イラク:クルディスタン地域の「ノウルーズ」を覆う戦争の空気
2016年03月22日付 al-Hayat 紙
バグダード、アブー・ヌワース通りでヌウルーズを祝う家族ら(AFP)
バグダード、アブー・ヌワース通りでヌウルーズを祝う家族ら(AFP)

◼クルディスタンで「ノウルーズ」の祭日を覆う戦争の空気

【スライマーニーヤ:本紙】

「ダーイシュ」(イスラーム国)との戦争の空気が、イラクのクルド人の祭日「ノウルーズ」を覆っている。同地では、公式の祝典は控えられ、祭日の空気は、山岳地帯での家族訪問に限られたものとなっている。しかし、その一方で、クルドの伝統的な衣装にさえも「ペシュメルガ」の闘員が着る服の色合いが現れているほどである。

「ノウルーズ」とは、ペルシャやクルドの暦における元日で、その言葉の語源は「新しい日」という意味を持っている。祝祭会場となるサーリム通りはスライマーニーヤ市の公式当局によって閉鎖され、祝祭の参加者数は、ここ数年、こうした時に行われる公式の祝祭がなくなったことで大きく減少した。

イラク・クルディスタン自治政府のサフィーン・ドゥザイー報道官は次のように述べた。「クルディスタン地域は今年は、例年行われているノウルーズの公式祝典を中止した。それは、同地域が「ダーイシュ」との戦いのなかにあり、またペシュメルガ戦闘員数百人が戦いで命を落としたことを鑑みてのことである」。ドゥザイー報道官はまた「クルディスタン地域は今日、「ダーイシュ」との戦いのただ中にあり、多くの殉教者や負傷者が出ている。殉教者や彼らの遺族、そして負傷者に敬意を示すために、いかなるノウルーズの祝祭であっても開催はしない」と付言した。

こうしたなか、「ダーイシュ」はノウルーズの祝日に先立ってモスルで拘禁していた「ペシュメルガ」隊員3人を殺害する画像を公開した。また、「ペシュメルガ」隊員訳39人を焼き死すとの脅迫をダーイシュが実行するのではないかという恐怖感も高まっている。彼らは1カ月ほど前にハウージャ県で拘禁された。クルドの刑務所に拘留されているダーイシュ幹部の釈放を見返りに、釈放交渉も行われたが奏功しなかった。

クルディスタン地域のマスウード・バルザーニー大統領はこの2日間でイラク政府高官らからノウルーズの祝いのメッセージを受け取った。しかし、スレイマーニーヤ市、アルビーク市、ドホーク市では観光客の数の減少している。観光客は通常であれば、祝祭に参加するため、多くがイラクの他の都市から押し寄せてきていた。また、祝祭に参加する女性たちの服装はこれまでは鮮やかな色合いが特徴としていたが、今年は多くの若い女性が「ペシュメルガ」部隊の制服と同じ色に身を包むことを選らんだ。

クルディスタン地域政府は声明で(ダーイシュ)の攻撃に対抗するために隊列を建て直すよう呼びかけた。同政府は「今年のノウルーズは、挑戦と忍耐、存続と自我防衛のノウルーズであり、この機に、戦列を一つにする精神を強化するよう呼びかける。この祭日は、クルディスタンを脅かすあらゆる脅威や危機に対抗するよう促している」と発表した。また、声明は、世界のあらゆる国や土地の「この民族の子弟たち」に対して、「力と解放」に向けた好機でもあるノウルーズの使命を実現するべく、統一と寛容の精神をもって自らのエネルギーを活かすよう求めた。

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( 翻訳者:兵頭輝夏・井森彬太 )
( 記事ID:40120 )