アルメニア・アゼルバイジャンの和平の鍵は「地域連携」
2024年01月03日付 Cumhuriyet 紙
アルメニアとアゼルバイジャンの長期にわたる紛争の解決には「不安定化させる」域外の関係国ではなく、安定化をこれまで以上に必要と感じている地域の国家間での協力的、建設的な外交的交渉が必要である。
アゼルバイジャンとアルメニアの「恒久平和条約」の締結に関する交渉が続けられている一方で、第三国の危機に関する姿勢も注視され続けている。
最近では、ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は12月27日(?注)深夜に行った会見の中で、「ロシアは、アゼルバイジャンとアルメニアが和平協定締結作業を完了するのを支援する用意がある」と述べた。ペスコフ報道官の発言は、重要なイベントの前夜に行われた。アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領とアルメニアのニコル・パシニャン首相は12月26日、独立国家共同体(CIS)の非公式首脳会議の傍ら、サンクトペテルブルクで会談した。
ペスコフ報道官はロシアのイズベスチヤ紙に寄せた声明で「実際、双方は和平合意をまとめる用意があるとここ最近繰り返し表明している。ロシアは両者を支援する用意がある。」と述べた。
ロシアは仲介役の受け入れを誰かに強制しているわけではないとしたペスコフ報道官は、さらに「独立国家共同体の枠内だけでなく、ハイレベルな二国間関係の枠内でも、我々のパートナーであり同盟国である両国ができるだけ早くこの協定に調印することは、我々にとって非常に重要だ。」と述べた。
ペスコフ報道官は、和平協定の調印は、ロシアにとって非常に重要なコーカサスに平和、安定、予測可能性の状況を作り出すものであると付け加えた。
ロシアの政治関係者たちの発言から、ウクライナ情勢も考慮すると地域で起こる第二の問題に対処したくないことが見受けられる。これは武器売買にも反映されている。
■ロシアからの武器供給
アルメニアとロシア(?)はロシア軍事産業複合体の伝統的な顧客だが、両国ともロシアからの武器供給に問題を抱えていることで知られている。
ロシア国営のタス通信は11月24日、アルメニアのニコル・パシニャン首相の発言を引用した報道において、「アルメニア政府は代金を支払った武器をまだ受け取っておらず、解決策を見つけるための話し合いを続けている」と報じた。タス通信の報道によればパシニャン首相は「支払いの見返りに武器や装備を受け取っていないという点で、もちろん問題がある。」と述べた。
自国の軍隊にロシア製兵器を装備し、現在はより多くの武器を必要としているアゼルバイジャンは、長期間に渡りイスラエルの防衛産業の主要顧客のひとつである。2012年、両国は16億ドル相当の武器購入協定に調印した。専門家は、2016年から2020年の間に、イスラエルはアゼルバイジャンの弾薬の約70%を供給したと推定している。
■アゼルバイジャンとフランスの緊張関係
一方、12月26日、アゼルバイジャンとフランスの間で激しい外交危機が発生した。アゼルバイジャンはアンヌ・ブイヨン在アゼルバイジャン・フランス大使を外務省に呼び出し、仏大使館員の2名を好ましからざる人物とし、48時間以内の国外退去を伝えた。
この問題に関しアゼルバイジャン外務省の声明では、以下のように述べられている。
「在アゼルバイジャン・フランス大使のアンヌ・ブイヨン氏を2023年12月26日に外務省に呼び出した。フランス大使館2名の職員の外交官の地位にそぐわない、1961年の外交関係に関するウィーン条約に反する行為を強く抗議し、彼らがアゼルバイジャン政府にとって「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)と判明したとフランス大使に伝えた。この人物たちが48時間以内にアゼルバイジャンの領土から退去するよう要求し、関連書類をフランス側に提出した。」
この二つの出来事はロシアとフランス両国のアゼルバイジャンとアルメニア間の危機に対する姿勢について重要な手がかりを内包している。しかし、この問題を取り上げる前に、アゼルバイジャンとフランスの関係、そして南コーカサスの危機に対するフランスの姿勢に焦点を当てる必要がある。
(中略)
■解決への鍵
トルコのアゼルバイジャンに対する公然たる支援は、西側諸国とほぼ戦争状態にあり、戦略的支援を必要としているロシアのこの地域における役割と姿勢を形成する上で重要な役割を果たしている。
一方、この地域におけるフランスの役割は、トルコ、ロシア、アゼルバイジャンの弱体化を狙った戦略を追求することで特徴づけられる。フランスはEU内でアルメニアを武装させるキャンペーンの先頭に立ち、地域の安定を危うくし、危機を深めている。この状況は深刻な政治的・経済的問題に直面しているアルメニアの安定をも脅かす。
アルメニアとアゼルバイジャンの紛争の解決では「カラバフにおけるアルメニア人の状況」が最も重要な問題として残り続けている。アルメニアのパシニャン首相は、この地域のアルメニア系住民に権利と保証を与えることを条件に、アゼルバイジャンの主権を承認する用意があると表明した。
一方アゼルバイジャンは、アルメニアがカラバフに対する主権を無条件で承認し、この問題をアゼルバイジャンの内政問題として扱うよう望んでいる。ロシアは今のところ、この問題に関しては静観の姿勢を示しているが、この地域での影響力を維持するには、両者を和解させる必要がある。
最終的には、アルメニアとアゼルバイジャンの長期間の紛争を解決するには、フランスやアメリカのような「不安定化させる」地域外関係国ではなく、これまで以上に地域の安定を必要としているトルコ、ロシア、イラン、ジョージア、そして最終的には紛争の主体であるアゼルバイジャンとアルメニアの協力に基づく建設的な外交交渉が必要である。
(?注)タス通信の報道では、12月26日となっている。トルコのアナトリア通信の報道でも「火曜日(26日)」となっている。
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翻訳者:伊藤颯汰
記事ID:57073