「迷走」。ジュネーブ合意に対するホワイトハウスの姿を言い表すのに、これが最も適切な言葉だろう。合意の第一段階が履行される6ヵ月間、新たな制裁をイランに科さないことが、合意文書には謳われている。にもかかわらず、アメリカが対イラン制裁リストに、新たな人物・企業の名前を付け加えたことは、イランへの約束に対するアメリカの不誠実な姿勢をよく示している。
木曜日に米オバマ政権の財務省が発表した声明ほど、米政府の裏表のある振る舞いを示すものはないだろう。その中でアメリカは、イランの核計画ならびに石油輸出にかかわったとして、イラン内外の19の個人・企業に制裁を科した。
面白いのは、これらの企業への制裁が、米議会による新たな対イラン制裁可決を阻止すべく、激しいやりとりが〔ホワイトハウスと米議会の間で〕繰り広げられている中で決定されたことだ。これに対抗して、イランは5+1との実務者協議を中断、イラン外務省は今回のホワイトハウスの行動を強く批判した。
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イラン外務省法律・国際問題担当次官はイラン国営放送の14時のニュースで放送された電話インタビューの中で、イラン企業数社に対して制裁が科されたことに対し、「われわれはジュネーブ合意後の数日間、特にアメリカ政府内での一種の迷走状態ないし意志決定の不全に直面してきた。彼らは米議会内で新たな制裁が科されるのを阻止しようと試みた一方で、米財務省は新たな企業数社を制裁リストに加えたからだ」と述べた。
アラーグチー次官はその上で、「こうした不誠実な遊戯、ないし迷走は、協議の雰囲気を良くするものではまったくなく、ジュネーブ合意の精神にも反するものだ、というのがわれわれの見解だ」と指摘した。
同次官はさらに、「もちろん、アメリカは今回の措置について、過去の制裁を実施したものだ、これらの企業が制裁リストに追加されたのは、過去の制裁に違反したことが原因だと主張している。しかし、協力的な雰囲気の中で行動することが求められている現在の状況にあって、こうした措置を取ることは建設的なものでは決してない、というのがわれわれの見方である」と述べた。
同次官はその上で、「われわれはこれを強く批判し、非建設的で善意とは相容れぬ姿勢だと見なす。現在、われわれは〔対応を〕協議しているところであり、適切な対応を選択することになるだろう」と語った。
■ イラン外務報道官も米政府の迷走を強く批判
アラーグチー次官に加え、アフハム外務報道官も米財務省ならびに国務省による最近の制裁措置に対し、「米当局の姿勢、決断、及び発言には深刻な混乱が見られるのは、残念なことである。米政府は表向き、イランと5+1グループの合同作業を推進させるという基本方針のもと、イラン・イスラーム共和国に対して新たな制裁を可決しないよう米議会を説得する一方で、財務省及び国務省は〔‥‥〕イランの複数の団体、ならびに国外の企業数社を制裁リストに加えるという、疑問に満ちた非建設的な行動に出た」と反発した。
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Asahi 中東マガジンでも紹介されています。