スーダン:米代表団訪問キャンセルの原因はロシアの軍事基地問題か
2020年11月20日付 al-Quds al-Arabi 紙


■米国代表団がスーダン訪問をキャンセル、ロシアの軍事基地に関係した対応か

【ハルツーム:アンマール・アウドゥ、本紙】

米国国家安全保障会議の代表団によるハルツーム訪問キャンセルが一昨日木曜(19日)に決まったことに関して、様々な解釈が出てきている。複数の情報筋が今回の訪問キャンセルは大統領選直後の米国国内の混乱に起因するものだとする一方で、元米国駐在の外交官は本紙に対し「今回の訪問キャンセルは、ロシアに対して紅海沿いの海軍基地建設を再び許可することを受けての、スーダン政府に対するメッセージだろう」と語った。


ある国内紙は木曜夜、「米国のハイレベル代表団がかねてより予定されていたハルツーム訪問を突如キャンセルした」と明らかにした。

この国内紙は、信頼できる政府筋の話として「米国国家安全保障会議の代表団は、ハルツームでの高官との合意の履行や二国間協力の促進方法に関する協議をキャンセルした」と伝えた。

また、同政府筋は「協議はかねてより予定されていたが、米国代表団が予定されていた木曜日のスーダン来訪のキャンセルを決定する直前の2日間に、スーダン政府と米国政府との間で活発なやりとりがあった」と続けた。

さらに、同政府筋は「選挙結果に起因する米国の混乱した国内情勢こそが代表団の訪問キャンセルの理由だ」と示唆した。


一方、数十年前にNYに勤務していたあるスーダン人外交官は本紙の取材の中で、「今回の訪問延期は、紅海におけるロシアの軍事基地に関するロシア政府とスーダン政府との交渉再開のニュースが報じられたことを受けた、スーダンへのメッセージだ。なお、この軍事基地は、かつて失脚したオマル・バシール前大統領がウラディミール・プーチン大統領に許可したものだ」との見方を示した。

また、匿名希望の人物も「これは十中八九、ロシアの軍事基地の話が再浮上したことを受けたスーダンへのメッセージだ。というのも、米国が関心を持っているスーダンに関するトピックは、次期大統領が誰になるかによって変わるようなレベルではない。歴史上、米国大統領が自国のスーダンに対する興味関心に対して影響力があったことなど一度もない。何故なら、それは常にインテリジェンス・コミュニティと国務省アフリカ局、および米国代表事務所が分担して取り扱う問題だったからだ。そして、インテリジェンスと国務省の双方のコミュニティは、大統領が誰になるかに関わらずスーダンの問題に取り組み始めている。これは例えば北朝鮮やイラン、キューバといった、大統領とその側近たちが対応を統括している他の大きな懸案事項とは対照的だ」と語った。

さらに「ロシアのアクションは、様々な政権下で米国の前述の機関の関心を集めるものだった。過去には、ロシア政府がスーダンを通じてアフリカに深く入り込もうとしたことで米国政府が激怒したことがある。ちなみにこれは、バシール元大統領がロシアに許可した海軍基地や中央アフリカへのアクションを通じて、アフリカに入り込もうとしたものだ。バシール元大統領失脚後これらのアクションは全て停止していたが、現在、そういったアクションが再開していることが米国にとって不安の種となっている。特に、同盟国であるイスラエルは、紅海におけるロシアの存在はイスラエルにとって『レッドライン』だと考えている」と続けた。

そして「現状、国際社会においてスーダンは一枚岩のようには扱われていない。それは、文民と軍人という2つの存在があるからだ。そして、メッセージは軍部に対して向けられていることは明らかだ。軍部はこれが移行期間だけの協力関係であり、西欧は民主化を支持していると常に感じている。そういうわけで、軍部の動きはロシア向きのものであり、ブルハン大統領がソチで行われたロシア・アフリカサミットに参加するためロシアを訪れたりした。ところが、一転して軍が米国と距離を縮めたのは、次期大統領のバイデン氏がとる政策を恐れているからのようだ。おそらく軍部は、イスラエルとの関係正常化問題が終結した後も米国政府内でのスーダンの功績を埋もれさせないために、軍事演習を行いたかったのだろう」と述べた。


一昨日木曜日、スーダン軍のムハンマド・ウスマーン・フセイン参謀総長は紅海での海軍基地建設に関してロシアと完全な合意には至っていないと否定した。

参謀総長は、報道発表の中で「現在のところ、我々は紅海における海軍基地建設に関してロシアと完全には合意していない。しかし、両国間の軍事協力は拡大している」と述べた。

また、「過去何年も米国や西欧からの封じ込めがあり、ロシアや一部の東側諸国から武器の提供を受けてきた」と続けた。

ウラディミール・プーチン大統領は月曜日(16日)、ロシアの国防大臣に対してスーダン領内に原子力艦が入港する可能性のあるロシア海軍の補給拠点の建設を命じた。また、プーチン大統領は勅令を通じてロシアの国防大臣に国家の代表としてこの合意に署名するよう指示した。

勅令では「基地建設は地域の平和と安定を支援する目的に応える、防衛的な性質を持つものであり、他国に対抗するものではない」ことが明らかにされている。また、先だってロシアのミハイル・ミシュスティン首相は、国防大臣および外務大臣と調整の上でこの決議案を承認したという。

前述の情報筋によると、軍事拠点は300人の兵士や職員を擁し、同時に入港できる船舶は4隻までであるが、核安全保障および環境保全の原則を順守した上で原子力艦も入港する船舶に含まれるだろうとのことだ。

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( 翻訳者:KT )
( 記事ID:50156 )