【ジャーメ・ジャム紙別冊タペシュ12面:ガザーレ・マーレキー】
朝、彼女は家を出て勤め先に向った。昨日よりも空気が少しひんやり感じられた。このことに気をよくした彼女は、今日は職場まで歩いて行こう、空気を満喫しようと心に決めた。
辺りにはひんやりとしたそよ風が舞っていた。彼女は心地よい空気を胸一杯に吸い込むと同時に、体を温かくしておこうと服の両襟を引き寄せた。
心地よい空気と学校に向う子供たちのはしゃぐ声で彼女の心もはずみ、彼女の顔からはなんとなしに笑みがこぼれるのであった。〔‥‥〕
考えに耽りながら、一本また一本と通りを過ぎて行った。三つ目の十字路を過ぎたとき、ヘルメットをかぶったバイク乗りが目に入った。気にも留めずにその脇を通り過ぎたが、少し先に行ったところで再びその男を目にした。今度も気にすることなく脇を通り過ぎようとしたが、バイク乗りの手の動きから、彼女はその男が道を尋ねようとしていることに気がついた。彼女が男を助けようと歩み寄ったその時‥‥。
何が起きたのか、分からなかった。どうしてこんなに顔がずきずき痛むのだろう。どうすることもできなかった。どこよりも両目がひりひりと痛んだ。まるで癩病に冒され、顔の皮膚が失われたかのようだった。
大声で叫びわめいた。〔周りからは人びとの〕ざわめき声が聞こえた。ある人は顔に水をかけなさいと言い、またある人は体につかないよう服を脱がせなさいと言っていた。さらに別の人は救急に電話してと言い、また別の人はここで酸かけ事件が起きたことを警察に通報してと言っていた。
酸かけ事件ですって!!!!このとき初めて、彼女は自分の身にどんな災難が降りかかったのかを悟り、気を失ってしまった。
つづく
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( 翻訳者:PM )
( 記事ID:38667 )