トルコの元シリア大使「シリアの状況は混とん」
2024年12月04日付 Cumhuriyet 紙
テロ組織のクルド人民防衛隊(YPG)は、シリアの都市、デリゾールに付属する村々でシリア軍及びイランが支援するグループと交戦した。トルコの前在シリア大使のオメル・オンホン氏は、シリアではある戦線では協力するアクターたちが他の戦線では互いに交戦し合うと述べながら、この地域での共闘は複雑であると強調した。オンホン氏によると、近いうちに開催されると発表されているアスタナ・プロセスでは当事者が合意すれば、アサド政権と反体制派が交渉のテーブルに着くのが最善のシナリオである。しかし、反体制派の誰が出席するのかについては、タハリール・アル=シャーム機構(旧ヌスラ戦線、HTS)とクルド人民防衛隊(YPG)が有力と見られている。
シリアにおいてバッシャール・アサド大統領政権に反対するジハード主義のタハリール・アル=シャーム機構率いるグループとシリア政権に属する軍隊との間の衝突が続いている。デリゾール県での戦闘が深刻化した。アナトリア通信の報道によると、テロ組織であるクルディスタン労働者党(PKK)とクルド人民防衛隊(YPG)は、デリゾール県のユーフラテス河の東に位置する7つの村からアサド政権軍とイランの支援を受けるグループを駆逐するために攻撃を開始した。
デリゾール市中心を手始めに、シリア・イラン国境に近い地方でイランから支援を受けるグループが存在することは知られている。タハリール・アル=シャーム機構と他の反体制派が支配している県ではロシアの攻撃が激化した。加えてシリア報道通信社の報道によると、イスラエルがダマスカス国際空港付近で空爆を実行した。この攻撃では車両を目的とし、1名が死亡した。
◾️「可能性はゼロではない」
トルコの前在シリア大使のオメル・オンホン氏は、シリアで8年の年月の後、再び激化する戦闘に関連し本紙の取材を受けた。反体制派が数日前に開始した攻撃で「特筆の」前進を遂げ、アレッポを始めとする多くの地域を政府から奪取したことは重要な展開であると述べたオンホン氏は、「アサド大統領は、前進する反体制派と交戦するつもりであり、イランとロシアもアサド政権に支援していると明らかにした。現場の状況は変わるのか?アサド政権軍はイラン・ロシアの支援とテロ組織のクルド人民防衛隊の協力によって反体制派を再び駆逐することができるのか?この複雑な環境であらゆる可能性がゼロであるとは言えないが、現段階ではこれは非常に低い確率であると思う。 万が一そうなれば、トルコにも影響が及ぶだろう。トルコは新たな移民の流れにさらされることになるだろう。」と述べた。
◾️「ハマーを奪取することは可能」
オンホン氏は、シリア政府が衝突の初期に比べ抗っており、ロシアの戦闘機も政権により多くの支援し始めたと説明し、反体制派の攻撃が効果的な形で継続しているが、初期の段階に比べペースダウンしたと述べた。
オンホン氏は次のように述べた。
「現段階で両勢力がハマー市の近郊、郊外・村落部で交戦している。基本的にタハリール・アル=シャーム機構(HTS)により構成される反体制派はより強力であると見える。ハマー市を奪うことは可能である。ユーフラテス河の南東に位置するデリゾールでも何かが起こっているが、明らかではない。アメリカ軍の戦闘機がイラクのシーア派民兵の隊列を攻撃し、クルド人民防衛隊と、アサド政権軍及びこれを援助するイラン・シーア派の人たちとの間で戦闘が行われていると言われている。このことは、状況がいかに複雑で、ある戦線で協力し合うアクターが、別の戦線では互いに衝突する可能性があることを示している。」
◾️アンカラ・トルコ政府に向け「イスラエル・アメリカ」暗示
オンホン氏は、昨日、トルコのハカン・フィダン外務大臣とイランのアッバス・アラクチ外務大臣がアンカラでシリア状況を話し合うために対面したことに触れ、記者会見では両外相は互いに異なる態度を示したと明らかにした。
オンホン氏は、「ハカン・フィダン外相は例えば、アサド大統領に『自分の行いはその報いを受ける。我々の警告に耳を貸さなかった。もう、交渉のテーブルに来い。問題を解決させよう』との意味の警告を行った。アラクチ外相は『最新の状況をアメリカとイスラエルが動かしているタクフィール主義者の攻撃と認識している』」と述べた。また同氏は、アラクチ外相も実際には間接的にトルコに「イスラエルとアメリカと共に行動するな、彼らの目的に沿うな」と暗示したのだと述べた。
オンホン氏は「アラクチ外相がシリア・アサド政権からメッセージを届けたと推測している。ただこの私の推測を確かめる具体的な証拠の情報は開示されなかった。いずれにせよ、アスタナ・プロセスの3つのパートナー国[ロシア・トルコ・イラン]が近日中に外相レベルの会談を行うことを明らかにしたことは利点である。」と述べた。
さらに、同会談の日時や場所が明らかになっていないことに対して、国外メディアでは当該会談が12月7日と8日にてカタールの首都、ドーハで行われる可能性があり、会合にカタールも参加し得ると報道された。オンホン氏はアスタナ・プロセスの継続に関連し、「この国々が合意に達するのならば、最善のシナリオは停戦が宣言され、関連する様々なアクターがその時点で留まることである。まずはアスタナ・プロセスのパートナーが会合をすること、しばらく後にアサド政権と反体制派も参加できる形での会議を行うことである。この最終段階に到達することができるのならば、交渉のテーブルに反体制派側のどの組織が着くのかという問題が発生する。タハリール・アル=シャーム機構とクルド人民防衛隊がこれについて名前が出てくるだろう。」と評価した。
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翻訳者:伊藤颯汰
記事ID:59172