コラム:大々的戦争を回避するヒズブッラーとイスラエル
2015年01月28日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ヒズブッラーとイスラエル、そして公開戦争の回避
【社説】
ヒズブッラーは昨日、被占領地シャブアー農場において、イスラエルの軍用車複数に対して攻撃を行い、イスラエル人兵士2名を殺害、7名を負傷させた。この攻撃は、特に、殺害された兵士の一人がGivati旅団(訳注:イスラエル国防軍歩兵部隊)の中隊指揮官であったことから、イスラエル側にとっては強力な痛手であったとみなされる。しかしこれは、シリアにおいて1月18日に行われたイスラエルの空爆に対する報復として予測された程の攻撃にはなっていないようである。先の空爆は、ヒズブッラーのメンバー5名と、イランの上級士官を死亡させている。死亡したヒズブッラー要員の中には、2008年にシリアの首都ダマスカスで起こった自動車の爆破により死亡したイマード・ムグニヤ氏の息子、ジハード・ムグニヤ氏も含まれていた。
シャブアー農場作戦は、イスラエルを公けの戦争に引き込むことがないように検討された形で行われた。シリア戦線に集中しているヒズブッラーにとって、このタイミングで情勢を激化させるのは不適切である。同時に、この作戦はレバノン南部とゴラン高原の被占領地においてイスラエルを消耗戦に誘い込んでいるようであり、この見解についてはイスラエルの軍人多数が一致している。
シャブアー農場作戦の前日には、被占領地ゴラン高原のイスラエルの軍事拠点複数が、ヒズブッラーとイラン革命防衛隊が掌握しているゴラン高原内のシリア軍基地からミサイル攻撃を受けた。昨日と一昨日続けて、白昼行われた2つの作戦から、ヒズブッラーとイランが、必要以上に長く続いた静寂の後、この2つの戦線に再び緊張をもたらそうとしていることが伺われる。レバノン南部戦線には(軽微な事故は除き)8年間にわたって静寂が行き渡り、一方ゴラン高原の戦線では40年間以上、流血をもたらすいかなる攻撃も起こらなかった。そしてヒズブッラーはこの緊張の高まりをもって、これらの地域のイスラエル人をシェルターに追い戻し、シャイフ山を闊歩するイスラエル人がいなくなることで満足している。
イスラエル側から言えば、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの緊張を選挙キャンペーンに利用し、イスラエルのために反撃することができる強い男というイメージで自身を売り込もうとするだろう。しかし、同首相の対応は、地域を大規模な戦争に引き込むことがないよう計算された形で行われ空爆と砲撃の範囲を超える可能性は低い。もし行き過ぎて戦火が拡大した場合、イスラエルはヒズブッラーのロケット弾攻撃にさらされ、その人的損害は、選挙を7週間後に控える同首相の評判に悪く反映されるだろう。
ネタニヤフ首相はこの緊張を、複数の戦線においてためらうことなく利用するだろう。特に、同首相が昨日の攻撃の責任を負わせているイランとの緊張の高まりにおいてである。つまり、同首相はイランの核計画に対する反対キャンペーンの地歩を固めようとするだろう。そして、ネタニヤフ首相がこの緊張を、イランと同国の核計画をめぐる交渉におけるバラク・オバマ米大統領の政策への批判を高めるために利用する可能性も否定できない(オバマ大統領は次回のワシントン訪問の際ネタニヤフ首相と面会することを拒否している)。
この緊張の高まりは、選挙を数週間後に控えるネタニヤフ首相が利用する一方、ヒズブッラーにとってもイスラエルに自身の力を思い出させ、さらにシリアでの戦争に関与したことで大きく損なった評判を取り戻すための機会となっている。
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( 翻訳者:前田悠作 )
( 記事ID:36896 )