96名死亡の崩壊アパート職員「エレベーターの床からいつも水が染み出ていた、理由がやっとわかった」

2024年02月10日付 Hurriyet 紙

カフラマンマラシュの地震で96名が死亡したアパート、エブラル・サイトFブロック棟について1名が拘束され、9人が過失致死傷罪の疑いで懲役22年6か月を求刑された事件の初公判が開かれた。アパートの職員、ハリル・イブラヒム・ハスィルジュさんは「アパートのエレベーターの床から水が染み出ていた。私たちはその水をモーターで外に排水して、いつもこれをやっていた。水がなぜ出るのか今わかった。地盤が水気を含んでいて、土台が湿って軟弱だったのだと今理解した。」と述べた。

2023年2月6日に発生した地震でエブラル・サイトでは約1400人の命が失われた。崩壊して96名が死亡したFブロック棟について行われた取り調べの結果、アパートの設立者のテヴフィク・テペバシュ氏(81)、Fブロック棟を建設したチェティン住宅建設協同組合のチェティン・クルトゥ社長(64)、テヴフィク・テペバシュ氏の義理の息子のアフメト・ドアン氏(51)、アッティラ・オズ氏(62)、メフメト・アキフ・オズギュレル氏(73)、メティン・カザンジュ氏(60)、ムスタファ・ティムルバンガ氏(55)、タメル・クルタラン氏(60)について過失致死傷罪の疑いで懲役22年6か月が求刑されるかたちで裁判がカフラマンマラシュ第五重罪裁判所で開廷した。裁判の初公判には未拘留の被告であるメティン・カザンジュ被告、建物から生きて脱出した生還者、故人の親族、当事者両者の弁護士たちが参加した。拘留された被告であるチェティン・クルトゥ被告と他の事件で拘留されたテヴフィク・テペバシュ被告、アフメト・ドアン被告、アッティラ・オズ被告は拘留先の留置所からSEGBİSシステム(訳注:拘留者が別室から公判に参加する、音声ビデオ情報システム)で公判に参加した一方で、その他の未拘留の被告5名は公判に出席しなかった。

■「私は建設と関係がない、手伝うためにサインした」

公判でまずチェティン・クルトゥ被告の弁護が行われた。クルトゥ被告は容疑を否認しており、自分はテヴフィク・テペバシュ氏の会計士であり、協同組合をミラチ・アパートを建設するために設立したと述べ、「私たちは借金のために建設を進められない状態になっていた。テヴフィク先生は好ましく、誠実な人物だ。私のところへ来て、『私に協同組合を作ってくれ』とおっしゃった。私も『先生、私たちの協同組合はもうすぐ完成します』と言った。メティン・カザンジュさんが運営を引き継いだ理由はミラチ・アパートの土地が彼らの所有だったからで、つまり友人たちにはまったく関係がなく、タメル・クルタランさんもそうだ。つまりエブラル・サイトや建設工事について私たちには一切関係がない。(彼が)土地や金を誰から得たのか、私は知らない。(彼が)土地を買ったので、我々は義務としてサインし、メティンさんもサインした。(彼が)経営役会にいるため、手伝うためだった。この建設をどの設計者が行ったか、土木技師が誰なのか私は知らない。地震の瞬間にこれを知ったのだ。徹頭徹尾私には関係ない、私はただ会計をしていただけだ。協同組合の経営役会にいたことは私の罪だ。このために受ける刑罰が終身刑であるなら、私はそれを受け入れる。私は建設には何の関係もない。私は協同組合を完成させたし、環境管理もあり、借金がある会員もいる。完成後、あなたはあなたの名においてここを購入できると言ったら、(彼は)購入したと思う。(彼が)誰から買った土地だかは知らない。それでGブロック棟も購入したらしく、Gブロック棟についてもサインした。これは私の罪だ。言いたいのは、そこから誰か出て来ますように、私の知り合いや私に会費や料金を支払っていた人が出て来ますように、ということだ。終身刑を受けるのであれば私は刑罰を受け入れよう。」と述べた。

チェティン・クルトゥ被告は「あなたは建設工事について自分は全く関与していないと述べたが、なぜ建設工事に関するすべての契約書にサインしたのか?」との質問に対し、「私はテヴフィクさんのためなら命をささげる。手助けしたかった、それが全てだ。私は家計を支えなければならない。行ったすべての罪を償うことを受け入れよう。」と回答した。

■「チェティン・クルトゥさんはサインしたことに責任がある」

テヴフィク・テペバシュ被告は建物がチェティン住宅建設協同組合によって建設され、自身は協同組合のメンバーではないこと、だから自身には全く責任がないこと、協同組合の役割は建物を建設するチームを見つけ、資材提供することでそれ以外には何の責任もないと述べた。テペバシュ被告は建物の基礎が完成するまで当局のチームから15回の監査を受けたと主張し、次のように自己弁護した。
「建設工事段階や監査において私には一切責任がない。だから私や経営役会に罪を擦り付けることは不可能だ。なぜなら法律上にこのような義務はなく、法律にない義務のために人を罰することは到底できないからだ。チェティン・クルトゥさんにはこの地域に断層があり崩れている、地下から水がでると伝えられているし、なぜ予想しなかったのか、なぜ対策をとらなかったのかと彼は問われている。運営者はこの問題について何の関係もない。当局の公共事業委員会が調査を行っていたし、DSİ(政府水力工事総局)も調査しただろう。開発調査したのだ、この場所が適切かどうかを。適切だと判断された後、条件を定めるために市議会でこの話題が議論されただろう。そして最終的にこの社長がサインし、公共事業が開始された。チェティン・クルトゥさんは技術担当ではなく、建設をわかっていない。法律上に君がここを調査するという義務もないのだ。私はそこの協同組合のメンバーではないし、協同組合の運営者でもない。だから私に罪を擦り付けることはできない。私にはそこでの公式の職務はなく、どこにも私の署名はない、チェティンさんは『自分は心情のためにやった』と言うが、運営しているのなら、運営やサインしたことについて責任がある。」

■「自分が経営役会のメンバーであることを地震後に知らされた」

メティン・カザンジュ被告も容疑を否認しつつ、議題である建物の建設について全く知らないと述べた。カザンジュ被告はミラチ・アパートを7戸と交換するかたちでチェティン・クルトゥ被告に渡し、建物がよりよく建設されるために協同組合のメンバーになったと話し、「私は靴屋で、建設工事のことは全くわからない。建設のけの字も知らない。自分の土地を渡し、代わりにチェティン氏から7戸を受領した。私はエブラル・サイトやFブロック棟とこれっぽっちも関係がない。地震後に私が経営役会のメンバーであることを知らされた。そこで全てを担っていたのはチェティン氏だった。私たちに建物が引き渡された後、彼が何をやったか私は全く知らない。私は事件にはこれっぽっちも関係ない。私は自分がミラチのメンバーであることだけしか知らない。」と話した。
アフメト・ドアン被告とアッティラ・オズ被告もFブロック棟に全く関係がないと主張し、容疑を否認した。

■「コンクリートを手で粉状に崩すことができた」

その後、公判に参加した故人の親族たちに発言の権利が与えられ、苦情を入れたかどうか質問された。建物で2人の子どもを亡くしたヒルミ・チフトチュさんは責任者に苦情をいれたと述べ、「地震の4か月前に引っ越してきた。1999年の地震の後に建設され、安全であると彼らは言っていたが、コンクリートを手で粉状に崩すことができた。大量の鉄が使われているとわかっているが、コンクリートの特徴はなかった。私は地震の瞬間を立ったまま経験し、建物は8~10秒耐えた。」と述べた。

■「エレベーターの床から水が染み出ていた」

妻と娘を亡くした建物の職員、ハリル・イブラヒム・ハスィルジュさんも建物は5~6秒のうちに崩壊したと主張し、「到底耐久性がないことはそこから明らかだった。アパートのエレベーターの床から水が染み出ていた。私たちはその水をモーターで外に排水して、いつもこれをやっていた。水がなぜ出るのか今わかった。地盤が水気を含んでいて、土台が湿って軟弱だったのだと今理解した。誰が建設したのか私は知らないが、テヴフィク・テペバシュ氏が建設したと彼らは言っていた。私たちは7日間葬儀を待った。ショベルカーが鉄材を取り除く中でコンクリートが流れ出てきていた。」と述べた。

■「上部を鉄で崩した」

ムハンマド・チェティンカヤさんは家族とともに瓦礫の下に埋まり、娘を亡くしたと述べた。チェティンカヤさんは6~7秒のうちに建物が崩壊したと述べ、「建物が最悪なまでに崩壊し、コンクリートが小麦粉のように細かくなっていたのを見た。私は瓦礫から脱出した後、たとえ死んでいたとしても子どもたちを救い出すためにバルコニーから外した鉄材で建物の上部を壊した。社長、どれだけ強固かあなたが計算してくれ。エレベーターの床から水が出ていたのは何度も見た。運営者は亡くなったが、私を車で建物の庭に入れてくれなかった。『何ですか、どうかしたんですか?』と私が聞いたら『下の沼地に沈む、車だと沈むよ』と言った。この場所はテヴフィク・テペバシュ氏が建設したと聞いている。」と話した。

■「塩のように散った」

建物で父親と甥を亡くしたオメル・ドゥルナさんはコンクリートが非常に粗悪であったと述べ、「私は4時半にFブロック棟で生存者と死者を少なくとも10人救出した。コンクリートのかけらを互いにぶつけたら塩のように散った。エブラル・サイトではテヴフィク・テペバシュ氏以外、誰の名前を聞いたことがなかったし、そこを建設したのはテヴフィク・テペバシュ氏だ。」と述べた。
裁判所は未拘留の被告のうちメフメト・アキフ・オズギュレル被告とムスタファ・ティムルバンガ被告については逮捕状を出し公判を延期した。


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翻訳者:伊藤梓子
記事ID:57315