一人の署名で非常事態宣言可能に
2017年01月22日付 Hurriyet 紙


国民投票に委ねられる法案では、憲法の制度から「戒厳令」が除かれるが、これらに関する措置はより下部の段階である非常事態の中に組み込まれる。変更が国民投票によって認められれば、非常事態下では閣議決定に基づく政令を要したことを、もはや大統領の署名のみで実現できる。学長を大学教員が選ぶことを廃止したことと同様に、裁判官と検事が上位組織成員を投票で選ぶ権利も廃止される。裁判官・検察官高等委員会のメンバー22人のうち6人を任命している大統領は、新制度では13名中6名を選べる。残り7人は議会で投票がおこなわれる。その歴史がオスマン朝までさかのぼる「軍事司法」がトルコの司法制度から廃止される一方、国家安全保障協議会において大統領の次だった参謀総長の地位も大臣より下位になる。法案の第2部は、新選挙制度が2019年より前の実施に向けて下地も作っている。

■法案12条:戒厳令の条件は、非常事態に移行した

国民投票に委ねられる法案によって、戒厳令の適用がトルコの憲法制度から除かれる。憲法上の戒厳令の条文と他の条文における戒厳令の表現が削除される。これを受けて、戒厳令を宣言するに要する条件の大部分は、非常事態の適用の中に組み込まれる。

現憲法は、政府の非常時の統治方法を、非常事態と戒厳令との二つの段階に分けている。非常事態を発令する必要のある第一段階は、「自然災害、深刻な経済危機、暴動の広がり、公的秩序の深刻な崩壊」である。さらに、厳しい措置が必要である戒厳令はというと、「非常事態宣言よりも深刻な暴力行為、戦争状態、暴動、祖国あるいは共和国に対する武力行使」という状態で発せられる。

現憲法では、大統領が主宰し招集した閣議と国家安全保障評議会の意見を考慮して、非常事態か戒厳令を発する。修正案によると、非常事態を宣言する権限は大統領に移行する。大統領は、自分一人で下した決定により、六ヶ月の非常事態を発することができる。この決定は同日、トルコ大国民議会に承認を諮る。議会は、宣言の期間を短縮することや決定を却下することができる。その後、大統領の要求によって、トルコ大国民議会は、四ヶ月毎に非常事態を延長できる。

二つの安全段階措置が一つに減らされたことで、大統領は以下のような状況で非常事態を発することができる。「戦争、戦争を要する状況の出現、戦時動員、暴動、祖国あるいは共和国に対する武力行使、国と国民の不可侵を内部あるいは外部から危険に陥れる深刻な活動の拡大、憲法による秩序と基本的な権利、自由を奪うような深刻な運動の広がり、憲法の秩序と基本的権利、自由の排除に向けた暴動の発生、暴動による公的秩序の深刻な崩壊、自然災害や危険な伝染病あるいは深刻な経済問題の発生である。」

通常、基本的な権利と自由を制限しないことや、法的部門への不介入が必要とされている大統領の政令は、非常事態下ではこの条件は適用されない。現在、大統領主宰の閣議によって出された政令により、基本的な権利と自由を制限することができる。新法では、これが大統領の署名一つで可能になる。

戒厳令の制度を廃止するため、憲法上の「戒厳令下の司令官たちは参謀本部に付属して任務を遂行する」という条文が削除される。この状況で大統領が、非常事態下で、トルコ軍をどのように指揮するか、この問題に関する全般的権限について、今後出される法律によって整備されるだろう。現段階では、条文の修正によって、非常事態下のトルコ軍の指揮系統に関しての明記はない。

非常事態下の政令は、議会に提出されて、三ヶ月内に法制化されなければ、自動的に失効となる。しかし、戦争またはやむを得ぬ理由で議会が招集できなければ、この期間は適用されない。この憲法の修正以前に出された、あるいは現在適用されている政令にはこの条件はあてはまらない。

■法案13条:103年の軍事司法に終止符

その起源はローマ法にまで遡る軍事法廷は、103年でトルコの法制度から無くなる。憲法裁判所、行政裁判所、軍事裁判所、民事・刑事裁判所と4つの部門に分かれるトルコの司法制度は、もはや3つの部門に再編される。戦争状態を除き軍事法廷は廃止される。戦争状態で、軍人たちの任務に関する問題を審理するため軍事裁判所は設けられるが、平時軍人に関しては、単に規律裁判が開催される。名前は裁判所であっても、この組織には裁判官と検事はなく、規律士官が任務を遂行する。トルコ軍には、もはや軍事裁判官と検事は存在しなくなる。しかし、司令部において法的部門において法律家たちは任務を遂行する。(現在、軍事裁判官と検事の権利は第17条の附則において規定されている。)

[歴史を遡ると]軍事審議会ののち、1914年4月6日に設けられた軍事最高裁判所、1972年設立の軍事高等裁判所[といった軍事司法]が終わりを告げることになる。トルコの司法において長い間6つであった高等裁判所の数は4つに減った。(残ったのは憲法裁判所、最高裁判所、行政裁判所、民事・刑事裁判所である。)

司令部または兵舎であれ、全て犯罪に関わった軍人はもはや通常の裁判所で裁かれることになる。軍人は、トルコ軍の行政的決定に関しても通常の裁判所や行政裁判所に判断を委ねることになる。法案が国民投票で承認されると、この是正は施行される。つまり、文民の裁判官と検事が、軍事刑法、トルコ軍職員法、トルコ軍の行政上の修正、軍事司法の法的判断を迅速に適用することが必要となる。

■法案14条:裁判官・検察官高等委員会と高等司法で与党の影響力大

この条項では、立法と行政と民主主義の秩序を保つ3権の一つである司法の構造を抜本的に変えるものである。裁判官と検察を統括する立場である裁判官・検察官高等委員会は、「高等」という性格を取られ、「裁判官・検察官委員会」という名前で再編される。委員会のメンバーは、22人から13人に、部局の数は3から2に減る。

裁判官と検察の投票により組織メンバーを送り込むという方法は、今回の修正で終了となる。現制度のように、大統領が任命する法相が委員会の長、事務次官も常時メンバーになる。大統領は[13名中の]残りの11人のうち4人を任命する。このように、大統領は、大臣を含む13人のメンバーのうち6人を選ぶことができるようになる。現在、大統領は22人のうち6人を選んでいる。

残った7人は議会で選ばれる。この7人のうち3人は最高裁判所のメンバーであり、一人は行政裁判所、3人は法学者と弁護士の中から選ばれる。議会の委員会と本会議での選出の過程では特定多数決を採用する。

候補者は、国会本会議の最初の投票で400人、2回目は300人の投票で選出される。2回目の投票でメンバーが選出されなければ、最大得票の2人の候補者でくじを引く。この修正が、「司法が一人の手から出る」という批判の元凶になっている。ここでの繊細な問題は、政府与党が議会の多数派を活かしながら、得票されそうな候補者も大いに決めることをできる力を持っていることにある。例えば、本会議で得票されそうな候補者は、まず法務憲法混成委員会で投票される。与党はここで数の力に依拠して、支持する候補者を本会議に送ることができる。新裁判官・検察官委員会を今後六ヶ月のうちに現在の国会を形成するために、本会議で選出されるはずの7人の候補者の大半を、公正発展党は決めることができる。実際、大統領が定める6人の候補者に本会議の2人を加えれば、与党ブロックは裁判官・検察官委員会における決定を方向付けることが可能な多数派を簡単に手に入れることができる。

法案が国民投票で承認されたならば、憲法裁判所の17人のメンバーは15人に減る。現在の憲法での条文で12人のメンバーは再度大統領が任命し、3人は国会が選出する。国会での選出方法は、最終的に過半数となる。そのため、政党に属している大統領のグループは3人のメンバーを決定できる。このように、大統領、副大統領、大臣たちは、司法の権限を持つ高等評議会のメンバーの全員を行政の指導下で選出することになる。

大統領は、現在の憲法によると行政裁判所のメンバー(現在は116人だが、3年以内に90人に減る)の4分の1を(法案で90人に減れば23人)も選ぶ。残りの4分の3(67人)は、裁判官・検察官委員会が選ぶ。行政裁判所は、行政の全ての行為と手続きを監視する最上位の機関である。修正後は、行政のトップである大統領は、間接的に行政を司法上での決定権者とする。大統領は、最高裁判所の首席検事と首席検事補も任命する。この間、最高裁のメンバーも裁判官・検察官委員会が決めるため、行政裁判所と同様の状況を最高裁判所についても述べることができる。

憲法の修正が行政、立法、司法の三権分立の理念を排除するとの方向での批判は、大いにこの条項に基づいている。反論は、行政のトップである「大統領」が、政党の党首の帽子をかぶって国会議員候補者をも決め、立法上での権力者となると同時に、司法上でも影響力を獲得することから、この三権の間の境界が無くなってしなうという意見に基づいている。

(下略)

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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:42022 )