Murat Yetkinコラム:残念な結果…議員特権廃止
2016年05月21日付 Hurriyet 紙
昨日行われた議員特権廃止法案の投票は、エルドアン大統領にとって新たな権力への挑戦であった。そしてそれは成功した。民族主義者行動党(MHP)は 2015年11月1日の選挙以降、公正発展党(AKP)政府に対し、選挙で後退した人民の民主主義党(HDP)議員が国会から追い出され、司法の手で裁かれるよう圧力をかけていた。
エルドアンはこれを目にして、[ディヤルバクルの]スル、ジズレ、スィロピといった場所のことを挙げて、HDP議員らに圧力をかけ始めた。テロリストを支援した者もまた、テロリストとみなされた。エルドアンによれば、HDP議員もテロリストであり、国会議員が議員特権という盾の後ろに隠れることは許されるべきではないという。
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共和人民党(CHP)は呆然と立ち尽くすのみであった。
ケマル・クルチダルオール[党首]は議員特権の廃止を望んでいたし、これは選挙公約にも掲げられていた。しかし彼の望んだものは、今回のような議員特権廃止ではな かった。彼はもっと不正に対する議員特権廃止を求めて動いていた。すなわちそれはAKPを目標としたものであったが、今回の決定はHDP、実際にはCHPをも対象に設定されたものとなった。
計139名の国会議員について682の案件 (近いうちにこの数は増える可能性がある)のうち216はテロに関する告発であり、また201は侮辱(大多数は大統領に対する侮辱)についての訴えであった。前者のほとんどすべてはHDP議員らに、後者の多くはCHP議員らに関連しているものであった。
特に、PKK(クルディスタン労働者党;非合法)との闘争が暴力的に継続し、毎日命を落とした人々の遺体が埋葬されている状況の中、クルチダルオールは(議員特権廃止に対して)「ノー」とは言い出せず、この件を有権者たちに説明しきれない、と思考を巡らせた。
しかし全てのCHP議員がそのように考えていたわけではなかった。そして一方ではエルドアンとAKPが、他方ではHDPが、CHP議員らに圧力をかけ続けていたのだった。
エルドアンとAKPは、CHP議員らは公約を守っておらず、またHDPは国民投票の恐怖から(議員特権廃止に対して)「イエス」と言いつつも、民主主義に傷をつけているとして非難していた。
昨日投票が行われた際に、PKKとの戦闘で亡くなった方のお葬式に参加していたクルチダルオールが卵をぶつけられたことについても、この状況の一端だと解釈されるべきである。
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結果的として、昨日の投票では133名のCHP議員らのうち、20名ほどが「賛成」票を投じたと推測されている。ご存知の通り投票は、用紙を通じたものであれ、我々は見ることができない。
そしてその20名ほどの議員による賛成票でもって議員特権が部分的に廃止されることが、国民投票を経ずとも可能となった。
投票の後リゼで会見を行ったエルドアン大統領は、CHP議員らが、国民投票になったとしても70-80%が賛成票を投じるだろうと考えているために、(国民投票をせずとも議会内で)賛成せざるを得なかったのだと述べた。
これが投票の一面だ...。
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ほかの側面はというと、今回の件の政治的な結果である。
1994年に4人の民主主義党(DEP)議員の議員特権が廃止され、逮捕されたことは、何ら問題の軽減にもつながらず、それどころか問題を酷くさせたのであれば、いま、怒りと反感とともに認められたこの決定もまた、それが目的とする解消に導くのかは、かなり疑問が残る。
クルド問題の対話的交渉の際にイムラル島でPKK指導者アブドゥッラー・オジャランと会ったHDP一行の中にいたスッル・スュレイヤ・オンデルは、昨日、議会の演壇でエルドアンが彼に電話でカンディルへの訪問の有無を尋ねたと述べ、「あとは法廷で証言するしかない」とすごんでみせた。
PKKは脅しを政治的手法ではなく、テロ行為を通じて増している。新首相ビナリ・ユルドゥルムもまたこうせざるを得なくなろう。
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この決定が長期的にみて、実際に代議機関としての公正性に問題を抱えている国会のページに1つの刻み目としてとどまり得るようにも見える。
国会外においてもこの決定の影響が起こり得る。特にEU関係においてだ。事実、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、23日(月)からイスタンブルで開催される国際連合世界人道サミットの際にエルドアン大統領と行うことになっている対談で、本件について議論する予定であることを、報道官を通じて伝えた。エルドアンも恐らくEUのテロ対策における不足点について批判し、実際に変わる必要があるのはEU側であると述べることだろう。
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ことがここまで進んでいなければ、どれほど良かったことか。
ドルマバフチェでの(PKKに関して議論がなされた)サミットが駄目になっていなければ、PKKが再びテロ活動を行い、停戦に向けた対話に終止符を打たなければ、これほど多くの人々が命を落としていなければ、どれほど良かったことか。
選出された議員たちがPKKに支援をしたなどと非難して、(HDP議員たちに)反対していなければ、いま、議員特権廃止についてではなく、エルドアンが言う「平和プロセス」を達成することについて議論していたならば、どれほど良かったことか。
こんなところまで来ていなければ...。
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( 翻訳者:木全朋恵 )
( 記事ID:40530 )