ようやくトルコで上映の「ネコ」、監督インタビュー
2017年06月09日付 Cumhuriyet 紙


アメリカで大ヒットしたトルコ映画『ネコ』が、今週ようやくトルコで公開される。我々は監督のジェイダ・トゥルン氏とお会いし、映画撮影の流れについて話を伺った。

ジェイダ・トゥルン氏は、トルコ映画界ではめったに見られない成功を収めた人物で、撮影したドキュメンタリーは、アメリカで記録的に多くの観客を獲得した。この基本情報を頭に入れて本人を待っている間、うぬぼれた、あるいは賢人気取りの人物が現れるのだろうと私は身構えていた。なんであれ、「こんにちは」と最初の挨拶を交わしただけで、私の不安が杞憂であったことが分かった。数百万ドルとも言われる稼ぎを生み出した監督は、非常にフレンドリーでポジティブ、そして彼女が撮影したネコのように歩く人物だ。彼女がネコたちの軽業についていくことが出来るのは、皆さんも撮影された映画を見ればお分かりになるだろう。

―信じていただきたいのですが、私は「この映画の着想はどこから得たのですか」とはお訊きません。「どうしてこの年まで誰もこのような映画を撮らなかったのでしょう」と尋ねる方が正しい気がします。それからやはり、いつこの映画を撮り始めたのか、そして「役者決め」はどのようにしたのか、また、何が一番難しかったのでしょうか、こういったことが気になります。

映画は2013年に構想を練り始めました。4年前です。支援者探しやその他のいろいろをする中で、2013年の夏に試し撮りに入りました。イスタンブルのネコたちはとても素敵なのですが、ではどのようなプロジェクトにすれば良いのか、少し試してみる必要がありました。私たちはまず初めに、例えば『ペンギンたちの行進(March of the Penguins)』のような、あるいはこうした純粋なBBCのドキュメンタリーのような、人々や街を忘れて、ただネコにフォーカスした映画を撮るべきじゃないかと考えました。なぜならイスタンブルのネコは人間にこんなにも懐いていて、人は彼らを撮影することができるからです。もちろんアメリカでは驚かれます、どうやってこんなに近くから逃げられずに撮影したのかなどということに。1つは私たちのカメラマンがすごいということもありますが、同時にイスタンブルのネコは人に慣れているのです。最初の試し撮りが私たちをこうした方向に導いて、2014年の夏に入る前の最初の3か月、ここで地元のプロデューサーの友人たちを路地に向かわせたのです。行って、近所全てを回るんだ、ネコに興味を持っている人と話すんだ、好きじゃない人とも話して、きっとネコたちの性格をつかんでほしいと言いました。質問しながら街中を歩き回って、映画を始める前に35匹ほどのネコを見つけ出しました。その数は2か月半から3か月の撮影で19匹にまで絞られました。19匹のネコの物語のうち7つが、始め、中、終わりの構造を得て、様々なテーマがくっきりと見える物語として出来上がったのです。

―撮影の際、何度も撮り直しが必要でしたか。いくつかのシーンは、例えば、最初の撮影で撮ったように感じさせますが、おそらく入念な前準備が必要だったでしょう。たとえば、まず初めに黄色いネコが思い当たります。パンの欠片咥えた彼を追うあたりなど…すべてが完璧な配置でした。

いくつかの映像は本当に1回の撮影でした。例えばあの黄色いネコですが、初めは彼の物語を知りませんでした。私たちは彼を追って来たのではなくて、他のあるネコのために来たのですが、そのネコはいなかった。それから映像編集者のチャーリーが黄色いネコを見つけて、「このネコ、すごくおかしなことをしているぞ」と言ったのです。なんと1日に50回も何か同じ行動をしているのです…私たちのカメラは2台ありましたから、このことは割と簡単に確かめられました。

―何か特別な道具を使ったのですか?映像の一部が地面の高さでしたが。

これについては、映像編集者のチャーリー(Charlie Wuppermann)とアルプ(Alp Korfalı)が素晴らしかった。わたしたちが撮影に使ったビデオカメラは、キャノン5D MarkⅢです。決してスマートなカメラではありません。それどころか反対に、私たちは特にカメラに似たビデオカメラで撮りたかったのです、観る人が不快になったり、一体何をしているのだと思われないように。彼らは地面に近いところに設置でき、足首の高さで撮影できるような、軽くて快適な道具を作りました。なぜなら、リモコンの遠隔操作でいくつか試してみましたが、ネコたちはこれを気に入らなかったからです。音を嫌い、攻撃してくるか、逃げるかしてしまいました。ネコに何かを装着することはできません、彼らはそうした生き物ではないし、どこへ行くのか分かれば戦略的地点にカメラを置きますが、私たちにはそれを叶える予算も状況もありませんでした。しかし、チャーリーとアルプは、本当に経験豊富でとても熱心な人物で、素晴らしい映像を撮影してくれました。私たちは、最初に次のような決まりを作りました。ネコをそれぞれの人間のように、また役者として撮ること。また、彼らの高さから世界を見て、彼の目線からとらえた、面白おかしいものではない、真剣な映画として撮影しました。180時間の撮影を行いましたが、この180時間のうち間違いなく80時間は毛づくろいをしていました。撮影ではそのようなこともあったのです。

―今後はどのような計画がありますか、再びドキュメンタリーですか?

フィクションもドキュメンタリーもあります。なぜならドキュメンタリーには非常に良い面があります。この映画を準備していた時も実は2つのフィクションのプロジェクトがあったのですが、役者を待ち、追加予算を待っているときに、私たちは待ちくたびれてしまい、何か他のものを撮りに行くことにしました。ドキュメンタリーの素晴らしい面はこれです、フィクションと違って誰も待つ必要がないのです。ですから、ドキュメンタリーとフィクションを、いつも両方行き来できれば、とても嬉しく思います。

■3500年間ここにいる

―ネコと言えば、イスタンブルにはもちろん長い間ネコがいますよね?

もちろんです…こんな話もあるくらいです。イスタンブル大学にヴェダト・オナルさんという動物学博士の獣医師がいるのですが、マルマライ工事の際に出土した全ての動物の骨は分類されるべく彼に送られました、素晴らしいことです。3500年前の化石となった猫の骨を私たちに見せてくれました。ボスフォラスの海岸から出たものです。猫の前足部分にひびが入っていたのですが、接合されていたそうで、ヴェダトさんは、人の手によって包帯が巻かれたものと推測しています。そうでなければこんな風には接合されないと仰っていました。

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( 翻訳者:佐藤彩乃 )
( 記事ID:42789 )