シリア:米国はアサド政権の化学兵器使用疑惑を指摘、露は米国が紛争解決を破綻させようとしていると非難
2018年02月03日付 al-Hayat 紙
アフリーンで殺された息子の棺の上で嘆き悲しむシリアのクルド人女性(写真提供:AFP)
■米政府はシリアでの選択肢を検討、露は米国が紛争解決に「罠を仕掛けている」と非難
【ワシントン、モスクワ、ロンドン:ジョイス・カラム、本紙】
米政権の中枢では、シリア問題をめぐり急速な展開を見せている。国務省は、ホワイトハウスがダマスカス郊外の東グータにおけるシリア政権の化学兵器使用への米国の懸念を明らかにしたこと、およびロシアに対して暗黙的な警告を発したことを確認した。同時に、ジェイムス・マティス米国防長官は、米政権はシリア政権がグータ市でサリン・ガスを使用したことを確認するための手段を模索していると発表した。
ロシア政府は、米政府がシリアにおける政治的解決プロセスに「罠を仕掛け」ようとしていると非難した。ロシア外務省の情報筋は昨日(2日)、(シリア政権が)新種の化学兵器を開発しているとする米国の嫌疑は、「正確な根拠を欠く」ものであると述べ、シリアのバッシャール・アサド大統領を「悪玉に仕立て上げ」ようとするものであると見なした。インテルファクス通信は、同情報筋の発言を引用し、米政府は「シリアの化学兵器の議題を利用して、シリアにおける政治的解決プロセスに地雷を埋め込もうとしている」と報じた。
ホワイトハウスの高官らは一昨日(1日)、シリア政府が新種の化学兵器を開発した疑いがあるとし、ドナルド・トランプ政権には要すればシリア政権軍に対しさらなる軍事行動をとる用意があると指摘した。これを受け、米国務省および国防省はホワイトハウスの立場を支持し、ヘザー・ノーアート外務省報道官は「シリア政権が塩素ガスを使用し、ダマスカス郊外の東グータに住む無辜の市民を脅かしたとの報告に関して、米政権は大いに懸念している」と述べた。
マティス国防長官は、シリア政権が「繰り返し塩素ガスを使用した」と述べ、米政権は「サリン・ガスも使用されたのではないか」と懸念しており、「この件に関する調査手段の検討を試みている」と述べた。
仏は米国の側に立ち、シリア政権が化学兵器を使用しないとの約束を履行していないことに関して「深い懸念」を示した。仏外務省は昨日、仏政府はシリア政権がシリアの村や町に対して行っている攻撃の中で、毒ガスが繰り返し用いられているとする報告書に関し、パートナー国と共同で対応すると述べた。
米政権がこの件についてメディア上の圧力を行使するのと並行して、先週の初めにロシア諜報機関の代表団がワシントンを訪れた後、米露間の連絡調整は加速した。同訪問では、ロシア対外情報庁(SVR)のセルゲイ・ナルイシキン長官が代表団長を務め、マイク・ポンペオCIA長官と会談を実施した。
また、ヨーロッパ情報筋が本紙に対し、イスラエル国内にはアサド政権が化学兵器をヒズブッラーに運搬しているのではないかという懸念があることを強調する中、ロシア連邦安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記は昨日、イスラエルに到着した。米国務省は、シリアで「ロシアが圧力そしてその並外れた影響力を行使しなかった場合、ロシアは誤った選択肢をとることになる」との見解を示した。
米高官らは、米ロの仲介で協定が結ばれ、これに基づき2014年にシリア政府がすべての化学兵器を引き渡したにもかかわらず、シリア政府は化学兵器庫の一部を保持していたと述べた。米高官らは、最近実施された(シリア政府の)一部の攻撃の性質は、シリアが新たな兵器を開発し、出どころの調査が困難になるような毒性化学物質の使用方法を編み出した可能性があることを示唆していると述べた。高官らは匿名を希望し、特定の事例を挙げることは差し控えるとした。
本紙が得た情報によると、マイケル・ラトニー米国務省シリア問題担当特使は来週その職務を離れ、駐ヨルダン外交官のポジションにつく。一方、トランプ政権はその後任に、元軍高官を任命することを検討している。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
( 翻訳者:北本芳明 )
( 記事ID:44298 )