トルコ勤務はあこがれの的―日本の外交官語る

2010年07月31日付 Zaman 紙
トルコで約20年間勤務した日本人の元外交官・本山昭氏は、昔はトルコに配属する人を見つけるのに苦労をしていたが、今や常に発展し続けているトルコで勤務することを「皆が切望している」と言った。

本山昭氏は、アナトリア通信の記者のインタビューに答え、トルコは急速に発展しており、安定し、経済も上向きで、輝くスターの域に達したと述べた。

本山氏は、トルコで約20年間、一等書記官から参事官まで様々な肩書きで勤務をし、この他に日本外務省で長年に渡って、トルコ課課長をつとめ、職業人生の大部分をトルコ人と共に過ごしたという。

トルコの後配属された在アゼルバイジャン大使館での勤務をもって退職した本山氏は、現在は敬愛大学で国際関係部門の教員として働いており、「トルコは、私の36年間の外交官人生に、まさに衝撃を与えました。トルコに関して、今でも忘れられないたくさんの思い出があります」と語る。本山氏は、トルコにおける最も大きな財産は笑顔の人々であると言い、以下のように話した。

「初めてのトルコ勤務は1968年に始まりました。その頃、アンカラのほとんどの場所には信号さえありませんでした。1978年に妻とアンカラに行ったとき、泊まろうとしたホテルで結婚証明手帳を提示するように言われ、長い時間もめました。その後、トルコ政府が発給した、外交官であることを証明する書類を提示したことで、何とか野宿から逃れました。
トルコの人々の心はあまりに広くて、愛する人々に対しては、自分の最も大切な財産さえもあげてしまうのです。私はこれを体験しました。ピクニックをしていた時に知り合ったある家族が、私を家に招いてくれ、1週間泊まらせてもらいました。家の隣の小屋にロバが2頭いました。どこに行くのも、畑仕事も、そのロバを使っていました。私がその家を離れるとき、家の持ち主である夫婦はむせび泣き、私にそのロバのうち1頭をくれようとしました。これは一生忘れられない出来事です。」

本山昭氏は、トルコが常に発展していること、特にここ何年かで大きな評価を獲得したとのべ、「トルコを愛するひとりとして、このことをとても誇りに思います。日本では昔、誰もトルコで勤務などしたがらなかったものですが、今や皆切望しています。この状況は、トルコの評価を表しています」と述べた。

「しかし、ひとつ問題があります、というよりも、私はこのことを悲しく思っています」と話す本山氏は、「トルコは発展する中で、西洋ばかりに目がいっている」と言い、「トルコは極東をもおろそかにしてはなりません」と述べた。

■軍艦エルトゥールル号

本山昭氏は、トルコと日本の友好関係がずっと昔に由来することに触れ、この友好関係の2つのシンボルのうち、ひとつは日本に、もうひとつはメルシンにあるとし、以下のように話した。

「アブデュルハミド2世は、日本との外交関係を深めるために、軍艦エルトゥールル号を日本に送ったそうです。艦はイスタンブルへと戻る途中1890年に、台風の影響で和歌山県紀伊大島沖合の岩礁に衝突、沈没し、約550人のトルコ人船員が亡くなりました。昭和天皇の指示により、和歌山県串本町に慰霊碑が立てられました。その後、慰霊碑のある場所で様々な取り組みがなされ、1937年の修復の後、ここで毎年定期的に追悼式典が行われるようになりました。
この慰霊碑に関して、忘れられない思い出があります。海軍司令官としての任務の後、軍を退いたジェラル・エイジェオールが、在京トルコ大使館で大使として勤務することになりました。その頃、私は日本の外務省で、トルコ課の課長でした。エルトゥールル号の追悼式典に私も参列しました。
エルトゥールル号が沈没した海で、日本の海軍保有の軍艦の上で式典が行われ、式典が終わった後、皆艦の中に入りました。エイジオール大使はといえば式典の行われた場所で、銅像のように真っ直ぐ立ちすくんでいました。泣いていました。しばらくしてから、「『軍人は泣かない』といつもおっしゃっていましたよね」と私が声をかけると、「私は軍人ではなく、大使です」とお答えになりました。
エイジオール大使は、トルコからこんなにも遠い場所にトルコ人殉職者のために慰霊碑が立てられ、こんなにも思いのこもった式典が行われていることに感動した、とお話になられました。1941年に地中海で沈没したレファー号という船がありました。その事故で167人が亡くなりました。エイジオール大使は、メルシンにも串本町にあるような慰霊碑を立てるよう試みる、と言いました。この慰霊碑を立てるため、私たちは一緒に取り組みました。日本にある慰霊碑の兄妹が、メルシンに立てられたのです。この意味から、レファー号殉職者慰霊碑と日本にあるエルトゥールル号殉職者慰霊碑は、永遠にトルコと日本の友好関係のシンボルとして残るのです。」


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翻訳者:津久井優
記事ID:19826