会は、申請拒否を決定することができ、さらには過去の決定の取消し、あるいは対象行為に応じた低級の懲戒処分を下す。
懲戒処分に対する恩赦は、関係者に対し過去の期間につき個人の権利、金銭的要求を行ういかなる権限も与えない。
司法改革法案では、法務省の国外機関が設立される。中央、地方、国外機関からなる法務省が誕生する。国外機関の任務に就く司法顧問には、裁判官・検察官として最低5年の実務で優秀な成績を収め、国外業務において有用と見なされる人員の中から任命される。
国外機関への赴任を命じられた司法調査官の任期は、裁判・検察職の経験としてカウントされる。司法調査官に関する成績記録は法務次官が取る。
トルコ、あるいは高等教育機関により同等と認められる国外大学で、学部水準の学業を優秀な成績で終了した各国の国籍保持者と、無期限の居住労働許可を有する者は、法務省により現地で雇用契約を結ぶことが出来るようになる。
司法改革施行日に国外機関で司法調査官として任務に当たる者は、代表機関へ任じられた司法調査官と見なされる。
裁判官・検察官候補が受ける見習い教育後の筆記試験で成績が思わしくなく、一般行政職の職員に任じられた者、若しくは裁判官・検察官候補対象から外れた者は、改正施行日より1ヶ月以内に、新たに筆記試験受験のため、トルコ司法アカデミーに申請することが出来る。
刑罰裁判所法が定める「容疑者若しくは被疑者に関する捜査」条項の変更により、「拘束出来る、または、犯罪の証拠が入手出来、具体的証拠に基づく有力な疑いが存在する場合において、容疑者若しくは被疑者の身体、荷物、住居、勤務地及び関連場所を捜索出来る」という条文の「具体的証拠に基づく有力な」という箇所が、「正当な」に書き換えられた。
■差押えの範囲が広がる
不動産、債権等の差押え範囲が広がる。トルコ刑法では、「憲法秩序及びこの秩序機能に対する犯罪」という項目で、「武装組織」あるいは「組織への武器提供」を理由に差押え決議が下されるが、加えて「憲法違反」、「立法府に対する犯罪」、「政府に対する罪」、「政府に対する武力反乱」、「武装組織」、「武器供与」、「犯罪の合意」の捜査においても差押えの決定が可能になる。
犯罪捜査・起訴において、犯行に関する具体的証拠に基づく有力な疑惑根拠がなく、他の方法で証拠が入手出来ない場合、重刑裁判所若しくは検察官の決定により被疑・容疑者の通信傍受ができる。また、これを記録に取り、信号解析を行えるが、犯罪を決定付けることは出来ない。
被疑・容疑者の通信傍受の決定は、捜査段階では裁判官、起訴段階では裁判所の決定に従う。この決定では、容疑の種類、対象者の身元、通信機器の種類、電話番号あるいはその他の通信アクセスを特定するコードと追跡期間が定められる。
「国家の不可分な一体性を脅かすこと」ならびに「憲法秩序とその秩序機能に対する犯罪」が追跡される。
■弁護士の調査権限が制限される可能性あり
弁護士が捜査調書の内容を調べること、文書をサンプリングすることに制限が設けられる。上記の行為が捜査目的を危険にさらす可能性がある場合、検察官の要求及び裁判官の決議により制限を設けることが出来るようになる。この制限は「殺意による殺人、性的暴力、子供への性的虐待、麻薬あるいは覚醒剤の製造販売、犯罪目的での組織設立、国の安全を脅かす犯罪、憲法秩序やその機能に対する犯罪、国家犯罪に対する犯罪・スパイ行為、武器の違法売買、横領、闇取引」のカテゴリーに属する犯罪捜査で適用される。
しかし拘束者あるいは容疑者の供述を含む調書、専門家報告書、法手続に関する記録については、制限は設けられない。
弁護士は、裁判所が起訴状を受理した日付以降、調書内容、保管されている証拠を調べることが出来るようになり、あらゆる記録、調書サンプルを無料で入手できる。
2019年12月31日迄、第一審刑事裁判所で行われる審理に検察官が入ることはなくなり、参加しても検察官の見解が採用されることはない。
裁判官・検察官候補期間後に行われる筆記試験に合格したものの任用されない者は、改正施行日より60日以内に、任用願書を担当組織へ申請する。
司法改革法案によると、法務省の国外機関には、司法調査官30名が任命される。
■行政裁判所の閣議に対する新たな権限
行政裁判所司法調査官の任地は、閣議ではなく、行政裁判所委員会が決定を行う。
行政裁判所は15の法廷、2つの運営局からなる計17局により構成される。
行政裁判所人員は、行政裁判所委員会の決議により、各局に分けられ、業務の必要に応じて同じく決議を得ることで変更され得る。
行政裁判所法廷で職務を遂行する人員について、法律学部、法律知識科目も扱われる政治学部、行政学部、経済・財政学部での高等教育修了要件はなくなる。
行政裁判所執務委員会は、毎年初めに運営部の長らと行政裁判所委員会によって全運営部より選出される部員1名と、各法廷より選出される委員長1名若しくは委員1名により構成される。委員会選挙で決定した人員構成で欠員が出た場合、委員会により30日以内に選挙が行われる。
行政対立及び裁判を調査し、結審を行う法廷に第16法廷が新たに加えられる。担当法廷の調書のうち、税務・行政訴訟に関する業務は区分けされ、どの法廷にどのように引き渡されるか、担当となる法廷に引き渡された分野でどう業務が切り分けられるのかについては、行政裁判所委員会の決議で明らかになる。
行政裁判所委員会は、業務負荷の観点からやむを得ない場合、税務訴訟法廷、行政訴訟法廷、行政法廷の業務範囲を変更することが出来る。
執務に関する行政訴訟及び業務は、第1法廷及び執務委員会の他、第17法廷が担当する。
行政裁判所長官による運営部間の業務区分けは、今回の司法改革法案から外れた。
司法改革法案では、行政裁判所委員会の業務範疇とされている「行政裁判所人員の勤務場所の選定、やむを得ない場合の法廷裁判長・職員の法廷変更、司法調査官が実務を行う法廷・委員会と業務内容の明確化、必要に応じた勤務場所の変更、法廷間での業務割当決議案作成」といった業務は、行政裁判所委員会に譲渡される。
業務に関する委員会の決定は絶対である。この決定につき、他の司法権限に適用されることはない。
司法改正施行後15日以内に行政裁判所で新規39名の新たな選任が行われる。選任後、行政裁判所法廷間の業務範囲、法廷長官・所属員・司法調査官がどこで職務に当たるかに関するプロセスが進められる。
■最高裁判所に法廷を8つ追加
法案は最高裁判所法の変更も見越しており、最高裁判所の小法廷数は38から46に増える。民事小法廷23、刑事小法廷23で構成される。全ての小法廷で裁判長1名と十分な人員が確保される。
改正施行後15日以内に最高裁判所の人員編成をHSYKによって選出される。その後、第一委員会が指定され、大法廷の業務範囲に関するプロセスが進められる。
裁判官と検察官は、警察総局の銃刀、その他機器に関する法律に従い、保証付きの銃は国産・外国産を問わず法的要件を満たすことで個人保有の銃器として取引できる。
裁判官および検察官と高等裁判機関所属員に与えられる職業IDカードは、すべての公的組織・民間組織により公式IDとして認められる。
一等刑罰裁判所が複数存在する場所では、特別法による判例がない場合、専門性を担保する目的で、業務の専門性及び性質が考慮され、小法廷間の業務分担がHSYKにより明示される。HSYKによる業務分担の明示日より、担当案件を持つ裁判所は、分担変更を理由に調書を他の裁判所に送ってはならない。
承認された公正発展党の司法改正提案に従い、最高裁判所の選任者数は、128から129へ変更される。行政裁判所は、新規39人に加え、検察官23名、司法調査官50人が選ばれる。
■新条項が追加
公正発展党の提案により、司法改正案には新条項が加えられた。
行政裁判所及び最高裁判所人員の選出条件は、裁判・検察職における勤務年数が20年から17年に短縮される。
行政裁判所税務訴訟審議会では、大規模な組織再構築が行われる。
各法廷の業務範囲案は行政裁判所委員会が作成する。
行政裁判所行政訴訟審議会が改正施行後3年と定められている業務の継続期間を2016年12月31迄に短縮する。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:山根卓朗 )
( 記事ID:35866 )