高インフレでトルコ企業、エジプトに逃避
2023年11月20日付 Cumhuriyet 紙
トルコでの60%を超えるインフレに息絶え絶えのトルコ企業は、トルコで生産を行う代わりにエジプトを選択している。エジプトでのトルコ企業の投資は25億ドルを超える状態である。
約10年間の時を経て再接近しているトルコとエジプト両国は、商業的な協力を急増させている。最近では先週、公正発展党所属レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領は、サウジアラビアの首都リヤドで行われたイスラム協力機構とアラブ連盟の臨時共同首脳会議の際にエジプトのアブドゥルファッターフ・アッ・シーシー大統領と会談した。2人のリーダーがレンズに映した親密な様子は、トルコとエジプトの間に新たに開いた真っ新なページを物語っている。
■企業はエジプトを選んでいる
関係の正常化後、特にトルコで60%を超えるインフレに息絶え絶えのトルコ企業は、トルコでの生産の代わりにエジプトを選んでいる。多く分野のトルコ著名企業は生産拠点をエジプトに移す中、エジプトでのトルコ企業の投資の規模は25億ドルを超えた。
実業界の著名人たちは、トルコでの困難な生産条件に対してエジプトが生産と輸出に際し大きな機会を提供していると述べた。
■経済関係は鈍化せず続いた
トルコ企業のエジプトへの直接投資は、両国間で自由貿易協定が施行された2007年に始まった。トルコ企業は、エジプトの整備された産業区域で生産を始め、アメリカ・イスラエル・エジプトの間の「自由貿易」協定を利用し始めた。特に、繊維業・既製服部門でたくさんの大企業がエジプトに工場を建設した。2010-2011年にエジプトで発生した政治的運動にもかかわらず、エジプトでのトルコ企業の投資は増加し続けた。
2013年の軍事クーデターによってムスリム同胞団政権とムハンマド・ムルシ大統領が転覆させられた後、トルコはエジプトと外交関係を断絶し、クーデターのリーダーであるアブドゥルファッターフ・アッ・シーシー軍最高評議会議長に対して明確な態度を表明した。エルドアン大統領は、何度も「シーシーとは決して会わない。」と言って追放されたムルシ前大統領とその支持者を擁護する会見を行い、外交的な関係も大使代行を置く状態まで後退した。
その間経過した約10年で経済的な関係も鈍化はしたが続いていた。トルコとエジプト両国間での貿易は、2013年末には50億ドルだったが、この数字は2022年末で70億ドルにまで達した。
ここ1年間では両国間での関係も雪解けを迎えた。エルドアン大統領は、エジプトのシーシー大統領と2022年11月にカタールで行われた2022年FIFAワールドカップのオープニングセレモニーで初めて顔を合わせた。この会談の後、トルコ・エジプト関係は急速に以前の状態に戻った。国内で高インフレに苦しむトルコ企業も再びエジプトに目を向け始めた。
■インフレは企業をエジプトに向かわせた
海外経済関係委員会の中のトルコ・エジプト実業評議会のムスタファ・デニズエル会長は、ドイチェ・ヴェレ・トルコのアラマ・エキン・ドゥランに対して行った発言の中で、2023年4月エジプトがトルコ国民に向けたビザの適用を廃止したと述べた。
こうした事態の展開にとともにエジプトが再びトルコ実業界の話題となったと述べたデニズエル会長は、「トルコでの生産コストがインフレのためにとても増加したことで、トルコ企業をエジプトでの生産に向かわせた。対外貿易でライバル国と国際市場で競うため、多くの業界のトルコ企業がエジプトでの生産を選択している。」と話した。
デニズエル会長が提供した情報によると、エジプトでのトルコ企業の投資額は合計で25億ドル規模に達した状態である。2023年時点で、約35のトルコ企業がエジプトで年間15億ドルの売り上げを上げている。本年末までにエジプトでのトルコ企業の直接投資は5億ドルさらに増加するだろうと見込まれている。
■続々と工場投資
デニズエル会長は、エジプトが対外貿易で大きなメリットを持っていると強調し、「エジプトはアメリカ、EU、南アフリカ、アフリカ諸国と自由貿易協定を結んでいる。トルコ企業にとってエジプトで生産し、トルコに比べるとさらに少ない費用で生産を行なって上記市場に達することができる」と言う。
トルコでは凡そ500ドルかかる労働者の人件費は、エジプトでは150ドル周辺である。加えて電気代、天然ガス代もトルコに比べるととても安い。こうした有利な条件は、エジプトへの関心を徐々に増している。目下、トルコ企業のアルチェリックからシシェジャム、テムサからユルドゥズ・ホールディングまで多くの業界のトルコ大企業は、エジプトで生産を行なっている。
例えばエジプトを生産・輸出拠点としたテムサは1000台の生産規模をもつ工場でバス・ミニバスを生産し輸出している。ユルドゥズ・ホールディングは、中東・北アフリカ地域の上位二番目に位置するビスケット市場であるエジプトでプラディスの企業名でビスケット工場を持っている。アレクサンドリア、エジプト、イスマーイーリーヤといったエジプトの三つの都市に工場をもつイェシム・テクスティルは、世界の著名なスポーツウェア・メーカーに向け生産を行なっている。
トルコ最大のホールディングであるコチ・ホールディングに属するアルチェリクは、エジプトで1億ドルを投資して設けた新工場を今年末に向け稼働するよう準備している。イスケフェ・ホールディング、LCワイキキ、エロール・グループ、イェシム・テクスティル、シャヒン・ホールディング、ハヤット・ホールディングといったトルコ企業も近日中にエジプトで新たな投資を目論んでいる。
トルコ企業はエジプトで直接には7万人を雇用する中、繊維業・既製服部門は[雇用面で]大きな位置を占めている。現在のところ、エジプトの繊維・既製服輸出の三分の一をトルコ企業が占めている。
■トルコ企業を入り口で出迎え
デニズエル会長は、両国間の外国関係が再構築された後にエジプト政府がトルコ企業に大変熱心に歩み寄ってきたと訴え、「関係省庁、投資と関わる機関は、トルコ企業を入り口で向かいいれた。できる限りの支援を与えており、情報提供を行なっている」と語った。
同会長はまた、エジプトでトルコ企業が抱える唯一の問題がエジプトが外貨不足のため支払いが遅延することであるとして、次のように語った。
「エジプト国内市場に直接商品を販売するトルコ企業は代金の徴収に手こずっている。私たちはこの点でエジプト政府にトルコ企業向けの優遇措置の実施を求めている。外貨上の問題を解決するため、両国間の取引を自国通貨で行うことも議題となっている。この問題で両国の中央銀行は話し合いを行なっている。」
■エジプト企業との協働を増すだろう
10月に両国間の通商関係を強化するため、オメル・ボラト通商大臣は、エジプトに公式訪問を行った。この際に同大臣に同行したブルサ商工会議所のイブラヒム・ブルカイ会頭は、ドイチェ・ヴェレ・トルコに「エジプトとの取引を5年以内に150億ドルに引き上げようと目指している」と述べた。
同会頭は、新時代にトルコの自動車と繊維の中心地であるブルサとエジプトとの取引の関係を発展させることに注力しているとして、次のように語った。
「エジプト企業と他の国々でも協働の機会を持っていると考えている。エジプトで室内繊維製品業界に向けたフェアを実施するため準備を始めるだろう。国際フェア代理店の10年間の蓄積・経験をエジプトで活かすだろう。エジプトで初めてとなるこうしたフェアとともに布地のフェアも開催する予定である。エジプトとの協働をあらゆる分野で発展させるため、作業を進めていくことだろう。」
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翻訳者:新井慧
記事ID:56752