イスタンブル新運河、中国の4社が入札準備中
2021年04月09日付 Cumhuriyet 紙
投資に少なくとも300億ドルが必要なイスタンブル新運河計画。この計画に非常に強い関心を寄せる中国の目的は、トルコの地理的位置を利用して、貿易上の障害を克服することにある。このエリアに多く土地を所有するカタールと中国は、長きにわたり接近してきた。
【ジャレ・オズゲンテュルク】トルコはパンデミックのさなか、最も深刻な貧困にさいなまれている。若者の失業率は30%に近づいた。短時間労働給付金の給付終了に伴い、雇用者の側からは5月に新たに失業の波が押し寄せるだろうと聞かれる。
企業やホテルは借金の負担から逃れるために競売にかける段階に入っている。インフレは得たはずの利益を消し飛ばす。労働者の給料、退職者の年金は溶け、値上げはとどまるところを知らない。
こうした状況下、レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領が社会に示した「朗報」がイスタンブル新運河だ!
調査会社コンダの調査によると、15歳から30歳の98%がイスタンブル新運河計画を支持していない。つまり、若者は将来に影を落とすこの計画に反対なのだ。
専門家や研究者は10年間、この計画がイスタンブルにとって破滅的な計画だとエビデンスに基づいて主張し、自然環境が破壊されることを説明してきた。
イスタンブルを近い将来マグニチュード7程度の地震が襲い、200万近い建物が地震に耐えることができず、数千人が命を落とすと言われている。
しかし、この事実にも関わらず「頑なに」この計画は実行される。なぜなら、計画を立てたAKP党員、カタール、サウジアラビアがこのエリアを買いつくし、そこから上がる利益を待っているからだ。トルコのゼネコン大手のある関係者の話によると、ここから得られる利益は5000億ドルにもなるという。
ムラト・クルム環境相は、都市計画さえも許可したと語る。この「朗報」の発表のあと、誰がどのデータを用いてまとめたのか不明な環境影響評価報告書が公表された。4月24日まで異議申し立ての期間が設けられているが、雨の中列をなして表明された抗議は何の意味もなさない。なぜなら……
■中国企業が契約を
トルコ経済が危機に瀕しているために資本が投下されず、イスタンブル新運河計画は単なる選挙公約に終わるのではないかという希望は、入札実施の発表によって潰える。なぜなら、投下される資本は中国からもたらされるからだ。私が入手した情報によると、アンカラで動きがある。近いうちに行われる入札には現在4社が入札準備中だ。そして、この企業のすべてが中国系だ。
アンカラでは会合、契約交渉が行われている。
世界がアフターコロナの新たな時代に入ろうとするさなか、中国が計画に関心を寄せていることは当然だといえる。2年前から噂されていたからだ。アメリカ、ロシア、中国、EUは新たな時代に向け準備を始めた。中国の投資欲も、トルコの地理的位置からきている。中国は新たなオルタナティブを作ろうとしている。「一帯一路」構想においてトルコは重要な足がかりとなる。イスタンブル新運河への投資は、スエズ運河の遮断によって注目される「陸のシルクロード」の一部分となる。
ボスポラス第3大橋に投資した中国がそこにとどまらないことは明らかだった。イスタンブル新空港や港湾といった他の計画にも関心を寄せる中国は、総力を挙げてトルコに進出しはじめた。中国は当然、単にイスタンブル新運河に投資するだけではない。巨大ゼネコンを擁する中国はその建設も引き受けるだろう。
AKPの幹部はいったいどうやってここからトルコの「5大ゼネコン」に契約を結ばせるというのか。
■イスタンブルが腐った卵の臭いに
イスタンブル新運河はモントリオール条約をバイパスするためにアメリカが支持する政治的プロジェクトなのか?中国がヨーロッパと結ばれるためのプロジェクトなのか?はたまた50万の不動産から収益を上げるためのプロジェクトなのか?
AKPは政治的な意味をもたせて[計画への]支持を期待しているが、これらの問題すべてがイスタンブル新運河計画に疑義を投げかけている。これは研究者が明瞭に示している。
この計画の実現でイスタンブルには終末が訪れる。
――13400ヘクタールの森林が失われ、39万4千の木が伐採される。
――多くの種の動物が害を受ける。
――イスタンブルの3分の1を潤す水源が消える。
金角湾を浄化する研究を行うジェマル・サイダム教授が語ったように、イスタンブルは「腐った卵」の臭いがすることだろう。
数百万ドルを払ってその家に住む超大金持ちはこの臭いを嗅ぎたいと思うだろうか?
イスタンブルに住む私たちは絶対に嫌だ!
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( 翻訳者:麻生充仁 )
( 記事ID:50891 )