
タイイプ・エルドアン大統領は昨日ホワイトハウスを訪問し、米国ドナルド・トランプ大統領との間でガザ地区、シリア、ロシア・ウクライナ戦争、F-35・F-16型戦闘機の購入などの重要な課題について話し合った。トランプ氏は会談冒頭の会見で、エルドアン氏を「世界でとても尊敬すべき」との言葉で褒め称えた。
タイイプ・エルドアン大統領は、米国ドナルド・トランプ大統領とホワイトハウスで会談を行った。エルドアン氏が滞在するブレアハウスを出発し到着したホワイトハウスの庭では、式典のセッティングが完了していた。エルドアン氏は公式の式典でトランプ氏に迎えられた。エルドアン氏は政府専用車を降り、トランプ氏と握手をし報道陣に挨拶した。二人はその後オーバルオフィスに移り、会談に先立って報道陣の質問に答えた。
エルドアン氏は、この訪問が国連総会と同時期に実現したことをとても幸せに思うと述べたうえで、次のように続けた。
■異なるプロセス
「親愛なるトランプ大統領の第1次政権と第2次政権で、トルコ・米国関係はそれぞれ異なるプロセスを歩んでいる。F-35、F-16、ハルクバンクなどに関する両国間の関係について、今日込み入った話し合いの機会を得られると信じている。ヘイベリアダ神学校の件についてどのような話になっても、我々はそれを実行し続ける。帰国後ヴァルソロメオス総主教と話し合う機会を作る」
■難局を越える
エルドアン氏はある記者の「あなたはトランプ大統領が平和への努力を示してきたことについて以前から言及してきた大統領だ。地域における多くの指導者と会談を行っている。今後はどのように努力できるか」という質問に対し「これを信じているから言える。共に手を取り合って地域における難局を乗り越えられると信じている」と答えた。
■CAATSA(対敵制裁法)の廃止
トランプ氏は「エルドアン氏は大規模な軍を組織しており、彼をホワイトハウスに迎えることができて光栄だ」と述べ、次のように続けた。「F-35について話し合う。私はうまくいくと思う。F-35を見たいだろう。我々はとても真剣に話し合っている。ここには重要な事項がある。これらについても話し合う。よい会談になったならば、CAATSAによる制裁をすぐに解除できる」
■とても尊敬している
「エルドアン大統領とは長きに渡っての友人だ。とても尊敬できる人であり、彼の国やヨーロッパ全体、世界全体で非常に敬意を持って見られている。私もこの人をとても尊敬している。我々には長きにわたって良好な関係がある。トルコの大統領と直接会うことができてとても幸せだ。私の隣にいる人はとても厳しい。とても厳しく、彼の国でとても良い仕事をしている。両国間の通商についても話し合う。我々はトルコと多くの分野で協働している。トルコは素晴らしい製品を生産している。F-35についても話し合う。私はこの話し合いが成功すると思っている」
■ガザ地区に関する進展があるだろう
「ガザ地区についても話す。(国連総会でエルドアン大統領といくつかのムスリム国家の指導者がガザ地区に関する首脳会議を実施したことを指し)地域の指導者らと素晴らしい会談を行った。我々はここで合意に近づいている。人質を救出する。ガザ地区に関する進展があるだろう。今日その可能性がある。サウジアラビアとは良い話し合いを行った。各国の指導者らと素晴らしい会談を行った。イスラエルとも会談を行う。これができることを信じている。人質を救出したい。米国人の人質もいる」
■対敵制裁法による制裁
米国は、2021年にトルコがロシアからS-400ミサイル防衛システムを購入したことを理由に、トルコに対し対敵制裁法の制裁を科すことを決定した。
■ロシアへ:もう止まる必要がある
トランプ氏はロシア・ウクライナ戦争について次のように話した。「エルドアン大統領は両陣営から尊敬を集めている。私も彼を尊敬している。彼は中立であることを望んでいる。非常に中庸だ。彼が今できるただ1つのことは、ロシアから石油を輸入しないことだ。彼はプーチン大統領をよく知っている。私は7つの戦争を停戦へと導いた。この戦争も簡単だと思っていたが、そうではなかった。ロシアは何百万ドル規模もの武器を使用したが、正反対に何も得られなかった。経済の状況は非常に悪い。何千人もの人々を理由もなしに死なせている。私はもう止まる必要があると考えている。NATOがロシアから完全に手を引かなかったことが失望を招いた。(その時に)私が大統領だったならば、この戦争は起きなかっただろう」
■トルコはシリアで勝利
米国のトランプ大統領は、シリアについても次のように述べた。「エルドアン大統領は、シリアでの旧体制転覆戦争を成功に導いた張本人だ。彼はシリアを救った。私は(シリアへの)制裁を解除した。(シリアでの)勝利に導いたのはエルドアン氏だ。これはトルコにとっても勝利だ。エルドアン氏の要望に応じ、制裁を解除した」
■「会談は素晴らしかった」
両国の指導者による会談は2時間15分続いた。通常であればドナルド・トランプ大統領への来客はホワイトハウスの儀典長が見送るが、エルドアン氏とトルコの訪問団はドナルド・トランプ大統領が直接見送った。トランプ氏はトルコの訪問団の全ての大臣と1人1人握手を交わした。訪問団が出発した後、報道陣から「会談はどうでしたか?」と質問を受けたトランプ大統領は「Great!」あるいは「Harika!」と返答した。
■メモ
・誠実な出迎え
タイイプ・エルドアン大統領は、米国ドナルド・トランプ大統領にホワイトハウスの公式式典で迎えられた。トランプ氏は、エルドアン氏の乗った車がホワイトハウスの庭園に入るまで数分間起立して待ち、報道陣に挨拶した。専用車から降りたエルドアン氏はトランプ氏と握手し、報道陣に挨拶し、その後トランプ氏と建物内へ入った。
・素晴らしい男よ、調子はいかがか
エルドアン・トランプ両氏は会談の前に、報道陣に公開されたエリアで隣り合って座り、両国の代表団が向かい合って座った。米国側はJ・D・バンス副大統領、マルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグセス国防長官が、トルコ側はハカン・フィダン外務大臣、ヤシャル・ギュレル国防大臣、アルパルスラン・バイラクタル・エネルギー大臣が出席した。トルコの代表団には、イブラヒム・カルン国家諜報局長も参加した。トランプ氏はエルドアン氏と握手を交わし「素晴らしい男よ、調子はいかがか」と声をかけた。トランプ氏は頻繁にエルドアン氏を褒める言葉を発していた。
・最初の質問はCNNトルコから
トランプはオーバルオフィスにいた報道陣のうち、CNNトルコの米国特派員であるユヌス・パクソイ記者に最初の質問の権利を与えた。ユヌス・パクソイ記者の質問の後、ドナルド・トランプ大統領とその部屋にいた人々が笑いに包まれたシーンがあった。CNNトルコの米国特派員であるユヌス・パクソイ記者がトランプ大統領に対し「あなたはオバマ政権やバイデン政権が数多くの愚かな決定を下したと言った。あなたが挙げた例の1つはこのようなものだ。トルコにパトリオットミサイルを売らなかったことが、トルコのF-35型戦闘機プログラムから除外された原因となった。この失敗を帳消しにするために何ができるのか」と質問を向けた。
トランプ「君はどこの国からだ?」
ユヌス・パクソイ「トルコだ」
トランプ「どこで働いている?」
ユヌス・パクソイ「CNNトルコだ」
部屋にいた人々が笑いに包まれるきっかけとなったシーンの後、トランプ大統領はユヌス・パクソイ記者を示して米国・CNNテレビを引き合いに出し「CNNは嫌いだが、君は見上げたものだ」と言った。
報道陣からの質問を受け続けたトランプ氏は、ユヌス・パクソイ記者が2つ目の質問を希望したのに対し「私はこの男を気に入った。CNNはフェイクニュースを作るが、彼はCNNトルコの人だ」と述べ、パクソイ記者に再び発言の機会を与えた。トランプ氏は、パクソイ記者の「あなたはシリアの未来がエルドアン大統領の手にかかっているとおっしゃった。シリアについてなにかコメントはあるか」という質問に対し「シリアでの勝利に導いたのはエルドアン氏だ。シリアを旧体制の指導者から救ったのも彼だ。これはエルドアン氏の成功であり、トルコの成功だ。彼らは2000年もの間シリアを手中に収めようとしたができなかった。しかしエルドアン氏はこれを成功させた。私は、彼の功績が受け入れられるべきだと思う。私は彼に功績を受け入れるようにと言った」と述べた。
・米国との原子力分野での協力
トルコ・米国間で戦略的民生原子力協力覚書が調印された。アルパルスラン・バイラクタル・エネルギー天然資源大臣は会見で「トルコ・米国間の根本的かつ複合的な協働を、原子力エネルギーの分野でより深化させる新たなプロセスを始動させた。会談の後、マルコ・ルビオ国務長官と共に、両国大統領の前で戦略的民生原子力協力覚書に署名した」と述べた。
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翻訳者:神谷亮平
記事ID:60841