コラム:シリアの在外反体制知識人がトルコのクーデタ未遂に想いをはせる
2016年07月17日付 al-Quds al-Arabi 紙

■もしクーデタが成功していたら?

【トルコ:ヤースィーン・ハッージ・サーリフ*】

もしトルコでクーデタが成功していたら、国会議事堂を爆撃した首謀者たちは何万人もの人を逮捕し、何百人あるいは何千人を処刑し、デモを禁止し、与党公正発展党(AKP)、そしておそらくは全政党を禁止し、トルコでの政治活動を無期限で凍結しただろう。もしクーデタが成功していたら、トルコでの民主主義弾圧は、熱心な軍事クーデタ支持者自身の思いとは裏腹に、レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領とAKPが行ったそれよりも激しかったろう。クーデタが成功していたら、トルコ国内でのあらゆるシリア人の政治的・文化的活動が凍結されていただろう。おそらくは衛星テレビ「マヤーディーン」が喧伝したように(トルコ軍は反体制派がトルコから出ていくために48時間の猶予を与える、と同チャンネルは報道していた)、シリアの反体制派はトルコから追い出されていただろう。また、シリア政府にシリア人が引き渡たされ、およそ300万人のシリア人が困窮し、彼らをテロリストとみなし、トルコ経済の負担だと非難するキャンペーンが行われ、彼らへの組織的な攻撃が増しただろう。

もしクーデタが勝利していたら、首謀者たちはトルコ社会で激しいショービニズムな愛国的傾向に火をつけだろう。しかし同時に、エルドアン大統領に対するクルド反体制活動家らの評価を踏まえると、アブドッラ・オジュラン(PKK元党首)の処刑に取り掛かっていただろう。また、首謀者たちは、現政権が行うクルド人地域での戦争を再開するか、あるいはエスカレートさせていただろう。そして、トルコでの戦争に関する報道が、西側メディアで制限されていただろう。

(中略)

しかしクーデタは成功しなかった。

クーデタが失敗に終わったのは、トルコ国民が街頭で戦車に立ち向かったからだ。そして、トルコの諸政党が意見の違いを度外視し、ともにクーデタを拒んだからだ。

クーデタの敗北は、トルコの国民と民主主義の勝利だ。そう、それは、エルドアン大統領の勝利でもある。しかし、彼は、複数いる勝者の中の一人に過ぎない。彼が唯一最大の勝者になることが必然だったのではない。国民と議会が一体となった強固な戦線を通じてクーデタを敗北させたという事実は、エルドアン主義的権威主義に対するさらなる抵抗の気運を作りあげるだろう。あまたの反体制活動家たちは、自分たちがクーデタに無条件で反対していると考えている。しかし、クーデタ後も闘争は続くのだ。

トルコにおけるクーデタの失敗は弛まぬ疑問を問いかけている。トルコで、アラブ世界で、そして世界で、誰が本当の民主主義者であり、民主主義の敵なのか?

今回のクーデタは、この疑問を明らかにすることに大いに貢献するだろう。

* ヤースィーン・ハーッジ・ハーフィズ:シリアの在外反体制知識人。

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( 翻訳者:阿部光太郎 )
( 記事ID:40898 )