Abdulkadir Selviコラム:メッセージは受け取られたか?イスタンブル市長選
2019年06月25日付 Hurriyet 紙

政治には歴史的な画期の瞬間というものがある。これは、あるときは地方選挙で、あるときは国政選挙で起こる。あるいは、国民投票で起こるものだ。

1989年と1994年の地方選挙はまさにそのような選挙だった。

2002年11月3日の選挙は、公正発展党(AKP)時代の始まりとなった。1987年の国民投票では、スレイマン・デミレル、ネジメッティン・エルバカン、ビュレント・エジェヴィトの政治活動の禁止が解除され、彼らの復活につながったのであった。

6月23日の選挙も、そのように観るとよいだろう。

私は1989年の地方選挙の様子を祖国党(ANAP)の本部で取材した。

ANAPは、イスタンブルとアンカラで敗北し、得票率は21.75%まで下がった。しかし、トゥルグト・オザル党首は「ANAPは選挙に勝利するだろう」という考えのもとに、予め用意されていた『行動の中から(İcraatın İçinden)』という番組に、セムラ夫人とともに出演していた。車の運転席にはオザルがいて、ボスフォラス大橋を渡りながら陽気な声で「セムラ、カセットテープをかけて聞こう」と言っていた。私たちは、ANAPのオルタン・スングルル副党首の部屋におり、選挙結果を尋ねた。彼は、「私たちの上をローラー車が通ったよ(=私たちの完敗だ)」と答えた。

1994年の地方選挙では、福祉党(RP)の本部にいた。私は、HBBテレビで正道党(DYP)を担当する通信員だった。しかし誰もRPを担当しようとしなかったため、その役が私に回ってきた。中継車も用意されていなかったため、選挙結果が発表され始めると、他党の前に用意されていた中継車がバルガト区のRP本部に移されてきた。その晩、エルバカン党首と何度か生放送をする機会があった。エルバカンは、画面越しにずっとイスタンブルを見ながら、「イスタンブルも勝ち取りたい」と述べたのだった。

1989年の地方選挙で、人々はANAPに真剣な警告を与え、社会民主人民党(SHP)を地方政治の与党に選んだ。しかしSHPは、イスタンブル水道局(İSKİ)・スキャンダルによってイスタンブルで失態をさらし、1991年と1994年の選挙で敗北した。ところがRPは1994年の地方選挙で掴んだ勝利をとてもうまく利用した。各自治体での勝利は、1995年にエルバカンを首相に、(その後)エルドアンを大統領に就任させたのだ。

■クルチダルオールの成功

エクレム・イマムオールの前には、ヌレッティン・ソゼンになるか、レジェプ・タイイプ・エルドアンになるかという選択がある(訳注:CHPソゼンはかつてイスタンブル広域市市長を務めた人物で、その後任がAKPエルドアンである)。エクレム・イマムオールは自分らしさを保ち、掴んだ歴史的なチャンスをうまく利用するだろう、と私は考えている。ここで、共和人民党(CHP)のケマル・クルチダルオール党首を正しく評価する必要がある。彼は、トルコの政治にエクレム・イマムオールを登場させた。エクレム・イマムオールを候補にするために、自分の党と敵対することを厭わなかった。私は、イマムオールがまだベイリキデュズュ市長だったときに彼の名を書いた最初の記者だ。私の記事を読んでもなお、陰謀説を唱えようとする者たちがいた。その全員にクルチダルオールは立ち向かった。私は、「エクレム・イマムオールは古典的なCHP党員ではなく、異色の人間だ」と書き、高等選挙委員会による(選挙結果の)取消措置が犠牲者を生むが、トルコ国民が犠牲者を助けるだろうこと、この最も顕著な例がエルドアンだと説いた。選挙期間に起こったVIP事件※とポントゥス問題※※がAKPにダメージを与えるだろうと述べた。結果は明らかになった…。私は6月23日の結果が、2023年の選挙に向けた力強い兆候を含んでいると思う。6月23日の埋め合わせはできても、2023年の選挙ではできない…。

※訳注1.VIP事件:イマムオール一行がオルドゥ空港で、VIP専用ルートを使用しようとしたところ空港職員に制止され、オルドゥ県知事を侮辱する言葉を発したとされる事件。
※※訳注2. ポントゥス問題:ギリシャのテッサロニキで撮影された、「ポントゥス」の地図をバックにしたイマムオールの写真を取り上げたもの。ポントゥス人は古くからアナトリアの黒海沿岸地域に住むギリシャ正教徒で、第1次世界大戦中に分離運動を起こした。

■選択肢あり

6月7日の選挙でも、人々はAKPを警告した。しかし選挙後、新政権は発足されず、クルディスタン労働者党(PKK)が溝堀り戦争を始めた。このような構図を前に、国民は11月1日の選挙でAKPを再び与党に選んだ。6月23日の選挙でも、AKP派は同じことが繰り返されることを期待していた。ただ、彼らは一点間違いをした。当時野党が犯したミスを、今度はAKPが犯したのだ。しかも当時、他の選択肢はなかった。今回は代替者が現れたのだ。私が言いたいのはつまり、強い変化の波があり、2023年への私の警告に注意してほしい、ということだ。

6月23日の選挙は、政治に新たなバランスを生んだ。トルコは今や6月23日以前の姿ではない。新たなパワーバランスが成立したのだ。今後のプロセスにおいては、エクレム・イマムオールとエルドアン大統領の動向を極めて慎重に追う必要がある。6月23日の投票箱からは、YSKによる取消措置への反発が顕れた。しかし、この結果をただAKPへの反発として説明しようとするだけでは不十分である。これまでの選挙の間、投票所からとても強い変化の兆しが出てきている。事態は、ただAKP政権や内閣で行われようとしている一連の変化だけで動かせるようなものとは思われない。エルドアンが基本的な政策における抜本的な改革を実現することが期待される。なぜなら国民は、選挙で示した変革へのメッセージが適切に体現されることを期待しているからだ。唯一変わらないものは、変わることそのものである。もしあなたが変革を適切に実現しないのならば、国民があなたを替えるだろう。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:金戸 渉 )
( 記事ID:47033 )