専門家の見解(3):精神刺激薬の使用による殺害
【アリー・バーグバーニヤーン(精神科医・テヘラン医科大学学術委員)】「家族の聖域を守るため」という狂信的な考えが、尊属殺人の主な原因である。
例えば、人は姉(妹)や母親、あるいは妻が許されざる関係を他人ともったと考えて、彼女を殺す権利が自分にはあると考えてしまうことがある。こうした要因は文化的、社会的条件によって、国内の一部の州では他より顕著である。
調査が示すところによると、尊属殺人を犯した人物の3分の1は刑事罰を受けた前科がまったくないという。このことが示すのは、この種の人々は事前の計画なしに、ただ突発的な怒りに影響されて、一撃によって一人の人間を死に至らしめる殺害犯になってしまう、ということである。
突発的な怒りは尊属殺人発生の重要な原因である。こうしたケースは精神病患者に多いが、しかし近年、尊属殺人でよく見られる原因は、覚醒剤やアンフェタミンといった精神刺激薬の使用に影響された殺人である。しかしその一方で、アルコールの摂取に起因する殺人は、国内では少ない。
尊属殺人犯は逮捕後、瞬間的な狂気に影響されて殺人を犯してしまったと主張する。狂気を主張しても、無罪放免の理由にはならず、事件発生のときに、瞬間的な狂気の状態にあったというだけで、自らに殺人の許可を与えることは、誰にもできない。
専門家の見解(4):アリー・ナジャフィー・タヴァーナー博士(犯罪学者)
尊属殺人は多くの場合、文化や教育のレベルの低い家庭で起きる。こうした家庭の人々は、怒りをコントロールする能力がない。こうした殺人犯らは対話によって解決することの可能な問題であるにもかかわらず、それを理由に〔家族の他の成員と〕衝突し、最終的には殺人を犯してしまう。彼らは逮捕後、良心の呵責に襲われ、自分のしたことへの悔いを表明する。
尊属殺人では、多くの場合、絞殺かナイフによる刺殺によって殺人が起きる。他方、多くの殺人犯はキサース(同害報復刑)に処されない。このことが、尊属殺人の件数を高めている。
配偶者殺害では、殺害方法やその動機はさまざまである。男は多くの場合、猜疑心から瞬間的な怒りの影響で殺人に手を染める。しかし女は多くの場合、事前の計画を立て、睡眠薬などの助けを借りて、殺害に及ぶ。
家庭内暴力や尊属殺人、それも金銭的な諍いや突発的な暴力によるそれが増えており、このことは各家庭の文化レベルの向上や、殺人を正当化してしまう可能性のある法的欠陥の除去に向けた、社会各グループの責務をかつて以上に重たいものにしている。こうした殺人は多くの場合、家庭という環境で起こっており、この予防に警察の出る幕はない。
些細な問題や不和が原因で、家庭という環境で死へと直結するような衝突が起きないようにするためには、われわれが社会における我慢・忍耐のしきい値を高めてやる必要があるだろう。
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( 翻訳者:メメン・トモリ )
( 記事ID:36919 )