レバノン:聖クルアーンの翻訳に関する国際会議の主催権は誰が有するのか
2016年01月16日付 al-Hayat 紙
■聖クルアーンの翻訳に関する国際会議の主催権は誰が有するのか
【ムハンマド・M・アルナーウート】
昨年末、レバノン北部のトリポリ(タラーブルス)において「第一回聖クルアーン翻訳国際会議」が二日間にわたって開催された。同会議はアラブ翻訳者協会の協力のもと、トリポリのイスラーム教機関ダール・ファトワーと私立ジナーン大学が主催した。同会議の報告者は5つの部会に分かれ(聖クルアーンの翻訳-歴史と諸事例、言語学的見地からみるクルアーン本文の特殊性とそれに応じた訳の選択、翻訳と宗教的テキストの特殊性、クルアーンの学術用語と意味の伝達手段、一部の聖クルアーンの翻訳に関する批判的検討)、閉会のセッションでは、「聖クルアーンの文明的及び科学的価値の紹介に翻訳がもたらす影響」が議論された。
開会セッションにおける多数の講演と「レバノン国営通信」の発表に基づいたレバノン各紙の報道によると、これは先駆的取り組みとされ、そのため「第一回聖クルアーン翻訳国際会議」という名を冠することが許されたようだ。しかし、アラブの文学作品を他言語に翻訳するということであればさほど問題はないのだが、神聖な書物である聖クルアーンを他言語に翻訳するということになると話は別である。2015年最後の数日間にレバノン北部のトリポリにおいて「第一回聖クルアーン翻訳国際会議」が開催されるということは、それまで、ムスリムのウラマーたちは、自分たちの聖典にかんして、大いに怠慢であったということになってしまう。
当然ながらいかなる分野でも知識とは蓄積するものであり、どの分野にかかわる人であっても、先に発表されたものを知り、新たに発見されたことを追加していくことが任とされる。そうして初めて、追加されたものにより大きな価値が認められるのだ。この分野(聖クルアーン翻訳)における組織的な努力、つまり国際フォーラムの開催は、少なくとも40年前にさかのぼる。その間にも、国際フォーラムはイスラーム世界の各拠点で多数開催され、その成果は書籍として刊行され、この分野での権威となっている。これらの国際的尽力ならびに発表されている研究があるにもかかわらず、それらの先行する努力とそのうえに培われた成果、先駆的研究等を示すことなく「第一回聖クルアーン翻訳国際会議」というのは、いささか挑戦的だと思われる。
(後略)
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( 翻訳者:角田幸穂 )
( 記事ID:39672 )