2月6日にカフラマンマラシュで発生した震災で倒壊した数千もの建物の瓦礫の撤去作業が続けられている。瓦礫の撤去の際に発生する粉塵・アスベストのほか鉛も被災地の脅威となっていることが報告されている。オルハン・インジェ教授は、およそ1億〜1億5000万トンの廃棄物に対応せねばならないと述べた上で、驚きのデータを示してくれた。
2月6日にカフラマンマラシュで発生したマグニチュード7.7、7.6の地震では甚大な被害が発生した。合計717614軒の建物のうち90609軒が倒壊の危険が差し迫っている、重大な損壊を受けたと明らかになっている。被災地では瓦礫の撤去作業が続いており、現地の住民の間には瓦礫が散乱した場所に関していくつかの懸念がある。さて、問題となっている瓦礫撤去活動が行われている地域はどの程度リスクがあるのか?微生物生態学グループの責任者でありイスタンブル工科大学建築学部環境工学科教員であるオルハン・インジェ教授がMilliyet.com.trの取材に応じ、瓦礫に関する驚きの報告について情報やデータを共有してくれた。
■倒壊した建物を分析した結果
オルハン・インジェ教授は大地震で倒壊した建物に対してなされた調査で判明した注目すべき詳細について強調した。インジェ教授は、地震で倒壊した建物の建築年を分析したところ、その多くがアスベスト(一般的には「不毛の土壌」といわれる、腐食されず熱や化学物質に強いが発ガン性物質を含む材料)の使用が禁止された2010年以前に建てられたということがわかったと述べた。インジェ教授は、この状態により倒壊した建物のリスクが上がっているとしたうえで、瓦礫の危険性はアスベストだけではないと強調した。インジェ教授は、瓦礫には非常に多くの種類の廃棄物が混じっているとしたうえで次のように述べた。
「地震の被災地で発生した瓦礫の廃棄物を分析したところ、多くのコンクリート、煉瓦、漆喰、壁の材料、床や屋根の材料、壁の塗装材料、鉄筋、基礎材、煙突、窓、扉などのプラスチック・アルミニウム材、その他金属、絶縁体、木材、セラミック、家具、白物家電、衛生材料、タイルなどがあった」
■風で畑まで運ばれる
アスベストは人々の健康にどのような脅威をもたらすのか?インジェ教授は、2010年以前に建てられた建物の外壁に使用されたアスベストが、人体に対する発ガン性を持っており、また農業や動物の生態系という観点でも深刻な脅威をもたらすと強調する。インジェ教授は、空気または水を介して周辺環境に拡散するという特性について、水への影響について警告した。
「この種の瓦礫の廃棄物を被災地から撤去する際、とても薄い繊維状の構造を持つアスベストが気象条件によっては風に乗って微小な埃として畑に運ばれ、土壌をこのような形で汚染する要因となりうる。このため、被災地の動物の生態系にも悪影響が及ぶことが予想される。一方、空気や土壌に混じった発ガン性を持つ微小な埃は、降雨によって地下もしくは地表の水源に混入し、被災地の生態系における生命の健康に悪影響を及ぼし、将来の世代にもリスクを残す重大な危険をはらんでいる」
■粉塵とアスベストの後には鉛の脅威
地震で発生した瓦礫の撤去作業が続けられる中、様々な粉塵やアスベストなどとならび環境と人体の健康に脅威をもたらす最も重要な廃棄物は鉛だ。オルハン・インジェ教授は、鉛を含む建材の廃棄物と、これらが正しく処理されなかった場合に起こりうるリスクについて述べた。インジェ教授は鉛について「瓦礫の廃棄物には、特に農業生産とその生産性、人々の健康に悪影響を及ぼしうる鉛を含んだ壁面塗料もあるということから、この種の廃棄物が風や降雨によって土壌や水源に混入することは避けられない。被災地で地震の後に発生した瓦礫の廃棄物は、農産物、動物、人体の健康に短期・中期・長期的に悪影響を及ぼすと見られる」と述べた。
■「水に混入した場合感染拡大が始まる」
オルハン・インジェ教授は、およそ1400万人が直接的に被災した地震災害の水源への影響についても述べた。インジェ教授は、地域のインフラシステムが深刻な被害を受けたことを強調し、汚染された水が使用されることで発生しうる事態について次のように述べた。
「水の処理と排水の処理、定期的な廃棄物の処理を行う施設、排水・水運網、廃棄物の処理・回収サービスなど、全てのインフラに悪影響が及んでいる。発生した排水や廃棄物が地表や地下の水源に混入するという可能性が大きい。現状の環境インフラの復旧作業が完了するまで、被災地の人々が飲用などに使う水の需要をコントロールすることがとても重要だ。そうしなければ腸チフス、赤痢、肝炎などの病気の原因となるなどの感染拡大に陥る可能性がある」
■1億〜1億5000万トンの瓦礫はどのように撤去される?
オルハン・インジェ教授は、被災地では約1億〜1億5000万との瓦礫が発生しているとしたうえで「この量の瓦礫を一度に撤去することは不可能だと言える」とコメントした。インジェ教授は、この瓦礫についてはまず関連の法規制の枠内で事前に技術的な処置を行ったうえで一時保管場所に移す必要があるとしたうえで「瓦礫が撤去された後の復興は周辺環境を守った経済復興であることが必要だ。瓦礫ゼロ化のアプローチにおいては、必要な技術的処置を行ったうえで有効な形で実行されることが必要だ」と述べた。
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翻訳者:神谷亮平
記事ID:55368