クーデーターの夜、エルドアン大統領とホテルオーナーの会話
2016年07月22日付 Cumhuriyet 紙
トルコ国軍の一部がクーデターを企てた夜、マルマリスにて休暇中だったエルドアン大統領とホテルのオーナーの間で、「ギリシアの島々」に関する会話があったという。
レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領は、トルコ国軍の一部が2016年7月15日夜にクーデターを企てた頃、ムーラ県マルマリス郡のホテルで家族と休暇中だった。
クーデター未遂が起こった時から6時間にわたって、エルドアン大統領の傍にいたホテルオーナーのセルカン・ヤズジュ氏が、ポスタ紙のルファト・アババイ記者の取材に応じ、あの夜に起こったことを話した。
以下が、ヤズジュ氏が語ったことの箇条書きである。
Q. エルドアン大統領とその家族はいつホテルに来たのか?
A. 7月11日、日曜日だ。エルドアン大統領のほか、エミネ・エルドアン夫人、娘のエスラ・アルバイラクさん、婿のベラト・アルバイラク・エネルギー相、11歳になる孫のアフメト・アキフくん、6歳のマヒヌルさん、7カ月のサードゥクくんがいた。もちろん、秘書や数多くの護衛もいた。
Q. 休暇はいつまでの予定だったのか?
A. 私には公式の情報は与えられていないが、7月16日の土曜日にホテルを発つことは知っていた。その日アンタルヤで何かプログラムがあると新聞で読んだからだ。
Q. 7月15日夜の話に移ろう。クーデター未遂が始まった、とても難しく暗い夜の話に…
A. 21時40分ごろ、私は大統領護衛隊長のムフスィン・キョセ氏と、別荘に程近い場所で座ってチャイを飲みながら話していた。ムフスィン・キョセ氏の携帯電話が鳴った。その後知ったことだが、電話をかけたのはある県知事だった。ムフスィン・キョセ氏は私に何も話さず、ただ「別荘に戻らなければ」と言った。別荘に戻ってすぐ、ムフスィン・キョセ氏は大統領の側へ行った。私も門の所にいた。その後、クーデター未遂が起こり、大都市で混乱が発生していることを知った。確かなことは、標的は大統領だったということだ。別荘でのあの緊張した危機的な時間は、21時40分に始まった。
Q. 最初に何をした?
A. まずは、私と一緒にホテルにいた妻と息子、母、そして妹たちを探した。彼らを安全な場所に連れていくために、とても親しい友人を呼んだ。家族を10分で安全な場所に移し、私は大統領の滞在する別荘へ向かった。電灯はすべて灯っていた。とても大きな動きだった。焦りと緊張と…。護衛の許可を得て別荘に入ると、地下階のコックや給仕は不安そうな様子だった。彼らはテレビをつけて集まっていた。
大統領は上階にいた。2つの寝室の真ん中にある机のところに1人で座っていた。
(原文:中略)
Q. あなたに対して何か要求はあったか?
A. 大統領は私に、家の前に報道陣を集めるよう言った。すぐに報道局へ知らせ、「家の前にすぐに来てくれ、重要なことだ」と言った。
Q. 大統領の様子はどうだった?
A. とても冷静な様子だった。ベラトさん、ハサンさん、ムフスィンさんも冷静だった。情報の入手経路を確保し、しかるべき場所へ辿りつくために努力していた。しかし、周辺がとても混乱していたため難しい状況に置かれていた。タイイプさんもいくつかの官庁に電話するため指示を出していた。暫く後、様々な場所から情報が届くようになった。大統領は机のところに座って命令を下していた。何がなされるべきか、とても明確に話していた。
(原文:中略)
Q. ホテルを離れる決定はどのようになされた?
A. 長い時間が過ぎていた。エルドアン大統領とその家族がどのようにホテルから動くかが、より真剣に話しあわれ始めた。大統領府のヘリコプターがマルマリスに来て、すぐ動けるよう待機しているという情報が届いた。しかし、安全な脱出にならない可能性があるため、ヘリコプターのモーター音を消すようにという命令がなされた。これについて私には経験があり、ヘリコプターのモーター音が消えるなら20~25分ほど動かすことができなくなると言った。それにもかかわらずエルドアン大統領は「音を消すように」と言った。この時、空路でも陸路でもイスタンブルに向かうのはとてもリスキーだとわかった。
Q. エルドアン大統領を怒らせた「ギリシアの島々」の提案とは?
A. 私はこの周辺についてとてもよく知っているので、大統領は私の方を向き「セルカン、海路では一番近くてどこへ行ける?」と訊いた。
私は、ダラマンには行けるが、アクサズ海軍基地の近くを通過しなければならないと言った。大統領は「それは駄目だ。他にどこへ行ける?」と言った。私は、すぐ近くにギリシアの島々があるので、「私があなたをお連れします」と言った。
その時までとても冷静だったエルドアン大統領が、私が「ギリシアの島々」と言ったのを聞いて初めて冷静さを失い、「兄弟、私がギリシアの島々に何の用があるというのだ?イスタンブルにはどうやったら行けるのかと聞いているのだ」と怒った。
Q. あなたはその時、暗殺部隊がホテルに向かっていたと知っていた?
A. ええ、クーデター犯が構成するいくつかの部隊がホテルに向かっていたと言われていた。しかしこれらの部隊がどこから、そしてどのようにして来るのかは誰も知らなかった。ドアから外を見ると、護衛の警察官が互いに抱き合い、今生の別れをしていた。
少し後、ムフスィン・キョセ氏が再び中に入り、とても決然とした様子で大統領の腕をとり、「閣下、すぐにここを発つ必要があります。もはやこれ以上ここには居られません」と言った。
エルドアン大統領は「では、神の御名において」と言い、席を立ち、大声で「世話になった、至らないところは許してほしい」と言い、家と滑走路の間の道を、幅の広い非常線の内側で歩き始めた。
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( 翻訳者:神谷亮平 )
( 記事ID:40965 )