被害者の夫が自宅付近の公園で拘束されたとの一報が入ったのは、恐ろしい殺人事件から一時間もたたぬ頃、予審判事と刑事らが近隣住民への聞き込みに力を入れていたときのことだった。
こうしてその数分後、服や顔、頭には血や争いの跡が残った状態の年老いた男が、警察官によって逮捕され、事件現場に身柄を移された。
現場にいたの者たちは、年老いた男の様子を見て、驚きを隠せなかった。この男が自分の妻を殺したとはとても思えなかったからだ。年老いた男は腰の曲がった状態で、部屋に入ってきた。
男を見た予審判事は、次のように尋ねた。
どうして奥さんを殺したの?
—本当のこと言いますとね、裏切り(不倫)の報いは死だ、ということですよ。
予審判事と警察官らは、この老人の口からこのような言葉が発せられるのを聞いて、多少なりとも耳を疑った。
何歳になるんですか?
—78だ。
奥さんは何歳だったの?
—60歳くらいだったかのお。
裏切りって、どういうこと?
—みんな知ってる、アレのことだ。
どういう根拠があって、そんなこと言うの?
—確信があるんだよ。
思いもかけずこのことについて話してしまった老人は、予審判事の命令で事の次第を次のように話し始めた。
シャフナーズ〔※殺された女性の名前〕と結婚して40年になる。ただし、彼女は私の2番目の妻だった。最初の妻は娘を産んだ後、死んでしまった。娘には世話が必要だったし、私も一人では娘を育てることができなかったので、周りの人たちの進言もあって、シャフナーズと結婚した。私より少々年少だったが、私と結婚し、娘の世話を見ることを承諾してくれた。
最初のうちは、これといった問題はなかった。彼女はすぐに妊娠し、息子が生まれた。彼女は子供たちに区別を設けず、両方に愛情を注いでくれた。娘は結婚後、夫と一緒に地方に行ってしまった。
私は徐々に歳を取り、18歳という歳の差がはっきりするようになった。シャフナーズと外出したりすると、私は彼女の父親と間違えられるようになった。このことが私をいたく苦しめた。
しかし引退し、家にこもるようになると、シャフナーズはブツブツ不平を漏らすようになった。そしていつもあら探しをするようになった。いつも一人で、あるいは息子と旅行に行ったり散歩に出かけるようになり、私には見向きもしなくなった。最近では、濃い化粧をし、分不相応なけばけばしい服を着るようになった。
妻に小言を言うと、「私はアンタみたいに、まだもうろくしてないのよ。人生の残りを病人の面倒に費やすなんてまっぴらだわ」なんて言ってくる始末。彼女の言葉に、私は大いに傷ついた。そこで私は彼女に何とかして復讐してやろうと決心したのだ。
年老いたこの男が話している最中、予審判事は男の震える手と曲がった腰に目をやっていた。予審判事は自問した。「こんな震える手で、どうやったら被害者の頭部を重い石で激しく殴打することなんてできたというのだろうか。自分の妻の体をナイフで何度もめった刺しすることなんて?」
その数分後、老人の震える手は鉄製のバンドでひとつに結びつけられ、警官らによって拘置所へと連行された。
しかし、捜査官らが近隣住民への聞き取りを続けた結果突き止めたのは、殺害犯の供述とは反対に、シャフナーズは清廉潔癖かつ親切な女性で、地域ではすこぶる品行の良い人物の一人として知られており、彼女やその家族について、いかがわしい点を目撃した者は近所では誰もいないということだった。
本件を捜査した刑事が事件の最終報告を予審判事のデスクに置いたとき、彼が口にしたのは次の言葉だった。「この老人による今回の殺害事件の唯一の動機、それは彼の激しい猜疑心と、彼らの間にあった大きすぎる年齢の差だった、ということです。これは法医学も確認していることです」。
つづく
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( 翻訳者:42731 )
( 記事ID:37496 )