Abdulkadir Selviコラム「新党陣営の動き」
2019年08月30日付 Hurriyet 紙
地方選挙においてAKP(公正発展党)が候補者を擁立しなかった市の市長と元県知事らの電話が鳴り始めた。
今から1か月前、ダヴトオールの協力者が電話で「あなたと協力したい」と言った。よい答えは得られなかった。電話をもらった彼らはエルドアン大統領と協力すると述べた。ここ最近は、同じような面々で、アブドゥッラー・ギュルとアリ・ババジャンの政党に関係した活動を行う「ビジネスマン」が電話を掛け、協力したいという旨を伝えた。ビジネスマンのグループがババジャンの名を出して接触したことは、あなたにとって興味深くありませんか?市長・県知事らは、政治的にはエルドアン大統領と協力し続けると言って電話を切った。地方選挙の候補者として擁立されなくても、県の首長を解任されたとしても、「指導者(エルドアン)と共に始めた者は指導者と共にあり続ける」という意志持ち続けている。
アフメト・ダヴトオールが政治的なメッセージの発信を増やしていることは、政党設立の準備を加速しているという形で現れている。アブドゥッラー・ギュルとアリ・ババジャンの陣営でも似たような意見があると言われる。そのため、ダヴトオールに対する風当たりが強くなっており、ダヴトオールは焦っている、またアブドゥッラー・ギュルとアリ・ババジャンの陣営は注意を払っている。アブドゥッラー・ギュルとアリ・ババジャンの陣営による政党の設立は12月に延期されると言われている。以前は9月~10月と言われていた。さらに、12月ですらなく2020年まで延期されるという人もいる。焦っていないのは当分の間選挙がないからではない。それよりも景気と関係するところが大きい。というのは、7月・8月にはS400ミサイルの件でトルコがアメリカから制裁を受けるという見方が強かった。1年前には、トランプ大統領のツイートにより1ドル=7.2TLまで値上がりした。今回も重い制裁があれば、1ドル=9TLまで値上がりし、経済が危機的な様相を呈すると予想されていた。そんな中、ババジャンらは国の危機的状況を自分たちに有利に働かせようと計算していた。危機の真っただ中に経済面で実績のあるアリ・ババジャンが華々しく新党での活動を開始するはずだった。しかしトランプ大統領は彼らの予想を覆した。予想されていた危機は起こらなかった。彼らも政党の設立を延期することを選んだ。
そのような中、アブドゥッラー・ギュルとアリ・ババジャンの政党設立を進めていた元副首相のベシル・アタライが少し前にエルドアン大統領を訪ね、新政党の設立に向けて辞表を提出していたことがわかった。エルドアン大統領はアタライに「お好きなように」と返答したとのことだ。
■ババジャンとダヴトオールの対話
プロセスが進むごとに、新党設立の動きにおける分裂がはっきりとしてくる。はじめはアリ・ババジャンはダヴトオールも行動を共にすると考えていた。それどころかこの件について彼は努力していた。しかし、アブドゥッラー・ギュルははじめから、ダヴトオールが新しい政治的活動を行っていることに対して冷ややかな目を向けていた。それどころか距離を取っていた。今年の初め頃、元大臣らのグループがアブドゥッラー・ギュルを訪ね「ダヴトオールがいれるならば我々は参加しない」と述べたという。ギュルはというと「ダヴトオールはいない。あなたたちは自らの仕事のことを考えなさい」と返したという。アブドゥッラー・ギュルは、中央に影響力を持ちEU加盟を目指す政党の設立を狙っている。そのため、ダヴトオールの「イスラーム主義者」的要素が新政党に影響することを望まなかった。また、リーダーとしての行動を共有することを受け入れなかったということも問題の別の側面となっている。
プロセスの中で、ババジャンもダヴトオールに固執することを諦めたということがわかっている。また、ダヴトオールがババジャンに電話し「我々は協力するはずだった」と叱責し、ババジャンは「私はそんなことを言っただろうか」と返答したという。2人の間の対話は徐々に決裂していき、その過程が新党結成プロセスとオーバーラップした。
■問題は深刻
少し前は、新政党は何をするのかという予測が支配的だったが、今は「指導者(エルドアン)は何をするのか」という点に移っている。エルドアン大統領は党大会開催のプロセスを開始させることで、AKPの血の入れ替えに乗り出した。しかし、組織の変更だけでは足りない。なぜならAKPには深刻な問題があるからだ。
政治的な言葉とは包括的なものではなく、分離的なものだ。AKPはここしばらく、MHP(民族主義者行動党)以外のパートナーを得られていない。改革をアイデンティティとして成長してきたAKPは、数年の間改革を忘れ安全主義的な政治姿勢に転換した。司法の秩序と民主主義の質の停滞が起きている。トルコは、国外資本を引き入れるという国家の特徴を失い始めた。我々と西洋諸国との関係にも問題がある。「再びアジアへ」という発展については理解しているが、政治体制をアジアに寄せることは受け入れられない。
野党は、一時期AKPが重ねてきた失敗を犯さないために注意を払っている。包括的な言葉でもって、新たな政治的パートナーを得ている。HDPは選挙の前、野党連合で表に出ないように努力していたが、受託者についての決定下された後に強力なかたちで参加するようになった。
展望はこのようなものだ。しかしAKP陣営では、エルドアン大統領がこれらの問題を片づけることへの期待は今なおある。AKPは、トルコに対して新しい何かを表明する必要がある。ごみ、泥のようで価値のない表現は過去のものとなった。新しく大衆を熱狂させるために、新たなストーリーが書かれるべきだ。エルドアン大統領はまだ、この変化をどのようにして現実のものにしていくかに関するヒントを発信していない。
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( 翻訳者:神谷亮平 )
( 記事ID:47439 )