昨日拘束された実行犯の協力者とみられる人物(Reuters)
■治安当局 「対象外」の学生がチュニジアで37人を殺害
【チュニス:ムハンマド・ヤースィーン・ジャラースィー】
テロがチュニジアとその観光業界を再び襲った。先の3月18日に、首都中心部にあるバルドー美術館を狙い、21名の犠牲者を出した攻撃に続いてである。昨日26日、カラシニコフ銃で武装したチュニジア人青年が、チュニジア東部沿岸部のスース県で、ホテルにいた外国人観光客を含む37名を殺害した。この事件はチュニジアにおいて、史上最悪の流血の惨事であると考えられている。
チュニジア大統領バジ・カーイド・スィブスィー氏は攻撃の直後、「今日、我々はチュニジアが世界的なうねりに直面していることを認識した。チュニジアだけでそれに立ち向かうことは不可能だ」と述べ、テロに立ち向かうための「包括的戦略」を呼びかけた。
チュニジアの保健省と内務省は、この事件に関する今の段階までの情報として、次のように発表した。犠牲者は37人を数え、その大部分は外国人観光客で、イギリス人、ドイツ人、ベルギー人が含まれている。さらに、36人のケガ人が出ている。武装した犯人は逃走を試みたが殺害された。
内務省のムハンマド・アリー・アルーウィー広報官が本紙に話したところによると、テロリストは、ハマーム・スース市にある「インペリアル・マルハバ」ホテルへビーチ沿いに侵入し、観光客を襲ってその多くを殺害した。その後に治安部隊が突入し、逃走しようとしたテロリストを殺害した。
治安関係担当の国務大臣ラフィーク・シャリー氏によると、実行犯は治安当局では「調査対象外」の若者で、「カイラワーン地区(チュニジア中部)出身の学生」という。
シャリー氏は次のように述べた。「実行犯は、泳ぎにきた客のような格好でビーチ沿いの道をやって来た。持っていたパラソルには武器を隠していた。現場に到着すると、武器をビーチ、プール、ホテルに向けて使った(発砲した)。現場から離れようとした時、治安部隊により殺害された」
シャリー氏は「チュニジアにはテロリスト集団と武器が存在する。我々はこのような攻撃に曝される可能性がある」と発言した。
国家警備隊は、カンタウィー市近くのアクーダ地区で、今回の攻撃と関連が疑われる過激派の人物を逮捕した。
仏大統領の発した声明によると、同じ日にフランスとチュニジアで発生した攻撃を受けて、仏大統領フランソワ・オランド氏とチュニジア大統領ベジ・カーイド・スィブスィー氏は「対テロにおける連帯」を表明した。両大統領は電話会談にて「対テロにおける連帯、この厄難との闘いにおける協力の継続と強化の決意」について話し合った。
カンタウィー市はチュニジアで最も重要な観光地域のひとつと見なされ、世界中、特にヨーロッパから多くの観光客をひきつけてきた。観光地域は通常、今の時期のような観光シーズン最盛期はとくに、厳重なセキュリティ強化を享受している。
この攻撃により世論は怒りを渦巻くことになり、政治勢力に対して一致団結してテロに立ち向かうことを求めた。専門家たちはチュニジア政府は「治安維持の怠慢」の責任があるとした。これは、特に現政権期間に最も悲惨な流血の事件が起きたためである。
チュニジアの諸治安部隊は、複数の地域で治安関係、及びその他の重要施設を狙う計画を立てていた何十もの「タクフィール*組織のメンバー」を拘束した。また反テロ部隊がテロ計画を阻止し、武器や弾薬を没収している。治安当局は、ラマダーン月中にテロ攻撃の頻度が増すことを警戒していた。
さらに、チュニジア観光大臣サルミー・ルーミー氏は昨日(26日)、「悲惨な事件の結果、特に観光シーズン最盛期に発生したことを鑑みると、この攻撃が観光に深刻な影響を与えると予想される」と述べた。観光セクターはチュニジアの戦略的セクターのひとつであると考えられ、国民総生産の7%を占める。チュニジアの投資および投資確約の10%を観光セクターが誘致しており、労働力の10%以上が観光業に従事している。
【訳注】
*タクフィール:背教者宣言。イスラーム教徒が信仰から逸脱したとみなす同胞に対し「背教者」と宣言し非難すること。本来は宗教的権威を有するウラマーによって定められた手続きのもとに行われることであるが、近年、敵とみなしたイスラーム教徒に対し「背教者」を宣言し攻撃するテロ組織が増加している。
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( 翻訳者:田所眞帆 )
( 記事ID:37986 )