タイイプ・エルドアン大統領がこれまでに侮辱行為をはたらいた者を今回に限り赦免すると表明した。これは、現在進行中のおよそ1500の裁判と非常に多くの捜査に影響を及ぼすだろう。関係者によれば、大統領はこの表明をすぐに実行に移し、政治的指導者たちに対する損害賠償請求を取り下げるという。
タイイプ・エルドアン大統領は、一昨晩、大統領官邸で行われた殉職者追悼式典で、「国として、国民として、7月15日を重大な節目としないのは恥ずべきことです。これを契機として、私は、現在までに私へ不敬・侮辱行為をはたらいた者を、今回のみ告訴を取り下げ赦免する」と話した。
エルドアン大統領のこの発表は、現在進行中のおよそ1500の裁判と非常に多くの捜査に影響を及ぼすだろう。エルドアン大統領の発表は50近い損害賠償請求訴訟と刑事訴訟、それらの捜査にも作用する。進行中の捜査についてキーパーソンとなるのは、刑法によりこの罪状に関する捜査に許可を与える権限を持つベキル・ボズダー法務大臣である。
■新聞記者とソーシャルメディア
法務省の情報筋によると、ボズダー法相は、エルドアン大統領のこの発表のために、検察から自身へ来る捜査請求へ許可を与えないだろうという。この方針は7月 15日以前の捜査に関係があるものと予想される。この不許可によってひとまずは、人民の民主主義党(HDP)の27人、共和人民党(CHP)の23人、民族主義者行動党(MHP)の2人の計52人の国会議員への「大統領への侮辱」罪に対して準備されていた捜査報告書が放棄される。この捜査報告書は、うち14がCHPのケマル・クルチダルオール党首、7がMHPのデヴレト・バフチェリ党首、7がHDPのセラハッティン・デミルタシュ共同党首、6がHDPのフィゲン・ユクセキダー共同党首に関して準備されていた。これに加えエルドアン大統領の弁護士の訴えのもと起こされた、大部分が新聞記者とソーシャルメディアのユーザーに対するものである裁判と捜査もこの決定の影響を受ける。これに関連して訴えが取り下げられた裁判は中止され、捜査も終了する。
しかし検察自らによって開始された捜査と裁判は継続する。こういった詳細の全貌はエルドアン大統領の弁護士によって行われる会見の後確定するとされる一方、エルドアン大統領の元弁護士である、公正発展党(AKP)のアリ・オズカヤ議員(アフヨンカラヒサール選出)は、この捜査と裁判に関して以下のように述べた。
■判決に良い影響
「大統領への侮辱条項により検察官自らによって開始された捜査や裁判は、告訴による罪状の範囲にはありません。これらの捜査や裁判は、大統領が放棄したからといって自動的に終了するものではないのです。争点となっている言動が批判であるのか、侮辱の範囲内であるのかは裁判所が判断することです。しかしながら大統領が『許す』との発言が、ある程度裁判の上で裁判所の判断に前向きな影響を及ぼし、裁判所は無罪判決をより容易に下せるようになると考えます」。
オズカヤ議員は、エルドアン大統領が首相であった2011年にも侮辱されたとして起こした訴訟を「許す」と言って取り下げたことを指摘した。法的研究協会(HUDER)ヒュセイン・カヤ会長も、昨年9月にエルドアン大統領を訪ね、「これほど多くの訴訟を起こすのは品がない」と話して訴訟を取り下げるよう求めたことを伝えた。カヤ会長は、「大統領は、すぐに弁護士から情報を得て『なぜ我々はこれほど多くの訴訟を起こしているだろうか、ふるいにかけて必要なものだけを行おう』と指示を出しました」と話す。この間エルドアン大統領のドイツの弁護士ラルフ・ヘッカー氏は、「現在のところ、ドイツに関わるいかなる変更もありません」と述べた。
■誰に訴訟が起こされたのか
エルドアン大統領への侮辱が原因で損害賠償請求訴訟もしくは刑事訴訟を起こされた人物の中には、CHPのケマル・クルチダルオール党首、MHPのデヴレト・バフチェリ党首、HDPのセラハッティン・デミルタシュ共同党首、CHPのエディルネ選出オカン・ガイタンジュオール議員、新聞記者・作家であるハサン・ジェマル氏やジャン・デュンダル氏、アフメト・アルタン氏、コライ・チャルシュカン氏などがいる。エルドアン大統領を映画『指輪物語』のキャラクターであるゴクリになぞらえた画像を拡散したことで、アイドゥン出身の医師ビルギン・チフトチ氏に対しても訴訟が起こされた。エルドアン大統領は、国外では、詩の朗読で侮辱されたとしてドイツ人コメディアンのヤン・ブーママン氏と、そのコメディを支援したとしてドイツ最大のメディアグループのひとつであるアクセル・シュプリンガーのCEOマティアス・デップナー氏なども訴えている。
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( 翻訳者:粕川葵 )
( 記事ID:40974 )