シリア:ドキュメンタリー映画『メーキング・オフ』
2016年02月23日付 al-Quds al-Arabi 紙
■映画『メーキング・オフ』:長い痛みの道と終わらないシリア人の移民生活
【ダマスカス:本紙】
現在制作準備中のシリアのドキュメンタリー映画『メーキング・オフ』は、制作スタッフ自身の移民経験を扱った映画だ。作品では、入国ビザや渡航禁止、国外退去など国と国を移動する際に直面するさまざまな困難について触れられている。
ムハンマド・ヒジャーズィー氏が監督を務める『メーキング・オフ』では、移民が直面している状況が制作スタッフの創造的な制作活動に与えるインパクトや、移民先の国で直面する生活苦、さらには、スタッフらが現地に順応し、移民先で芸能界へと加わっていくさまを描いている。
ヒジャーズィー監督は次のように語った。「私は、シリアを離れ、ベイルートへ向かい、その後、アンマン、ドーハ、再びベイルートを経てイスタンブールへ至るなかで、芸術や創作の分野で働く大勢の若いシリア人と出会った。彼らは自らの人生を全うし、自らが思い描く芸術活動に取り組めるような安住の地を求め、国々を転々としている。私はそんな彼らの物語を追ってきた。この映画では、入国ビザの問題や、移民先での政治情勢の変化、その結果引き起こされる、現地政府によるシリア人への対応方針の変化に光を当てるつもりだ。」
製作スタッフらは、最初に安住する国を見つけるまでに、大きな苦悩をともにしてきた。たとえば、芸術監督のアンマール・ハッターブ氏は、シリアを発ってから、ロシアを経由してスウェーデンへの不法入国を試みた。ロシアでは、在留許可や不法業者との実態のない契約問題にみまわれながら一年近く過ごしたが、結局、恋人に会いにエジプトへ行くことにした。しかし、エジプトへ向けて出発した際、エジプト政府はシリア人入国禁止令を発布。カイロ空港では空港警察と延々と言い争ったが、最終的には警官がスタンガンを使用する事態となった。その後、警官らはドバイ行きの飛行機に彼を連行したのだが、これは彼がロシアからの往路でドバイを経由したためだった。ドバイ空港では、おじからヨルダン行きの航空券を予約したとの連絡が入った。ヨルダンでは、おばがヨルダン人の夫と暮らしており、ハッターブ氏はヨルダンで一年近く過ごした後、トルコへ発った。直近の情報では、同氏はトルコで生活しているという。
一方、映像編集を取り仕切るアンマール・ダーラーティー氏は、妻と共にシリアからエジプトに渡り、エジプトで一年半近く過ごした後、カタールで一時的な契約が得られた。妻を呼び寄せて一緒に生活するために在留許可を取得しようと一年近く奮闘したが、カタール政府はダーラーティー氏とともに作業を行っていたシリア人ら全員の在留許可を与えるとする認可を却下した。結局、同氏はイスタンブールに住む監督のもとを訪れることにした。それから一カ月近く経てから、海路でギリシャへ不法入国をした後、オーストリアへ渡り、同地に滞在しながら書類が発行されるのを待った。
(後略)
この記事の原文はこちら
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:内海菜生 )
( 記事ID:39909 )