イラク・クルド自治政府、総選挙前にトルコ語解禁

2025年10月10日付 Cumhuriyet 紙

IKBYリーダーであるバルザーニー氏のクルディスタン民主党(KDP)は、イラクで11月に行われる予定の総選挙を前に、「トルコ語の広告」を初めて選挙運動で使用した。
この動きは、過去から現在に至るまで、イラクのトルコ系の人々に対して、母語に関して適用された圧力や制限を思い出させる。


イラク・クルド自治政府(IKBY)を支配下におき、マスウード・バルザーニー元大統領が党首を務めるクルディスタン民主党(KDP)が、10月3日に始まった選挙運動において「トルコ語の広告」の使用を許可した。

アルビールの大通りに掲げられたKDPの黄色い広告に、トルコ語で「パートナーシップ、バランスと調和」という言葉が党のロゴの横に並んだ。

■バルザーニー党首を支持するトルクメン人政治家は満足

KDPのこの動きは、かつてイラク・トルクメン戦線(ITC)に対抗するために設立され、バルザーニー党首に近いトルクメン改革党(TRP)から好意的に受け入れられた。

IKBY議会で、TRPを率いているミュナ・カフヴェジ議員は、マスウード・バルザーニー党首がいつも「共生の文化を守っている」と強調し、話題の動きを次のように主張した:

「親愛なるマスウード・バルザーニー党首のクルディスタン民主党は、いつも共に、連帯して全ての民族グループの権利を守る考えで行動しています。選挙広告にトルコ語が用いられたことは、トルクメン人たちの第2の民族の地位を強化するとともに、トルクメン人の権利がクルドの兄弟たちと同様に守られていることを示します。私たちの望みは、トルクメン人が権利を獲得し、選挙が平和な雰囲気で行われることです。」

■トルクメン改革党

2005年に設立されたTRPは、イラク国内のトルコ系の政治運動の母体となっているITCが単一中心的で、狭小で、伝統的であると批判している;アメリカによるイラク侵攻の後、「新たな均衡に適応できなかった」と主張した。

IKBYの領域で活動をしている党は、思想傾向として改革主義と自由主義に区分されている。IKBYと強固な関係を築いている党で、唯一知られている名前であるミュナ・カフヴェジ議員は、クルディスタン議会の議長秘書としても務めを果たしている。

党には、IKBYにおける強力な基盤はない。

■「キルクークにも掲げよ…」

カフヴェジ議員は、メディアへの声明で、トルコ語の広告はアルビールだけでなく、トルコ系の人々が多く暮らす他の地域でも見られることが必要だと述べ、次のように語った:

「この広告は現時点で、アルビールだけで目にしました。私たちの望みは、キルクークを始めトルクメン人が暮らす他の土地でもこのような広告が掲げられることです。なぜならば、トルクメン人の存在と文化を守ることは、これらの土地で共に生きることに対する最も大事な指標だからです。」

バルザーニー氏を支持するTRPのこの声明に対しITCは、クルド自治政府に苛烈な批判の矛先を向けている。

■トルコ系イラク人たちの要求

この批判の念頭には、トルコ系イラク人たちが経験した政治と行政上の、そして帰属意識の問題、IKBYで意思決定の仕組みから外され、地域の人口統計がバルザーニー政権によって組織的に変えられてしまうことがある。

ITCは、KDP政権とその協力者の行いが、トルコ系の人々が居住する土地において治安維持活動を拡大させ、地域における歴史的なトルコ系の人々の存在を弱めていると主張し、この状況を「静かな同化」と性格づけている。

他に、IKBYがトルコ系の学校に十分な支援をしていないこと、トルコ系の子供たちが母語で教育を受ける権利が慣例で制限されていること;同様の形で、政府機関においてトルコ語を公式言語として使用する権利の適用が無視されていることが批判されている。

全てのこれらの要求を目の前に突きつけられると、バルザーニー党首の「トルコ語広告」運動は、シンプルに選挙戦略という以外何ものでもない。


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翻訳者:丸山 礼
記事ID:60974