トルコ映画:なぜカプランオールが?トルコのオスカー候補選挙で疑惑のコネクション
2019年08月26日付 Cumhuriyet 紙
トルコのオスカー候補が発表されたことに関するプロセスは透明性からほど遠いものである。しかしながら芸術行事委員会(SEK)がおこなった投票の詳細を私たちは入手した。カプランオール監督が8票を獲得した選挙プロセスにおいて3人のメンバーが参加しなかったことが明らかになったのだ。
トルコ映画界は土曜日から現在までトルコのアカデミー国際長編映画賞(旧名称はアカデミー外国語映画賞)部門のオスカー候補として発表された『アスルの繋がり』というタイトルの映画について話をしている。映画は未だに公開はされておらず、国内もしくは国外のいかなる映画祭においても上映がされていないため誰も鑑賞が出来ていなかった。しかしながらこれら全てのことを抜きにしたとしても問題があるという事は明らかだ。
まずは暫くオスカー候補のためにトルコからどの映画が選ばれる必要があるのかという事を決定していた芸術行事委員会は今年、どのようなメンバーで構成されていたのかを見てみよう。
エルキン・ユルマズ(文化省映画局長)、ブルハン・ギュン(TESİYAP)、ナージフ・トゥンチ(FİYAP)、デリヤ・タルム(SEYAP), トゥンチ・ダウト(SİNEBİR), アフメト・チャドゥルジュ(SETEM), アフメト・サルカヤ (SESAM), アイシェ・オズキョイリュ(BİROY), ハーカン・アイテキン(BSB), アイハン・ソンユレキ(SENARİSTBİR), ムアメル・サルカヤ (ASİTEM), セルカン・アジャル(FİLM-YÖN)、シナン・ギュンギョル(SİNESEN)、エムレ・イェティム(ÇASOD)、ユスフ・セズギン(SODER)、デニズ・シェンショズ(SİYAD)。
見てわかるように、合計16人で構成される委員会において、セクターの様々な職能団体、各労働組合そして協会の代表者たちがいるが、残念なことに全体の代表者は存在しない。オスカー候補選出のプロセスは、トルコにおいて完全な透明性をもって進まないため、この理由は私たちには知ることは出来ない。しかしながら例えばÇASODとSODERのような過去の年に比べると、その活動が減少した役者の組合が存在しているのに、なぜ俳優組合が参加出来なかったのか、もしくは映像ディレクター組合のような組織がここには含まれなかったのかという事を人々は疑問に感じている。
さて投票結果を見てみよう・・・私たちが入手した情報によれば、全ての映画作品は全代表者たちによって鑑賞された後に(幾つかは劇場で、また幾つかはメンバーへ送られたリンクからネット上で鑑賞された:例えば『アスルの繋がり』は劇場で鑑賞されている)非公開の投票が行われている。そして全てのメンバーが最も気に入った三つの映画作品を選びそのうちの一位には3点、第二位には2点を、第三位には1点を与えるというスタイルで審査が行われる。更に後にここから出た結果によって、最も高い得点を獲得した3つの映画作品に二回目となる投票が行われている(再びこの投票は非公開となる)そして最も多くの票を獲得した映画がオスカーへのトルコ代表として選出されている。11の映画が申請をした(下のリストの通り)今年に最も票を獲得した3本の映画は『アスルの繋がり』(セミフ・カプランオール)、『三人姉妹の物語』(エミン・アルペル)と『ノアの丘』(ジェンク・エルチュルク)のようにリストアップされた。しかしながら残念なことに、どの映画がこの段階で何票を獲得したのかということは私たちには分からない。二回目の投票はというと、全ての三つの映画が何票を獲得したのかということは明らかになっている。:『アスルの繋がり』は8票、『三人姉妹の物語』は3票、『ノアの丘』は2票である。
■投票に欠落が
ちょうどこの段階で以下のことを明らかにするのが良いだろう。SEKの投票において3票の欠落があるということが見て取れる。つまり合計で13票が投じられたが、本来存在するはずの16票ではない。また言われているところによればSODER、SİNESENとSİYADの代表者たちからは票が投じられなかったという。私たちが電話で話を伺ったSODERの代表者たちはユスフ・セズギン氏は、「投票は実際のところ9月の初めに実施されるはずでした、しかしながら予定が早まり、当日に私は郊外に出ていましたので参加できませんでした。」と話して、彼自身の候補もセミフ・カプランオールであったと話した。
また電話で話を伺ったSİNESENの代表者のシナン・ギュンギョル氏も投票の際には自身の映画を撮影していたため謝罪を伝えて投票には参加しなかったと言い、カプランオール監督の映画もまた同じ理由から鑑賞していないと話した。SİYADの代表者であるアリ・デニズ・シェンソズ氏には(私たちは何度も電話をかけたが連絡をとることはできなかった)はというと私たちの印刷時間にまで連絡をとることができなかったのでなぜ参加しなかったのかということについての説明を伺えなかった。
■疑惑のコネクション
その通り、誰も鑑賞しなかった映画がオスカー候補として発表されるという事は全く理屈が通らない(とにかく毎年映画祭で成功を納めた、もしくは観客の多くが好んだ映画作品が選出されるのが筋というものだ)しかしながら今年の選挙で物議を醸しだす他の要因も実際に存在している。映画プロデューサー陣の一人であるフルカン・イェシルヌルという人物がこの段階で注意を引く。イェシヌル氏は、映画のポスターにおいても見受けられるように「シネハーネ」という名の製作会社のプロデューサーの一人でありこの会社は実際にはトゥルクアズ・メディアの傘下である。つまりは映画界の多くの人間の脳裏に浮かんだ不愉快な疑念というのも、これに基づいているのだ。政権がテュルクアズ・メディアがプロダクションを担当した映画(更には監督を担ったひとつ前の映画作品の試写会をカプランオールは大統領官邸で行ったということも考えてみるとよい)がオスカーへと選出されたことは偶然なのだろうか?勿論、オスカーのために行われるロビー活動へと割り当てられるお金が一体どれほどになるのかということ(過去の年にもこの金額は明らかにされなかった、つまりは私たちは比較することさえできないのだ)そしてこれがどのように支払われるのかということも私たちの前に更に突き付けられる疑問だ。一体何と言えばいいのだろうか、全く。
■オスカー候補選出選挙に申請をした映画作品
-『お母さん、神は移民の子を愛するの?』(レナ・ルシン・ビトゥメズ)
-『負債』(ヴスラト・サラチョール)
-『自由な囚人』(メフメト・タンルセヴェル)
-『ボズクル「鳥を見よ鳥を」』(メフメト・タンルセヴェル)
-『三人姉妹の物語』(エミン・アルペル)
-『アスルの繋がり』(セミフ・カプランオール)
-『私たちのチャンピオン』(アフメト・カトゥクスズ)
-『マイナス1』(オルハン・オウズ)
-『門』(ニハト・ドゥラク)
■『アスルの繋がり』から最初のトレーラーが公開に
2020年に授与されるアカデミー賞国際長編映画賞のトルコ候補として発表された、セミフ・カプランオールが脚本を執筆して監督を務めた『アスルの繋がり』というタイトルの映画のトレイラーが昨日公開された。映画は、9月20日に国内で劇場公開される予定だ。
カプラン・フィルムとシネハーネの共同製作である映画の映像ディレクターはアンドレアスが担当している。
映画は、現代に生きる女性、そして母親になることにより生まれるジレンマとこの状況がその女性の周囲の人々との関係に起こる軋轢をスクリーンへと映し出している。音楽ディレクターはアンジェリカ・アクバル氏が務めて、9月20日に公開される映画のテーマは、要約すると以下のようになる:
「出産直後に仕事を始めるためにベビーシッターを探しているアスルは、長い時間探し求めた後に一人の若いベビーシッターを見つける。このベビーシッターのギュルニハンにも一人の赤ちゃんがいる。ギュルニハンとの出会いでアスルは自分自身にさえ隠し続けていた秘密との対峙を始める。
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( 翻訳者:堀谷加佳留 )
( 記事ID:47458 )