■「イスラーム国」と闘うのではなく封じ込めるということ
フランスを襲った連続テロで、ダーイシュ(イスラーム国)はこれがヨーロッパを襲う大嵐の始まりに過ぎないという声明を出したが、その一週間前、オバマ大統領は世界に向けて突如、声明を出していた。ダーイシュはもはやシリアとイラクに限定され、その危険はすでに封じられており、対抗するには空爆で充分であると。
その後パリの一連の事件が起き、オバマはダーイシュについて何もわかっていないこと、その真の危険の大きさを測ることができていないことを確証した。一年にわたって続く有志連合の空爆は、複数の犠牲者の首を切った、ダーイシュの処刑人である巨漢のジハーディ・ジョン(ムハンマド・エムザーウィー)をついに殺すことにはなったが、それは単なる報復攻撃に過ぎず、ダーイシュの力、その軍事的な基盤に何らの影響も変化も与ええないプロパガンダにすぎない。
パリの事件の後、トルコで最近開催されたG20で、オバマ大統領が次のように語ったのは、遺憾かつ驚きであった。合衆国はダーイシュに対する政策を変更せず、封じ込め政策を継続する。アメリカの役割は空爆に限られ、地上軍の派遣には積極的ではない。合衆国が最初に採った戦略は、長期戦を踏まえた戦略であると。
これによって、オランド仏大統領は、今求められているのは、封じ込めるための戦略ではなく、ダーイシュを破壊し、その動きを終わらせ、根を断ち切るような新しい戦略であると強調せざるを得なくなった。またオランド大統領はダーイシュに対する国際社会の政策を検討すべく、安保理の緊急会議開催を要求することになるだろう。
明らかなのは、ロシア機が落ちた後も、ベイルートとパリで爆破があった後も、ワシントンはこの考えを変えていないこと、そしてダーイシュに対する失敗続きの政策の継続に固執しているということだ。その政策はダーイシュが占領し支配する広大な土地を、1インチたりとも縮小することに成功していないというのに。オバマ政権は依然として、ダーイシュを壊滅するのではなく、封じ込めることができると信じている。これはつまり、ワシントンが次のことを望んでいることを意味する。アメリカの政権が狙う他の目的のために、ダーイシュを存続させようとしているということである。
このことは合衆国内に大きな怒りを呼び起こした。共和党派だけでなく、アメリカ大統領の政策にいらだつ様々なグループや勢力にまで広がっている。その政策はアメリカの安全を完実にすることができず、オーストラリアまで含めた西洋諸国の大半をダーイシュの潜在的細胞が数多く覆い尽くしているというのに、テロという犯罪がアメリカに至ることを確実に止めることができないと。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:八木久美子 )
( 記事ID:39211 )