イラク(クルディスタン):バルザーニ大統領はイランに対する「安全保障上の脅威」を阻止すると約束
2018年01月22日付 al-Hayat 紙
バルザーニ大統領を歓迎するローハーニー大統領
バルザーニ大統領を歓迎するローハーニー大統領

■バルザーニ大統領はイランに対する「安全保障上の脅威」を阻止すると約束

【バグダード:本紙】

イラク・クルディスタン地域のニチェルバン・バルザーニ大統領は、「我々の総力を挙げて、イランに対する安全保障上の脅威を阻止する」と約束した。この約束は、同大統領のテヘラン訪問の中で表明された。このレベルでのイラン訪問は、クルド人の独立住民投票の危機以来、初めての出来事。今回の訪問は、クルディスタン地域が最近のイランの抗議デモを援護していたとの非難を受け、両者間の関係を調整することを目的としている。一方、イラクの連邦裁判所は、国会選挙の延期をめぐる論議に終止符を打ち、選挙は予定されていた日程通り行うことで固まった。しかし、県議会選挙の延期をめぐる議論は依然継続している。

イランのハサン・ローハーニー大統領は昨日(21日)、バルザーニ大統領およびクルディスタン地域副大統領を歓迎し、「クルディスタン地域はイラクの重要な一部であり、同国の安全保障と安定を強化する重要な役割を果たしている。地域の安全保障と安定を揺るがそうとする一部勢力の試みに立ち向かうため、地域の協力を強化することに関心を払わねばならない」と述べた。これに対し、ロイター通信が伝えたところによると、バルザーニ大統領は、イランとイラクの国境は友好と発展の国境であるべきであり、クルディスタン地域当局はイランに脅威を与えるためにクルドの土地が利用されることを一切許さないと強調した。さらに、同大統領は、「我々は常に統一されたイラクを欲している。我々は、全ての当事者がイラク憲法を遵守し、憲法の枠内での問題解決を追求すべきであると考えている」と述べた。

これに先立ち、バルザーニ大統領はイランのアリー・シャムハーニー国家安全保障最高評議会事務局長と会談を行った。シャムハーニー事務局長は、イラン人のクルド反体制派勢力がイラクのクルディスタン地域から国境越しに行う空爆が続いていることに懸念を表明した。ロイター通信が伝えたところによると、シャムハーニー事務局長は、「反革命集団がクルドの土地を利用して我々の兵士・市民を暗殺し、クルド地域に戻り、そしてクルドの公式メディアを通じて犯行声明を発表していることは許容できない」と述べた。同通信社によると、バルザーニ大統領は「イランとクルディスタン地域の関係・協力枠組みの拡大が、反体制派集団の行いに左右されることはない。我々は、総力を尽くして、イランに対する安全保障上の脅威を阻止すべきだ」と述べた。

一方、イラクの連邦裁判所は昨日、政府が5月12日に実施するとした総選挙のいかなる延期も許されないとする、憲法に基づいた決定を下した。この日程は、憲法が定めた選挙実施期日内におさまっている。

イラク憲法第56条は、国民議会の任期を最初の開会から西暦で数えて4年と定めており、選挙は任期終了から45日以内に実施されなければならない。そのため、選挙を6か月延期するという提案は却下された。また、サリーム・ジュブーリー国民議会議長は声明を発し、その中で連邦裁判所の決定は選挙実施日をめぐる論議を終わらせたと述べた。

選挙延期を要求していたスンナ派勢力及びクルド勢力が、総選挙と同時実施が予定されている県議会選挙の延期を追求する可能性はまだ残っている。これらの選挙の日程は憲法上の縛りを受けないことから、延期の機会はある。

数日前から選挙の延期を要求している国民勢力同盟(スンナ派)は、連邦裁判所の決定を尊重すると発表した。国民勢力同盟のサラーフ・ジュブーリー議長は声明を出し、その中で、「我々は連邦裁判所の決定及び憲法を尊重する。しかし、裁判所は我々が選挙の延期を要求する背景にある懸念を顧みることなく、法的事項に依拠してこの決定を下した」と述べ、「懸念が依然としてある以上、現状では、県議会選挙は延期されるべきと我々は考える」と述べた。

選挙に対するスンナ派勢力の懸念は、モスルやアンバール、サラーフッディーン、ダヤーリー、バグダード郊外からの避難民300万人をめぐる2つの問題に集約される。彼らは故郷の町が破壊され、復旧計画が始まっていないため、または法律上の制約のため、故郷の町に帰れずにいる。

しかし、人民動員隊がアンバール県(注:スンナ派住民が多い地域)の治安の主要部分をおさえている件は、水面下で議論されている最も機微な問題の一つに数えられる。複数のスンナ派党派は、アンバール県各地域では人民動員隊の同盟勢力(シーア派)に資する投票方式がとられ、これに対しほとんどの住民が投票を棄権するだろうと予測している。

シーア派の宗教指導者の一人であるジャワード・ハーリスィー師は、国会選挙のボイコットを呼びかけた。しかし、他の宗教家らはこの呼びかけを拒否した。ボイコットの理由は、総じて、政治勢力が治安・公的サービスを確保できていない一方で、選挙法や票の買収を通じて現行の政治勢力図を再生産しようとしていることに帰する。

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( 翻訳者:北本芳明 )
( 記事ID:44209 )