西洋における若者たちの眠りと急進派、ポピュリズムの台頭
2016年03月19日付 Al-Ahram 紙
■魂の無い若者たち
【ワヒード・アブドゥルマジード】
西洋及び世界でもっとも進んでいる国々における若者たちの危機的な状況が長く続いている。かつてこれらの国では、若者たちが社会を生命力で満たしていた。この活気は、前の世紀の60年代および70年代の初めに頂点に達した。左派の思想家の中には、カール・マルクスとその陣営の思想において労働者階級が担うとされた役割を学生たちが果たす可能性を思い描く者がいたほどである。
しかしながらこの活気はこの数十年の間に後退し始めた。その理由の最たるものは、新自由主義が起こした、西洋の生活様式における変化である。市場が思想に取って代わった。数字、経済的、財政的計算が多様な権威をおびて、理論、イデオロギーを圧倒したのだ。
西洋では、思想と哲学の泉が涸れた。若者たちの魂は萎えた。若者たちに閃きを与え、その活力をくみ上げていた大きな課題は消え去った。こうした課題を追い求めようとする者は躓き、その結果、そうした何千もの人々が「ダーイシュ(イスラム国)」という組織に加わることになったのである。世界を変革するのだと妄想して。
植民地支配の歴史を持つ西洋諸国の一部で、学生たちがこの(植民地支配の)歴史の中に課題を探そうとしているのは、おそらくこの危機的状況が理由だろう。今年、これらの国々の大学の一部で、植民地支配の歴史を批判するための学生たちの運動が起きた。しかし、今のところ依然として明確なビジョンに欠けているようだ。批判と糾弾のあと、何ができるかわかっていないのだ。
これらの運動の要求の中心は、大学構内に置かれていた像を元の国に返すことだった。それらは植民地支配の時代に、奪い取られてきたものだった。一番最近の例では、イギリスのケンブリッジ大学にあった、ナイジェリアの女王の像がある。学生たちの運動はそれを返還することについて、大学当局を同意させた。オックスフォード大学では、学生たちの運動は、イギリスの植民地支配のパイオニアの一人とされる、セシル・ローズの像を撤去することを訴えている。
ヨーロッパ諸国における、若者たちの魂を呼び起こそうという試みは、このように地味に見える。とはいえ、それは積極的な姿勢であるし、アメリカで起きているように急進派やポピュリズムに流されていくよりはずっといい。アメリカでは、さまざまな若者たちが大統領候補のドナルド・トランプに傾倒している。その選択はみじめな自殺行為だ。怒りが負の形で蓄積されるとき、それは西洋中心主義につながり、悲劇的な選択に向かう。(怒れる者たちが拒否するところの)「古い枠」から外れた発言をし、(怒りの対象となっている)「政治的エスタブリッシュメント」の外からやってきた候補を支持するというような。
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( 翻訳者:八木久美子 )
( 記事ID:40084 )