ISの及ぼす危険の認識不足による西洋諸国の安全の崩壊
2016年03月26日付 Al-Ahram 紙
■ブリュセルはヨーロッパの安全のもろさを露呈
【マクラム・ムハンマド・アフマド】
ブリュッセルにおける先日の爆破により、34人の死者と200人以上の負傷者が出たにもかかわらず、この事件は数か月前に130人に死者を出したフランスの首都パリの事件の余震だと考えている人々がいる。三件の爆破は、パリの事件の首謀者であるサラーフ・アブドゥッサラーム(サラ・アブドゥル・サラム)逮捕に対する報復だというのだ。サラーフ・アブドゥッサラームは逮捕のあと自白し、アラブ系およびアフリカ系のベルギー人の若者数十名が参加するテロ組織があることを明らかにした。彼らが所有する少なからぬ量の武器が発見された。
公安がこの組織の構成員を逮捕しようとするなかで、テロリストたちはブリュッセル空港で、そして町の中心にあるEU本部近くの地下鉄駅で犯罪を起こすことを急いだ。捜査からは次のようなことが明らかになっている。パリの事件のあとこれほど長い間、サラーフ・アブドゥッサラームが潜伏し続けるのを助けたテロ組織は若者たちのグループからできているが、彼らを結びつけているのは血縁や近隣のつながりだ。その時間が来れば特定の目標に対して実行できるよう準備された、良く練られた計画を持ったひそかな予備軍を形成しているのである。
これらの予備軍はヨーロッパの複数の国に散らばっているが、その軸となっているのはアラブ系とアフリカ系の戦士たちである。彼らはヨーロッパ生まれだが、父親たちは数十年前に移民としてやってきて、出身国とのつながりは切れている。彼らは貧困と失業に苦しみ疎外されながら、地元の学校で勉強し、そこで暮らしていた。
シリアにおけるダーイシュ(IS)の存在が彼らを引き付ける求心力を発揮した。ダーイシュが外国人戦士に与える特権はそれに弾みをつける。毎月の給料は最低でも500ドルで、生活するためのシステムは完璧であり、物理的、生物学的欲求を満たす。
少なく見積もっても、すでにこうした若者4万人がトルコ国境を越えシリアに向かった。エルドガンの政府は、こうした若者のシリア入国阻止について、ヨーロッパのいかなる介入も拒否している。
しかしながら、事態の混乱を助けているのは、西洋及びアメリカの欺瞞だ。ダーイシュがヨーロッパ、西洋の安全に及ぼす危険を理解していないのだ。危険は中東地域に限られるだろう、被害を受けるのはアラブ人とイスラム教徒だけだろうと考え、足並みをそろえ、こうした組織の拡大を前に沈黙を維持してきた。
テロには祖国も同盟国もないということをだれの目にも明らかにするサインや証拠があるにもかかわらず、西洋とアメリカ人は、オバマ・アメリカ大統領の戦略に固執した。それは、ダーイシュは何度かの空爆で抑え込むことができるとする戦略であったが、これこそがダーイシュはヨーロッパとアメリカにとって致命的な危険ではないという信念を根底で支えてきたのである。その結果、数か月前のパリの事件が起き、ヨーロッパ各国に予備軍が潜伏していることが明らかになったのであった。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
( 翻訳者:八木久美子 )
( 記事ID:40152 )