公式の統計数値によると、イスタンブルには1,500万人が暮らしている。イスタンブルは人口の観点から、204カ国中131カ国を上回っている。
イスタンブルには11の国立大学を含む51の大学と、5つの職業高校がある。この都市で学ぶ学生数は、小国の人口に匹敵する。高等教育機関で学ぶ学生数は120万人で、この数字は初等教育と高校を含めると400万人に及ぶ。
イスタンブルでは、417万台以上の車両が登録されている。トルコ国内の20県の総人口は、イスタンブルの車両数とほぼ変わらない。メガシティは解決が待たれる問題を非常に多く抱えている。
交通、緑地、近年議論が熱い地震問題、都市改革、雇用、学生ら若者たちの期待といったテーマにおいて、イスタンブルの再選挙前に候補者らから公約を聞きたいと考えていた。しかし、選挙前期間における候補者らは公約よりも他の問題で議論していることがわかった。
milliyet.comの報道によると、特に公正発展党(AKP)のイスタンブル広域市市長候補であるビナリ・ユルドゥルム氏と共和人民党(CHP)の同じく市長候補であるエクレム・イマムオール氏が出演した共同の生放送では、もちろん公約やプロジェクトについて話されることが予想されていた。しかし、そうはならなかった。
選挙まで24時間となった。候補者らが様々なチャネルで公表した公約についてまとめてみた。われわれはみなさんのために専門家に話を聞いた。■メトロバス
ビナリ・ユルドゥルム氏は、現在レール及びメトロバスシステムが18%程度のシェア率であり、この割合を48%まで増やすことを目指すと語った。同氏は、イスタンブルのどこにいても半径750メートル以内で公共交通機関の停留所にたどり着けるようにすると表明した。
エクレム・イマムオール氏は、メトロバスの乗客定員数を2倍にすると公約している。10年もの運用期間を持つ高コストのメトロバスの代わりに、新たな世代の地域メトロバスが利用されることになるだろうと述べている。つまり、メトロバスのシェア率を増やすことを公約としている。
専門家の意見:特にエクレム・イマムオール氏のメトロバスの定員数を倍増させるという公約が批判の的となった。ゴム車輪で車軸の問題を解決させるという方法は、長期的には持続可能ではない。このため、レイルシステムがまずは優先されるべきであるとされた。
車両寿命と乗客1人当たりの輸送コストを計算すると、このプロジェクト(における新車両)の平均寿命は30年でなければならないことが強調された。
こうした観点から、メトロバスが高価であることがわかる。他県での使用や国外への輸出がない場合、イスタンブルでの使用のためだけに生産することで別途追加の経済的負担が発生すると述べられた。また、ユルドゥルム候補がレイルシステムにより重きを置くと強調しているわけではないことも意見に出た。
■マルマライ
エクレム・イマムオール氏は、マルマライ北部にイスタンブルの両サイドをつなぐレイルシステムを接続させ、新しいボスポラス海峡横断線を設置すると述べている。
専門家の意見:このようなプロジェクトの費用は、30億から50億ドル近くに上る可能性があると述べられた。運輸省も同じロケーションで、2015年に巨大イスタンブルトンネルプロジェクトを提案した。したがって、市の財政規模でこのようなプロジェクトを公約にするというのは計画ミスと見なされた。
■地震、都市改革
エクレム・イマムオール氏は、就任後1年以内に高齢者や障害者らが暮らす家庭に天然ガスの検知器を配布すると公約している。同氏は、自治体の都市改革プロジェクトの保証人になるとも述べている。「すべての都市改革のプロセスにおいて、科学的な正当性とそこで暮らす住民らの発言権を基盤とする」と話している。
専門家の意見:専門家らは、家庭内の天然ガス検知器に問題はないと述べている。都市改革は実施者と市民、そして地方自治体からなる3本の柱で構成されており、イスタンブル広域市当局はこの3本柱に対して等しくアプローチする必要があると述べられた。自治体がいずれか一方の保証人になるということはできないことが強調された。
ビナリ・ユルドゥルム氏は、災害問題に関する研究に対してプロジェクトの期間を設けるべきであると述べている。都市改革についての資源や手続き、及び政策については明確に述べていないと批判されている。また、余剰住宅や都市部、特にボスポラス海峡のシルエットに関しては、どのような研究が行われるのか明確に説明されるべきとの意見が出た。
■緑地
エクレム・イマムオール氏は、イスタンブルに2,000万平米、つまり2,600スタット規模の緑地と、500キロメートルのサイクリングロードを設置すると公約している。
専門家の意見:これら2つのプロジェクトは、実現可能とはとても思えない。既存の公園の他に2,000万平米もの新しい公園が、どうすれば設置できるのか見当もつかない。このために既存の建物を壊すというのだろうか?こうした状況で、不動産の問題は市民の犠牲なくしてどのように解決されるというのか?それとも、サーヒル・アクスで新たに埋立地を作るとでも言うのだろうか?これらの疑問はすべて未回答のままだ。
ビナリ・ユルドゥルム氏は、「グリーン・ネットワーク」というプロジェクトを立ち上げた。イスタンブル内の20ヶ所の小川を復活させ、周辺の緑地化によってイスタンブルの緑地を2倍にすることで5,550万平米まで緑地を増やすという計画だ。
■雇用
ビナリ・ユルドゥルム氏は、失業者のために39ヶ所の地区に雇用センターを開設すると発表している。そして、毎年10万人のイスタンブル市民に雇用をもたらすと公約している。この数字は、テクノロジーセンターと国際的な分野で需要を生み出すと予想される見本市の分野により、5年間で50万人に新たな雇用を提供することを目指している。
エクレム・イマムオール氏は、短期間に少なくとも15万人に新たな雇用をもたらすと公約している。
専門家の意見:政府の雇用対策と支援は、この時点で非常に重要な意味を持つ。この観点から、ユルドゥルム氏はイスタンブルの雇用面で期待値を達成できる可能性があると考える。
イマムオール氏の公約が掲載されているインターネットサイトでは、ある箇所では短期間に15万人へ雇用を提供すると書かれている。しかし、サイト内の他の箇所ではこの数字が20万人に増えている。この状況は市民を混乱させるものとして解釈される。
しかし、自治体の力だけでこれほど多くの失業者にどうやって仕事を探すというのだろう?このために、どのような方法が取られるのだろうか?自治体がこれに専念した場合、その他の活動はどうやって進められるのだろう?こうした疑問への回答はない。要するに、特に短期間で20万人に雇用をもたらすという公約は非常に強引と考えられる。
■教育及び若者に向けた公約
ビナリ・ユルドゥルム氏は、10GBのインターネットサービスという公約を前面に推している。同氏は国立学校における学校と家庭の共同活動に対して関連眼光の緊急な必要性に応じて支援パッケージを提供すると述べている。家庭の予算と学校の質の向上を公約としている。同氏は、「インターンシップの機会を得られない学生らに、インターンシップの機会を提供する。イスタンブル広域市の組織内、及び民間セクターで若者のための学生及び就業前有償インターンシッププログラムを作成する」と述べている。
エクレム・イマムオール氏は、75,000人の大学生に毎月400トルコリラの給付型奨学金を支給することを公約している。500人定員で12ヶ所が女性用、8ヶ所が男性用の学生寮の建設により、1万人に宿泊施設を提供すると述べている。YDSやTOEFL、IELTSの各コースが開講され、コースに合格した学生は一度だけ受験料の支払いが求められるという。
専門家の意見:自治体から高等教育を受ける学生らへ給付された奨学金は、CHPが2008年11月
21日に憲法裁判所に提訴した裁判の結果取り消されることになった。裁判所は、第5102号「高等教育学生の奨学金、融資に関する法」における公的機関や団体が高等教育学生に直接奨学金や融資を行うことを阻止する条項に対し、「自治体を除く」という解釈を満場一致で棄却した。これにより、トルコ全体で自治体から奨学金を得ていた35万人の学生らの奨学金が打ち切られた。
イマムオール氏がコースを開講するという公約は、現在の既存システムより先に進むことはない。なぜなら、イスタンブル広域市芸術・職業訓練所(İSMEK)は今でも多くの支局で無料のトレーニングを提供しているからだ。
■値下げ
ビナリ・ユルドゥルム氏の公約:
イスタンブル駐車場の最初の1時間分の料金を値下げする。
イスタンブル全体で天然ガスの価格を10%値下げする。
国から社会的支援を受けているすべての低所得世帯に、毎月50トルコリラ分の天然ガス及び80トルコリラ分電気代を給付する。
イスタンブルガス株式会社(İGDAŞ)やイスタンブル市水道局(İSKİ)を始めとするイスタンブル広域市が提供するすべてのサービスで滞納金を全額支払うと表明した市民に対し、延滞金や懲罰を課さない。
公共交通機関利用者に対し、イスタンブルの両サイド間をつなぐフェリーを完全無料化する。
7月15日殉教者の橋、及びファティフ・スルタン・メフメト橋は、30万人のオートバイ使用者に無料で開放される。
学生は博物館や市の劇場の入場料を無料とする。
学生に対して40トルコリラまで引き下げられた毎月の交通費は、大学準備中の若者に対しても1年間有効とする。
公共交通機関の教員らの運賃を無料とする。
エクレム・イマムオール氏の公約:
25歳以下のすべての若者は、公共交通機関の運賃が40%割引される。公共交通機関では、最初の輸送が無料となる。
イスタンブル若年者カードの使用で、イスタンブル広域市内のすべての文化・芸術活動やスポーツ施設の利用が50%割引される。
0~4歳の子供を連れた女性や12歳未満の子供は、市のサービスで定期的に実施されているボランティア活動から無料で支援を受けることができる。同時に、すべての公式、国家的、宗教的祝日において、公共交通機関の最初の乗車からその後30分以内の乗り継ぎまで無料となる。
専門家の意見:ビナリ・ユルドゥルム氏の無料化に関する社会的公約は、どのように維持されるのかという点で詳細な情報が提示されていない。
エクレム・イマムオール氏も実施する割引を持続可能にする方法について明確にしていない。ある公約については、現状より後退している。現在、政府が祝日の公共交通機関利用料を無料としているのに対し、イマムオール氏はそれを有料にしようとしている。
■社会福祉
ビナリ・ユルドゥルム氏:
毎年25,000人の支援を必要とする障害者を持つ世帯が、最低でも1週間は恩恵を受けられる形でイスタンブル広域市のサマーキャンプを開催する。障害者とその家族に夏休みの機会を提供する。
低所得世帯の学生に対する文房具のサポートを増加する。
イスタンブル広域市の社会施設で行う結婚式では、低所得世帯に8,000トルコリラの結婚式支援が行われる。
エクレム・イマムオール氏:
社会福祉予算を3倍にする。各世帯に毎月200トルコリラから2,020トルコリラまでの現金給付を行う。すべての支援は世帯内の女性に対して行われる。
飢餓問題を解消する。ホームレス問題を進展させる。
貧困ライン以下の所得で新たに世帯を持つ若者に対し、2,000トルコリラの支援を行う。
支援を必要とする人々や学生らが適切な価格で品質の良い家具を使用できるよう、白物家電及び家具の生産を行う。
貧困者や支援を必要とするイスタンブル市民、特に初等教育を受ける年齢の子供たちに対し、無料で牛乳を配布する。
イスタンブル及び周辺において牛乳背産のための施設を建設する。
専門家の意見:イマムオール氏が自治体のちからでこれらすべての公約を実現させることは不可能だ。なぜなら、自治体にはこれほどの財源がないからである。
白物家電や国内のメトロバス生産、そして自治体の力による貧困撲滅は不可能と思われる。
専門家らは、ビナリ・ユルドゥルム氏の公約のほうが実現可能と見ている。
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( 翻訳者:永山明子 )
( 記事ID:47011 )