パレスチナ:トランプの決定に世界中が懸念、エルサレムの現状の尊重を呼びかける
2017年12月07日付 al-Hayat 紙


■パレスチナ:トランプの決定に世界中が懸念、エルサレムの現状の尊重を呼びかける

【バチカン、エルサレム、ブリュッセル、モスクワ、イスタンブール、リヤド、ベイルート、ロンドン:本紙、AFP、ロイター】

バチカンのフランシスコ・ローマ教皇は昨日(6日)、エルサレムの現状を尊重し「賢明かつ慎重」に行動することを呼びかけた。これは、ドナルド・トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことを受けてローマ教皇から発せられたものであり、ローマ教皇は聖地に住む「すべての者の権利を認めること」が対話の基本的条件であると述べた。

一昨日(5日)パレスチナのマフムード・アッバース大統領と(エルサレムをめぐる)危機について話したローマ教皇は、バチカンとの諸宗教対話に参加したパレスチナ人訪問客の集団の前でこの声明を発表した。ローマ教皇は、エルサレムを取り巻く「ここ数日の状況に関して、私は大きな不安を隠せない」と述べ、「関連する国連決議に則し、すべての当事者がエルサレムの現状を尊重することを心から求める」と述べた。

(以下、各国・機関の立場)

英国:
 ボリス・ジョンソン英国外務・英連邦大臣は昨日、ドナルド・トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認定する可能性について、英国の懸念を表明した。同大臣はブリュッセルで行われたNATOの会合場所に到着した際、「我々は懸念をもって報道を見ている。なぜなら、エルサレム(の地位)がイスラエル人とパレスチナ人の間の最終的な問題解決、すなわち交渉によってなされる解決に関わるべきものであることは明らかであると、我々は考えているからだ」と述べた。
 ジョンソン外相は米国に対し、中東和平プロセスをよみがえらせるための案を提示するよう求め、これが「最優先事項」であるとみなした。
 同外相はNATO本部で行った米国のレックス・ティラーソン国務長官との会談前に、在イスラエル大使館をエルサレムに移転させるとした米国の決定について、「これにより、長らく待たれている中東和平プロセスに関する米国の提言は、かつてないほど重要なものとなった」と述べ、「このこと(米国の提言)こそ最も優先されるべき事柄だ」と述べた。


国連:
 ニコライ・ムラデノフ中東和平プロセス特別調整官は昨日、エルサレムでの会合において「エルサレムの未来は、直接交渉と並び、これに関してイスラエルとパレスチナ人との交渉がなされるべき事柄である」と述べた。
 ムラデノフ氏は、アントニオ・グテーレス国連事務総長が「この問題について幾度か話した際、(中略)我々は皆自分たちの行動に対して、それが招く結果を鑑み、極めて慎重であるべきであると述べた」ことを指摘した。


ロシア:
 ロシア大統領府は昨日、トランプ大統領の在イスラエル米国大使館をエルサレムに移転させる計画により、イスラエルとパレスチナ当局の対立が激化する可能性に関し、ロシアは懸念を感じていると述べた。デミトリ・ペスコフ大統領府報道官は電話による記者会見で「とはいえ、まだ行われていない意思決定について我々が議論することはない」と述べた。


ドイツ:
 ドイツのマルティン・シュルツ社会民主党党首は、「米国大使館のエルサレム移転に関する決定により、トランプ氏は国際社会の安定を破壊する」と述べた。


トルコ:「全くの狂気」
 トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認定する意向であることをホワイトハウスが発表したことを受けて、イスラーム協力機構加盟国の首脳らに対し12月13日にイスタンブールで首脳会議を開催することを呼びかけた。
 トルコのイブラーヒーム・カルン大統領府報道官は記者らに対して昨日、「共和国大統領は、イスラーム諸国が協調・団結して行動し事態の展開に立ち向かうための活路を開くべく、イスラーム協力機構の緊急首脳会議を呼びかけた」と述べ、この会議は12月13日にイスタンブールで開催される予定であることを明らかにした。
 トルコは現在、イスラーム協力機構の議長国を務めている。
 カルン報道官は昨日、エルサレムをイスラエルの首都と認定することは、地域及び世界に「火を放つ」ことになるかもしれないと警告した。
 トルコのべキル・ボズダグ政府報道官はツイッターで、実施が予想されているトランプ氏の決定について、「いつ消えるか誰も分からないような火を地域及び世界に放つことになる」と投稿した。
 同報道官は、「エルサレムの首都宣言は歴史の否定であり、深刻な不正であるとともにビジョンを大きく欠いている。全くの狂気である」と述べた。
 同報道官はまた、「私はすべての者に対して、責任をもって行動し、国内の政治目的その他のために世界の平和を危険にさらすことのないよう求める」と述べ、「ムスリムおよびイスラーム諸国の名誉を保つ」ことを呼びかけた。
 トルコのエルドアン大統領は火曜日(5日)、エルサレムの地位はムスリムにとって「レッドライン」であると警告し、米政府がエルサレムをヘブライ国家の首都として認定することに踏み切った場合にはイスラエルとの国交断絶の可能性もあると話した。
 エルサレムの問題は、昨日アンカラで行われたエルドアンとアブドゥッラー2世ヨルダン国王の会談の中心議題になることが決まっていた。ヨルダンはエルサレムにあるイスラームの聖地管理の役目を負っている。
 一方、トルコのメヴリュット・チャヴシュオール外務大臣は昨日、在イスラエル米国大使館のエルサレムへの移転は「甚大な過ち」となるだろうと述べ、レックス・ティラーソン米国務長官に対しこの措置について警告を発した。
 NATO本部で行われたティラーソン国務長官とのバイ会談前に、チャヴシュオール外相は「(米国の大使館移転は)甚大な過ちとなり、いかなる安定ももたらさず(中略)混乱と不安定を生じさせるのみである」と述べた。
 同外相はまた、「世界全体がこの措置に反対している」と述べ、ティラーソン国務長官に対して実際に自身の見解を伝えたこと、NATO外相会合でそのことを確認するつもりであることを述べた。


ヨルダン:
 ヨルダンでは、エルサレムへの米国大使館移転に関するトランプ大統領の決定について、これに警告を発する政治的言説がこの3日間でその語調を強めた。王宮府は昨日、アブドゥッラー2世ヨルダン国王のトルコ訪問にあたっての声明において、エルサレムにおける事態の展開を最優先事項とし、その他の案件とともに協議することを明らかにした。
 ヨルダン国王はトルコのエルドアン大統領と会談すべくアンカラに向けて発つ直前、フランスのエマニュエル・マクロン大統領より電話連絡を受け、米大使館のエルサレムへの移転に関する米大統領の意向が及ぼす影響について協議した。
 ヨルダン国王は最近の声明およびマクロン大統領との電話の中で、米大統領の決定が「地域の安全保障・安定に対して深刻な影響を及ぼすことになるとともに、和平プロセスの再開に向けた努力を台無しにすることになる」ことを繰り返し強調した。国王は、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家建設を実現する包括的解決の枠内でエルサレム(の地位に関する)問題を解決し、パレスチナ国家がイスラエルとともに安全・平和を享受することが最優先であるという点にこだわりを見せた。
 アブドゥッラー2世国王は、パレスチナのマフムード・アッバース大統領とパレスチナ自治政府が二国家解決案に基づき独立したパレスチナ国家を建設できるよう支える必要性を訴えた。


サウジアラビア:
 最高ウラマー会議の事務局は、エルサレムおよびアクサー・モスクがイスラームにおいて有する重要な地位を確認するとともに、東西にまたがる全ムスリムの心の中で大きな位置を占めるものをこの二つが代表していることを強調した。同事務局はまた、エルサレムはコーランの加護が与えられた場所が複数存在する土地であり、最初のキブラであると同時に、預言者ムハンマドの夜の旅と昇天の奇跡の場所でもあることを強調した。
 サウジアラビア通信社によると、同事務局は昨日声明を発表し、パレスチナ問題の対処にはエルサレムが有する重要な地位、そしてその地位がムスリム一般の感情・思いと絶対に切り離せない関係にあることが考慮されるべきであり、平和は正しさ、正義、公正の上に成り立つと述べた。
 同事務局は二聖都の守護者の国サウジアラビア王国がエルサレムおよびアクサー・モスクのために払った努力を賞賛し、サウジアラビアが政治・経済的支援、人道的支援の義務を果たしているアラブ・イスラーム諸国の筆頭であり、これは同国が故アブドゥルアズィーズ国王の手によって建国された当初から、サルマーン・アブドゥルアズィーズ現国王そして副首相兼国防大臣のムハンマド・ビン・サルマーン皇太子の時代に至るまで維持されてきた不動の政策であることを指摘した。


イラン:
 イラン最高指導者アリー・ハメネイ師の公式ウェブサイトが昨日伝えたところによると、ハメネイ師は米国の大使館移転に向けた意向について、米国の無能・破綻ぶりを示すものであると述べた。
 ハメネイ師は「彼ら(米国人)が占領されたパレスチナ(注:イスラエルのことを指している)の首都はエルサレムであると宣言したいと述べていることは、彼らの無能・破綻ぶりに帰するものである」と述べた。同師はまた、「パレスチナ問題に関して、米国の手には枷がはめられている。彼らが自分たちの目標実現に向けて前進することはできない」と述べた。
 ハメネイ師は、パレスチナは「解放され」パレスチナ人は勝利するだろうと述べ、「米国高官ら本人が、シオニスト政権の安全保障を維持するためには中東地域で戦争を引き起こす必要があると述べていた」と述べた。同師はさらに、「米国が欲するものが何であれ、この国はその目標実現のためイスラームに対し敵対的な行動をとるだろう」と述べた。
 イランのハサン・ロウハーニー大統領はトランプの決定を非難し、イランはこれを容認しないと述べた。ロウハーニー大統領は高官らを前にテヘランで行ったスピーチで、イランは「イスラームの聖地を犯す行為を容認しない」と述べた。同大統領は、テヘランに集まったイスラーム諸国出身の政界・宗教界の高官らに向けて「ムスリムはこの大きな陰謀を前に団結すべきである」と述べた。


アラブ連盟:
 アラブ連盟は昨日、ヨルダンとパレスチナ人の要求に応じ、エルサレムに関する米国の決定について議論すべくアラブ連盟閣僚級緊急会合を開くことで合意したと発表した。
 パレスチナの代表団が連盟の事務局に提出した公式覚書によると、会合では「米国がエルサレムをイスラエル占領国家の首都に認定することに関して、米大統領が行うと目される宣言をめぐる事態の展開」について協議される予定である。
 カイロに滞在するアラブの外務省官僚はAFPに対し、会合は次の土曜日(9日)午後に行われる予定であると述べた。アラブ連盟はこの会合について、「米国の立場に生じ得る変化、そしてこの変化がエルサレムの地位およびその法的・歴史的地位に抵触することに関して、アラブ諸国がとるべき行動について議論する」と述べた。
 ロンドンでは、マヌエル・ハッサースィヤーン在英パレスチナ外交代表が昨日、トランプ氏がエルサレムをイスラエルの首都に認定したことについて、これは宣戦布告になるだろうと述べた。
 マヌエル氏はBBCラジオのインタビューで、「トランプ大統領が自分の意図すること、すなわちエルサレムがイスラエルの首都であるということを発言したのだとすれば、これは二国家解決案に対する死の接吻を意味する。彼は中東において15億人のムスリムと何億人ものキリスト教徒に対して宣戦布告を行うことになる。彼らは聖地がイスラエルの支配下に完全に置かれることを容認しないだろう」と述べた。


シリア:
 公式メディアがシリア外務省の情報筋の発言として伝えたところによると、シリア政府は火曜日、トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認定したことを非難し、これを「危険な措置」であるとみなした。
 同情報筋は、「シリアは米大統領が大使館をエルサレムに移転させ、エルサレムをイスラエル占領国家の首都として承認しようとしていることに対し、最も強い表現を用いて非難する。このような措置は、パレスチナを蹂躙する犯罪行為に対して王冠を授ける行為である」と述べた。
 同情報筋は、「米政権によるこの危険な措置は、米国の国際法軽視を明確に表したものである」と強調し、「シリアはアラブの民衆そして生気に満ちたアラブの諸勢力に対し、米政権の敵対的政策によって風の吹きすさぶ場所に置かれたアラブの権利、聖地、利益を守るため立ち上がることを、今一度呼びかける」と述べた。

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( 翻訳者:北本芳明 )
( 記事ID:43912 )