オルハン・パムク新作『頭に浮かぶ奇妙なこと』、本日販売

2014年12月09日付 Milliyet 紙

2006年にノーベル文学賞を受賞した作家のオルハン・パムクの約6年ぶりの新刊『頭に浮かぶ奇妙なこと』が書店の棚に並ぶ。

 この新作は1970年代から2010年代までのトルコ社会の変遷を取り上げるが、個人的な話はユーモアにあふれ、その基本的な哲学は、倫理的な問題につながったものとなっている。

ヤプ・クレディ出版から発売されたオルハン・パムクの新作『頭に浮かぶ奇妙なこと』は、魅力的な恋愛小説であり、またトルコにおけるここ40年の概要をたどる小説でもある。パムク氏が長い時間をかけて生み出したこの新作は、1970年代から2010年代にかけてトルコで起こった転換について言及しているが、一方で個人的な話はユーモアにあふれ、その基本的な哲学は、倫理的な問題に結びつくものとなっている。

 「これは、ボザ(発酵飲料の一種)とヨーグルトをひさぐメヴルト・カラタシュの夢と人生の物語です…」 物語はこの一文から始まる。露店商人であるメヴルトの妻や友人の1969年から2012年の間におけるイスタンブルでの人生を物語る一方で、愛、結婚、幸福、お金、家族、アイデンティティーの問題に基づいて人間の魂の根底を探る。ボザ売りのメヴルトを取り囲む印象深い登場人物らによって奥深いものとなったこの小説は、イスタンブルですべてをゼロから新たに始める人々の日々を、年月を、人生を物語っている。例えば、自ら土地を囲み違法に家を建てる者、レストランのウェイター、電気代の集金人、日雇いで働く女性、大工、店番、皿洗い、ドネルケバブ屋など、さまざまな仕事を行って稼ぐ者や、露天商を続けて人生に行き詰まる者たちがこの物語に登場する。

 メジディエキョイの裏にあるゲジェコンドゥ(訳注:他人の私有地や公有地に許可を得ないまま建てられた不法建築のトルコにおける総称)からタルラバシュ地区まで、またガーズィー区からベイオール区にまで舞台を広げるこの小説は、イスタンブルのこれまで語られることも、目につくこともなかった物語を、また都市暮らしの驚くべき豊かさや深さを力強く描き出したものであり、読者はすぐにこの小説の虜になるであろう。

 『頭に浮かぶ奇妙なこと』は同時に、驚きに満ちた愛の物語でもある。読者はこの小説の主人公であるメヴルト・カラタシュのここ40年のイスタンブル暮らしやそのエピソードを辿ることで、都会にしがみつこうとしている人々の口から語られる感動的な物語、また希望や恐れの色に満ちた詩的な小説を読むことになる。とりわけ個人の人生と都市や社会の歴史の間とを驚異的な速さで行き来し、1960年代から2010年代にかけてのトルコ社会の変遷をたどるこの小説は、パムク氏の著書の中で一番読まれ、また一番愛される本の一冊となるはずだ。

■パムクの本は全世界で1,200万部の売上げ

オルハン・パムクの小説は62の言語に翻訳され、全世界で1,200万部の売上げを誇る。パムク氏は世界で文学・小説に対して贈られる重要な賞をすべて獲得し、彼の著作『私の名は紅』と『雪』は史上最も多くの言語に翻訳され、最も多くの人に読まれたトルコ語の本となった。

オルハン・パムクは、2005年にプロスペクト誌が選ぶ世界のトップ100人の知識人にランクインし、2006年にはタイム誌によって世界で最も影響力を持つ100人の一人に選ばれた。さらに2008年には愛、結婚、友情、幸福といったテーマを個人と社会の観点によって描き出した小説『無垢の博物館』を出版した。2012年にイスタンブルで開館した小説と同名の「無垢の博物館」は、今年2014年にヨーロッパの「最高の博物館賞」を受賞した。またパムク氏は自身の子供時代や青年時代を『イスタンブル—思い出とこの町』中で物語っている。


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翻訳者:松井友紀
記事ID:36145