Cengiz Candar コラム:インジルリキ後・・・―対米IS攻撃協力後の危険
2015年08月14日付 Radikal 紙

シリア国内におけるイスラム国(IS)を標的としアメリカがトルコ領土から戦争を仕掛けたことにより、ISがトルコを攻撃 ―報復、あるいは制止といった目的で― 目標とする可能性がある。したがって、「安全上の優先」が「ISの脅威」に振り向けられることは絶対なのである。二つの戦局で戦争は戦えないのである…。

アメリカの戦闘機がインジルリキから飛び立ち、ISを標的として空爆を始めたことに伴い、トルコ政治は新たな段階に突入した。なぜなら、この「軍事作戦」が続けば -そしてアメリカにとって継続は100%に近いのだが-、トルコが国内外でISの攻撃の標的となるのは自ら招いたことである。

思い出そう。ISは、イラクのアル=カーイダ、またの名をアル=カーイダ・アル=ラフィデイン、すなわちメソポタミアのアル=カーイダである組織の派生である。最初の名は「統一とジハード」であり、設立者は2006年にアメリカの空爆作戦で殺害されたヨルダン出身のアブー・ムサーブ・アル=ザルカーヴィーだ。

彼の組織は、2003年11月、すなわちイラク戦争の開始から半年後、イスタンブルで2つの衝撃的なテロ行為でその名を轟かせた(2度目は11月20日)。シナゴーグ、イギリスの総領事館、そしてHSBCでの爆発テロは、多くの人々の命を奪った。

ザルカーヴィーを「設立の父」とし、彼の考えを継ぐISが、シリア国内におけるイスラム国(IS)を標的としアメリカがトルコ領土から戦争を仕掛けたことにより、トルコを攻撃 ―報復、あるいは制止といった目的で― 目標とする可能性がある。

まさにアル=ザルカーヴィーが2003年時のエルドアン政権を「アメリカと協力関係にある」としてイスタンブルを血に染めるテロ行為を行ったことを思い起こさせる行動をISがしでかす可能性を含んでいる。したがって、「安全上の優先」が「ISの脅威」に振り向けられることは絶対なのである。

インジルリキがアメリカによってシリアにおけるIS攻撃のために使用され始めることは、軍事(そして政治)上、非常に重要なことだ。そのため、「軍事作戦」が一昨晩始まったのち、アメリカの在トルコ大使であるブレット・マクグルクのツイートが私の注意を引いた。

「今晩、アメリカは、トルコのインジルリキ基地を立ったF-16戦闘機で軍事作戦を開始した(シリアまで15分という短時間での飛行である)。」
ツイートの英語原文は以下の通りだ。
“ Tonight, the U.S. began F-16 strike operations against #ISIL terrorists from #Incirlik base in #Turkey (a short 15 minute flight to #Syria).”

マクグルク大使は、中東に関するアメリカ外交上の最も力と影響力を持つ人物であるのみならず 、トップであるオバマ大統領の対IS有志連合の特別副顧問である。周知のように、特別顧問は退役したジョン・アレン氏である。彼はインジルリキ合意をアンカラで達成した人物だ。

マクグルク大使は、インジルリキから軍事作戦が始まったと述べたツイートの数時間前にも、以下のようなツイートを行っていた。

「今日アンカラで、ISのテロリストに対する共同作戦を遂行させるために集まっている。」

会合の結果と「共同作戦」における「前進」は、深夜のインジルリキからアメリカのF-16戦闘機がシリアのISを標的とした攻撃の開始となった。

非常におかしなことであるが、昨日(8月13日)、メヴリュト・チャヴシュオール外務大臣がハベル・チュルクに対し「インジルリキから昨日出発したアメリカ戦闘機は、いかなる軍事作戦にも参加していない。偵察飛行を行っている」と話した。

私たちは何を信じればよいのだろうか、アメリカの関係者の言う、「軍事作戦が始まった」という発言をか、それともトルコの外務大臣の「アメリカ飛行機はいかなる軍事作戦にも参加していない」という発言をか。

残念ながら、アメリカ関係者が「正しいこと」を述べていると信じざるを得ない状況にいる。というのは、トルコの与党関係者は、そのコントロール下の報道機関を利用して嘘の発言をすることを、悪い習慣としてしまったからだ。さらに「嘘つきの蝋燭」が「夜まで」火を灯し続けないということはどう見ても明らかであるにも関わらず、だ。

例を挙げましょう。

A Haberという名前のテレビチャンネルで、フェリドゥン・スィニルリオール外務次官にかこつけ「トルコとアメリカは、シリア領土の安全保障地帯に関して合意した。当該の地帯にISまたはシリア民主統一党(PYD)が侵攻した場合、アメリカ・トルコ両国によって攻撃が行われる」と発表したことが放送された。

私は火曜日の夜、この発表を目の当たりにしたとき、信用しなかった。シリアに関する展開を注意してみている常識人ならば、誰一人として信用するなど無理なことであった。

A Haberの報道は、ワシントン(アメリカ政府)が、PYD(と人民防衛部隊(YPG))をISと同様に見ているという意味であった。アメリカは今日まで、無理やり正反対のことを伝えてきていた。

また私は、フェリドゥン・スィニルリオール外務次官をとてもよく知っている。こういった呆れるような発表は行わないと確信している。また、A Haberは、この発表を、映像として、スィニルリオール氏の口から出たものとして放送することはなかった。

それゆえ、何時間も経たないうちにアメリカ国務省報道官のマーク・トネルは、トルコと「安全保障地帯に関して合意した」という報道と、またアメリカがPYD-YPGをも目標として空爆していくとの主張をはっきりと否定したのだ。

気になる方々は、www.state.gov のリンクから、8月11日のトネルの発言を視聴、あるいは資料を読むことが出来る。

トルコ外交の最も重要なテーマに関して、絶えず嘘を生み出し、発言する与党のスポークスマンを信じ、信頼することは、もはや不可能である。

アメリカの戦闘機が対IS攻撃のためインジルリキを使用し始めたことに戻ろう。

1.ISは、アメリカの飛行機で15分という近さという空爆対象となると同時に、アメリカにとって「近い軍事目標」となった。

2.慈悲なき空爆の影響に関して最近のものを思い出そう。アメリカは1999年、ミロシェヴィッチ・セルビア社会主義国大統領のセルビアとコソボの軍隊を、空爆のみで破壊し、コソボの明け渡しを確実なものとし、その独立に導いた。

3.1999年のセルビアと2015年のシリアは、疑いなく全く異なった状況にあるが、インジルリキは、少なくとも軍事上、または対IS闘争の観点から見れば、ワシントンにとって真の勝利の変わり目という重要な役割を担う可能性がある。

4.アメリカが、こういった時期にトルコ政府と議論し、さらにはぶつかり合ったのちに、「偵察飛行」を行うためにインジルリキを獲得した、とは考え辛い。規模を増す形で空爆すると想定することが出来る。ここに至り、国内政治も弱体化し始めた後、現与党が「ISに対するインジルリキの使用」をワシントンから取り戻す可能性はない。

これらに加えて、アメリカは、「シリア領域」において強力な空爆攻撃でISを弱体化させた後、地上ではあらゆる反政府組織以上にYPGとともに活動していくというサインを出している。

これに関し、一昨日(8月13日)NYTで紹介されたサラ・アルムフクタルとティム・ワランスによる、「トルコはISと戦うクルド人となぜ戦っている のか」というタイトルの非常に重要な資料を皆が読むことはとても有益だ(インターネットで見ることが出来るものとしてとても豊富な情報がある)。

資料では、国際世論においてここ暫く話題となっている「トルコの立ち位置」に関する否定的な意見も述べられている。

資料のある場所にある次の文章は注意を引く。

「YPGは恐らく、イスラム政府に対するアメリカの、シリアにおけるもっとも影響力を持った同盟主である。しかしアメリカの関係者らは、YPGとともに活動していることを大々的に告白するとともに、YPGが法に反したPKK(クルド労働者党)と繋がりがあることから、どれほど親密に活動しているかに関して詳細に語らないよう尽力しているのである。」

トルコにとって「二つの戦局での戦争」が過ちであることは触れた。これが、「政治的過ち」であると同様、軍事上現実的でなく、より重要なことは、「安全保障上の優先」を台無しにするという意味を帯びてくるということであった。

インジルリキがアメリカのF-16戦闘機によって新たな時代に身を投じてしまった後、トルコ政府がISと、そして「クルド側」とどれほど「協働」し、どれほど「闘争」するのかは、近い将来よりはっきりした形で明らかになる。
二つの戦局で戦争は戦えないのである…。

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( 翻訳者:木全朋恵 )
( 記事ID:38433 )