■職場でのハラスメントを恥に支えられ……女性たちは沈黙するばかり③
【カイロ:アミーナ・ハイリー】
(前略:5月5日付記事「エジプト:職場のハラスメント問題」および「エジプト:職場のハラスメント問題(2)」を参照)
〔ハラスメントに対する〕反応の仕方はさまざまである。女性労働者たちが、いつも不毛な結果しか生まない警告や指導などの手段に訴えて声を上げ、脅しと威嚇から「あなたはいつ神さまのところに行くつもり?」であるとか、懇願と内気さから「あなたにはお子さんがいないの?」とか、恐れ怯えさせるために「あなたの奥さんや娘さんの心配をしたら」などと言うとき、これらの言葉は、この男性の耳から別の男性の耳へと流れていくだけである。
しかし、先行きの明るさを示す点も二つある。一つは法的枠組みの外側にあり、もう一つは法の内側にある。調査の中で女性たちの体験について語られたところでも触れたが、いく人かの女性たちはハラスメント加害者を自ら叩きのめすという方法をとっている。これは、彼女たちが取ることができる法的措置があることを知らないため、あるいは、訴え出ることが求められている公的機関に対する信頼の欠如から、あるいは、「あなたの権利はあなたの手で勝ち取れ」というスローガンが示すようにその方法の方が早いため、行われている。もう一つの明るい点は、非常にわずかな割合だが、職場や警察署において公的な抗議書を提出するという方法で、実際にハラスメント加害者が処罰されたこともある。
この文脈においては、二つの奇妙な特徴に一考の価値がある。一つ目の点は、一部の女性たちが、こうした問題状況の解決を図るべきは「夫」であるとみなしていることである。つまり、彼女たちは「夫の責任が問われるもの」であり、「夫の名誉」とみなされる。これは、女性たちを職場の労働者とみなす立場を完全に排除する。彼女たちは、最初から最後まで、「夫が所有する」妻なのである。二つ目の点は、女性たちが自分たち自身でも、ハラスメントの罪を正当化し、ハラスメントされた側に責任を負わせることである。そうした一人が言うには、「その看護婦はきれいな人だったから、セクハラ医師の視線を引きつけたのでしょう」。悪いことに、更にこう付け加えた。「だからここで働いている人たちは、その人が医師からハラスメントを受けることをわかっていた。」また、別の状況では、女性たちは職場においてハラスメントを一度として受けたことがないと言い、その理由は彼女たちが「慎み深い」からだとした。それはつまり、ハラスメントにさらされている人は慎み深くない、ということを意味する。
調査によれば、求められているのは、社会の中の女性を低く見る見方を変えること、働く女性たちの相互干渉や法的保護に関する意識の向上、そして、ハラスメント加害者の処罰のための保障の制度化である。
同様に求められることは、職能組合や市民社会諸団体、国家女性会議などを含めた委員会を結成し、女性に対する暴力に対抗するための国民的戦略を実施すること、そして、職場内部に関する定められ強制力のある政策を適用することである。その内の一つが、抗議のための定められた手続きの実行であり、官民両部門における機会均等諸団体の役割の支援である。
エジプト労働者総連が行った調査によれば、エジプトで働く女性の30パーセントが職場でハラスメントにあっているという。2014年には、このような害悪を制限する試みとして、刑法に修正が加えられ、言葉による、あるいは、身体的行為によるハラスメントに対する刑罰が、6ヶ月から5年までの禁固刑と最大5万エジプトポンドの罰金に強化された。ただし、法律制定者は新たに提案されている労働法においては罰則の強化をとりやめ、軽くするようだ。そこでは、職場におけるハラスメントに対する刑罰は禁固刑を含まず、罰金の額も2000ポンド~5000ポンドと低くなっている。
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( 翻訳者:塩川ゆうり )
( 記事ID:40457 )