世俗教育を抹消してしまう新指導要領案の承認について「この決定は将来の世代に取り返しのつかない損害を与える。すぐに撤回すべきだ」とコメントが出てきた。

国民教育省（MEB）が発表した「新指導要領案の草案に」教育・規律委員会から承認がおりた。二週間告知を行い、6万7284件の意見や提案があったカリキュラムは国民教育省に提出される。新指導要領案では新たな学生の定義を「有能で高潔な人」とした。さらにこの定義の枠組みの中で、学生が身体と精神から成っているとし「健康的な体、道徳的で成熟した心、また結果に従い振る舞うことができるバランスの取れた知性、これらを持つことが必要」と説明した。これに加え、学生らが「毅然としていて、忍耐強いこと」また「信仰に沿う形で考え、決断を下すことを学ぶこと」が必要だとした。

◾️「告知期間はパフォーマンスだった」

教育・労働組合のカデム・オズバイ組合長は、本紙に、新指導要領案の承認に対する批判姿勢を明らかにした。オズバイ組合長は、「教育システムの根幹をなすカリキュラムを、透明性と参加原則から程遠い強制的な姿勢で変えようとする一歩だ」と話した。オズバイ組合長はさらに「新指導要領案の教育研修は、教育規律委員会の決定を待たずして始められた。つまり、教科書ももっと前から準備されていた。世間は告知のパフォーマンスに気を取られた。教育に関わる人々、専門家、保護者、生徒の意見を十分に考慮せず進められ、世間の議論を経ていない、この新指導要領案の正当性はない。これは民主主義的価値観、参加性に反している。教育システムは、決定者のイデオロギーを押し付けるものとなってはならない。」と述べた。

◾️「質が損なわれる」

新指導要領案の適用にあたり、教育システムの質が損なわれることになると説明するオズバイ組合長は、学生も国際基準を十分満たす状態にならなくなるのが明らかであると話した。

同組合長は、この決定が教育システムに、また将来の世代に取り返しのつかない損害を与えることになると強調し、「教育は国の未来である、これほど重要な事柄について無理を強い、透明性から遠い姿勢は受け入れられない」と話した。ケマル・イルマク教育組合委員長は、参加したテレビ番組で新指導要領案の承認について反発した。イルマク委員長は「この指導要領はすぐに撤回すべきだ」と述べた。

◾️大臣は批判に耳を傾けず

国民教育相ユスフ・テキン大臣は、新指導要領案に関する質問をする記者のマイクを切った。テキン教育相はその後の説明で、「我々は何を言われようと、批判にあまり重視せずに、道を歩み続ける必要がある」と話した。

◾️次の年度に適用される予定

新しい教育モデルで４年生と８年生のために作成された「宗教文化と道徳」の授業テキストでは「人間の意味を探す過程で最も大きな助けとなるのは伝統的な宗教組織である」とされている。

◾️「創造論がない」

新たなモデルで生物の授業に関する草案では、[以前に提示されていた]創造論が明記されていない一方で、教師には宗教文化と道徳の授業が、科学の授業と関係付けることが求められた。この目的で、5年生の学生に説明される「神の信仰」に関する単元で、宇宙の形成は「テヴヒット」（神の一体性）の理解を通じて説明されることが求められた。宗教の授業の枠組みが増える一方で、外国語の授業の指導要領案が公表されなかったことも反発を招いた。新指導要領ではさらに、積分が中等教育の数学の授業から消され、論理と集合はより簡素化された。国民教育省は、新しく発表された中等教育の数学の授業の中に積分は「扱いが集中的・限定的に行われている」として削除されたと説明した。

◾️段階的に実施

新指導要領案は、来年度以降、就学前教育、小学1年生、中学校5年生、高校9年生(注)から始める形で段階的に実施されることになる。新教育プログラムには、当局の承認後、国民教育省のウェブサイトからアクセスできるようになる。

◾️「革命史の中で世俗主義は衰退した」

革命史とケマリズムの授業でも世俗主義の要素は弱まった。９、10、11年生の歴史の授業でもトルコ・イスラムに重点が置かれることになった。2023年の指導要領案にはないものの、授業の目的は「トルコ・イスラム文明の基本的な基準である国民的・精神的諸価値を実践的に授けることを基本とした」と説明している。授業の中ではトルコ・イスラム文明にとって「アナトリアのトルコ化とイスラム化の重要性」を学生に理解させることが目的とされている。

(注)トルコの学制は4＋4＋4制であるので、「中学校5年生」は日本でいうところの「中学一年生」に当たり、「高校9年生」は「高校一年生」に当たる。