ガザ:「人道財団」のプロパガンダ的発表がガザの苦しみを増大させる
2025年08月18日付 al-Quds al-Arabi 紙

■「ガザ人道財団」の嘘…ガザの人々「私たちは飢餓と欺瞞に直面している!」
【ガザ:本紙】
2025年8月初旬、米国スティーブ・ウィトコフ(中東担当)特使はラファフの米国支援センターから姿を現し、「ガザ人道財団」(GHF)が5月9日から8月初旬まで、ガザの人々に1億食の食料パックを配給した旨を声高に発表した。この発表は記者会見での単なる数字しては捉えられず、まもなく戦争と飢餓にくたびれたガザ住民の胸にとっての新たな衝撃と化した。彼らにとっては、まるで世界が食料の代わりに幻想を売ってきたように思えたのである。
怒りと皮肉
ガザ住民は継続的な飢餓のなかで、希望の光をもたらすニュースを待っていた。しかし同財団の発表は現地で体感される現実とは全く異なったものであった。米国組織の公式声明が5月9日から8月17日までに、1億2,500万食以上をガザの人々に配給したことについて述べた一方で、数千の避難民が過去3か月間、ゴミ捨て場で腐った小麦粉を探している。また母親たちは空腹の子供たちに大量の水を与えて、彼らが泣くのをなだめながら夜を過ごしている。
衝撃は否定の域にとどまらず、すぐに激しい怒りに変わった。現実はますます悪化しているにもかかわらず、仮にも人道団体を主張する組織がこのような空想の数字を発することがどうしてできるのだろうか?パレスチナ人は苦々しく問いかける。「この数字に基づいてガザ住民一人一人が3か月弱で50食を得たのだとしたら、私たちや隣人、家族の取り分はどこへ行ってしまったのか?」
数字と現実の間に痛ましい乖離があるなかで、本紙が確認できたかぎりでは、「1億食」に関する話は、人々の間でブラックジョークのネタと化している。それどころか「これらの食料は透明帽子をかぶせて配られたか、飢えた人々の口に届く前に蒸発してしまったのだ」という嘲りすら生まれている。しかしこの苦い笑いの背後には深い傷が、そしてガザの飢餓が単に封鎖だけでなく、欺瞞的なプロパガンダにも直面しているとの感覚の高まりが存在しているのだ。
誤ったデータ
ザイトゥーン地区からの避難民であるムハンマド・ハマーダさんは、ハーン・ユーニスのマワースィー地区にある自身のテントに座り、苦々しげに語る。「これらのデータは完全に誤っています。欺瞞的なプロパガンダです。私や私が知っている数千の人々のもと何の食料も届いていません。そうでなければ、これらの食料は透明帽子をかぶせて届けられたか、センターが横領や盗みをしているかということです」。
そして彼は本紙に対し、怒りで声を震わせながら次のように語った。「私はセンターに、国民の飢えを隠すような欺瞞的な嘘を拡散するのをやめるよう求めます。支援は誰のもとにも届いていません。センターが広めるイメージは現実を表しておらず、世界を欺くための仕組まれた芝居です」。
子供たちと同様に、数日間にわたって煮たレンズマメしか食べていなかったムハンマドさんは、現実が全くの逆を示しているのに、財団がどうしてこのような数字を広められるのか理解ができない様子だった。彼は「もしもこの数字が正しいのであれば、私や隣人が丸1週間小麦粉ひとすくいを分け合うことは決してなかったでしょう」と言い、虚空を見つめた。
味わわれることはなかった30食
地元の会社で現場作業員をしていたアムジャド・クルディーさんはさらに正確な批判を行った。「約1か月前、複数の米国企業が6,600万食を配給したとの声明を発表しました。これは単純計算で、すべてのガザ住民に最低でも30食が行き渡ったということです」。
「ガザ人道財団」は7月8日にXのアカウントの投稿で、5月の活動開始以来、6,600万食以上を直接ガザのパレスチナ人に配ったと述べた。この発表について、クルディーさんは冷笑しながら、「しかし私は何も食料を受け取っていません。私も、私の千人もの知人、親戚、隣人もです。私たちの取り分はどこへ行ってしまったというのでしょうか?」と述べた。
さらに本紙によるインタビューのなかで、彼は一層真剣になり、「このデータは欺瞞的であるだけでなく、感情を害するものでもあります。ガザの人々がゆっくりと死にゆく現実のかたわらで、世界は彼らが食料を受け取っていると思っていることを耳にしてしまうことで、空腹という感情を掻き立てることになるのです」と語った。
「私の子供たちは飢えている」
「ガザ人道財団」は別のSNSで公開した発表で、ガザ地区の市民に連日約150万食を配給したと述べた。
ハーン・ユーニスの住人であるワーイル・アブー・マルズークさんはこのデータについて怒りをあらわにしながらこう述べた。「彼らがこうした支援について話し始めてからというもの、私が暮らしている避難民キャンプに何かが届いているのを見たことがありません。私たちはいくつかの小さな組織が配った物の残りや、まだ機能している数少ない地下トンネルを介して親戚が送ってくれたパンくずに頼っているのです」。
彼はため息をついて「彼らが発表する巨大な数字は人々の不満を増幅させています。豊富な食料があるように思わせているにもかかわらず、私たちは何一つ見つけられないからです。これは二重の欺瞞です。彼らは世界をだまし、私たち自身をもだましているのです」さらに彼は、本紙のインタビューのなかで、隣に座っており、衰弱しているように見える3人の子供たちを示して次のように述べた。「もしも本当に100万食も毎日配給しているのなら、この子たちに1食でも届いているはずではないでしょうか?」
偽りの経済
パレスチナの政治経済アナリストであるタイスィール・マグリビー氏は、この相違について広範な分析を提示した。「米国の支援団体やイスラエルのメディアは、5月9日からの1週間で約700万食を配給したと主張している。この数字は不正確で誇張されたものである」。
さらに「もしこの主張が真実であるなら、その週、ガザ住民全員が同週の間に3食受け取ったはずである。しかし実際は、住民の80%以上が何の食料も得ていない。私自身何も受け取っていないし、知り合いで1食でも受け取った人を知らない」と付け加えた。
そして経済面の説明を始め、「もしも毎日100万食の配給が行われていたならば、市場の物価は落ち着くのが自然である。しかし我々には逆のことが見えており、物価が急激に高騰している。今日の1キロ当たりの砂糖の値段は200シェケル(59米ドル)で、また1キロ当たりの小麦粉の値段は55シェケル(16米ドル)であり、これは発表されている分量が市場にも人にも届いていない証拠である」と述べた。
さらに本紙のインタビューのなかで、「ことはそれだけにとどまらず、彼らが食料の配給機関としている3センターの能力を測ると、その作業は不可能だということが分かる。それぞれのセンターは配給に1日あたり数千時間を要することとなり、これではつじつまが合わない」。
マグリビー氏は予算について「すべての報告書で、プロジェクトの予算が1億万米ドルであることが示されている。700万食にかかる費用を計算すると、その額では1日でなくなってしまう。どうして数千万食を配ったという主張を続けられるのだろうか?」と指摘した。
続けて以下のように述べた。「ここには3つの可能性がある。1つ目は数字が対外的なプロパガンダにのみ使われている可能性、2つ目は配給作業においてシステム上の不備や混乱が生じている可能性、もしくは支出額を正当化するために横領や窃盗があるという可能性だ」。
分析の最後に、「いまだ続く飢餓の結果、物価は高騰し市民は何の改善も感じていない。この巨大な数値は、飢えている人々を養ってはいないのである」と強調した。
社会的欺瞞
記者で社会アナリストのアーミル・フラー氏は経済的分析を超えて、メディアの側面についてこう語った。「メディアによる欺瞞の方法の一つには、数字をごまかして誇張することがある。限られた数の食料パックを配布したあとで、数百万食配付したと発表するのだ」。
さらに「組織の発信物を追うと、小さな食料箱がそれぞれ57食に相当すると述べており、これは誤解を招く誤った定義である。その箱には若干の食品が含まれているものの、完全な食事ではない」としつつ、「我々はそれぞれの食品目が完全に一体となっている状態を意図して『食事』と呼んでいるのに対して、同組織はひと袋の塩やパスタがそれぞれ独立した食事であるとみなしている。これは用語上の改ざんである」と主張した。
さらに続けて、「このごまかしの目的は支援者を満足させることだけでなく、ガザの苦しい現実を隠蔽することにある。彼らが有能な人々として現れるために数字を誇張するかたわらで、飢餓は悪化している」と述べた。
「私たちは日々人々の様子と共に生活してきたが、全ての兆候が米国の支援プログラムが始まったのちに飢餓が増大していることを示している。物価が高騰し、必要性も高まった」。同氏はこう明確に呼びかけて分析を終えた。「誰一人として満足させられないような欺瞞的な数字ではなく、栄養失調率の低下や物価の低下など、より信頼性のある別の尺度が必要です」。
失敗したプロパガンダ
メディアと心理戦の教授であるイヤード・フラー氏は、起きていることが「不正なシステムの一部」であるという見解を示した。同氏は「GHFという組織はイスラエルの軍事体系に属しており、人道的というより政治的な機関だ。米国の大統領やその他の者によって公表された数字はプロパガンダでしかない」と語った。
さらに「このプロパガンダでさえ人々を納得させられなかった。ガザの人々だけでなく現状を知っている支援者らすらも納得させられなかった。しかしそれは、この組織を国連に代わる存在として見せるための試みなのである」と加えた。
同氏は「かつて国連は、ガザ地区内の数百か所の地点に支援を届けていたが、今日我々が話しているのはたったの4か所の配給センターについてのみであり、そこでは人々が上によって殺されている」と主張した。
さらに「これらの数字は不正確であるだけでなく、危機を悪化させる因子となった。イスラエルが同財団を支援を受け入れるための唯一の窓口とすることによって、状況はより悪くなった」と指摘した。
最後に、「起こっていることは解決ではなく、むしろそれ自体が問題である。財団が惨状を美化するためにプロパガンダを用いている一方で、実態は、人々が依然として飢えており、1,000人以上の人々が配給センターでで殺された、いうことだ」と述べた。
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翻訳者:田中友萌
記事ID:60673