■「ザーミル」はイエメン人の喜びと悲しみとともに
【サナア:サーリフ・バイダーニー】
イエメンの民衆芸能「ザーミル」は、国内の争い、戦争そして不安定の印が刻みつけられた長期的過程を通じて、暴力的な政治的・社会的変化を文脈として誕生した。こうした状況は、詩的芸術を、より強く熱意に訴え、聴く者の感情を刺激し、掻き立てるものにすることを求めたのである。
「ザーミル」は、第一義的に戦争と結びつけられるものであるにもかかわらず、わずかな安定期に入ってからも詠まれ、結婚式やさまざまな社会的行事など、日常生活のあらゆる場面に含まれるようになった。近年では、イエメン国内で戦いあう諸陣営の戦列のなかでの先鋒という従来の役割に戻っている。
このイエメン固有の芸術がもつ文化的背景と社会的な用法に関していえば、「ザーミル」は、湾岸地域の「シャイラ」など、アラビア半島における他の類似する芸術と同様の主題を持つ点を挙げることができる。イエメンの民衆芸能遺産の研究者であるイルワーン・ジーラーニー氏が本紙に述べたところによれば、「ザーミル」は、民衆的抒情詩の一種であり、人々の集まりの場で吟じられ、これに民衆的色彩を与えるものとみなされる。その詩は、多くの深遠な意図やメッセージを伝え、2行以上の構成によってそれらの内容を描写し、多くの場所で、戦争や結婚式などのさまざまな機会や祝日に踊りを伴って詠まれるようになっている。ほとんどの場合、賞賛詩や自賛詩ばかりであり、神への愛を読んだ詩や恋愛詩はない。
近年、「ザーミル」は大きく存在感を増しており、イエメン人の軍事集団が戦いの始めにザーミルを詠み、支持者の感情を鼓舞したり、敵対者に敗北を迫ったりするために用いている。いまや、「ザーミル」は、イエメンが直面している戦争のなかで用いられるメディアとして最も目立ったものになりつつある。このことは、ザーミルの言葉が一般大衆が理解できる分かりやすい言葉であること、加えて、ザーミルが熱意を駆り立て、ソーシャル・ネットワーキングを通じて容易に伝達することができることに由来する。
(後略)
この記事の原文はこちら
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:高寺葵 )
( 記事ID:40609 )