■どのようにして近代において焚書は起こるのか(1)
【ハーリド・ガザール : 本紙】
古代、近代の歴史では二種類の焚書がある。一つは人知を超えた自然環境や自然災害に起因する。例えば、1966年にフィレンツェを襲い、貴重で高価な書物を含む約200万冊を破壊した氾濫や、1988年にサンクトペテルブルクの科学アカデミー図書館で起こった、約350万冊の図書を焼き尽くした火災のことだ。こうした災害は、積み重ねられてきた文化的遺産を台無しにすることから、人々を悲しませ、そして悔やませる。二つ目の破壊は、最も酷いと同時に最も残虐であり、あらゆる時代、特に近代の趨勢の中で世界の歴史が経験してきたことだ。権力者による図書館の大規模な破壊は意図的なものだったのだ。権力者は図書を燃やし、水に投げ捨て、また思想の点で受容できない特定の作家を排斥したばかりか、彼らの思想のその政治的な指向が危険を生むとみなした。歴史は焚書により見せしめにされてきた数多くの作家を擁している。「知の科学」シリーズ出版のレベッカ・ヌースによる著作「20世紀の政治体制庇護下における焚書、図書と図書館の破壊」は、この問題に強く焦点を当てている。本書はアーティフ・サイイド・ウスマーンによって翻訳された。
著者のヌース氏は、図書と図書館の破壊という惨事に苦しめられる者達と、自発的に、むしろ喜んで火の中に本を投げ込む者達の間に違いがあるのかを問う。また、20世紀を特徴づける者達の文化に対する大規模な暴力と破壊と共に人類がどのように発展してきたのかを問うている。図書と文化一般に対し権力機関が働く暴力は、単なる悪い風潮ではない。それは前世紀、とりわけ全体主義的な体制が樹立し、その思想的体系が急進主義的なイデオロギーへと変容した時に勃発した政治的闘争の流れの中でもたらされたのだ。
著者は、イデオロギー的、政治的理由から文化と書物を圧倒的な破壊を残した政治体制を選んだ。第1の事例は、20世紀前半のドイツのナチス政権である。ヒットラー指導下のドイツ社会では民族主義、帝国主義、軍国主義、そして全体主義がすべての人々にしっかり根付いていた。2100万人以上の老若男女の虐殺に加え、ナチズムの信奉者は、破壊の波の中で敵の文化的遺産を支配、ないしは抹消しようとした。こうした中、彼らは民族的、国民的遺産の破壊を戦争の武器として、文化的根絶の道具、または他の文化を冒涜するための道具として、あるいはドイツ色に染め上げられた未来を創る手段として用いた。同様に彼らは、人類に人命を失わせたのと同じように文化を失わせるようなやり方で、印刷物の検閲措置と略奪を主張し、最終的には人種・民族の優性・劣性の分類に従って図書と図書館を破壊した。
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( 翻訳者:松浦葵 )
( 記事ID:45273 )