トリガー・メカニズムおよび国連の対イラン制裁再開計画は、実際には、死んだ状態で生まれてきた新生児のように、機能不全状態で発動した。
【執筆者:アッバース・サリーミー・ナミーン-政治問題研究者】
国際的なパフォーマーの一部によってトリガー・メカニズムの発動についての問題が提起された現況下では、我々は現場での変化よりも、心理的な作戦やメディアによる雰囲気醸成に直面していると考えられる。
実際、国連の枠組みの中で提起される制裁は、その強度や制裁範囲の観点から、アメリカの一方的な制裁と比べられるものでは無い。これまでも合衆国による制裁ははるかに激しく、広範囲にわたって課されてきた。そのため、現在行われていることは、法的または経済的に即座に影響があるというよりも、心理的なレバー(圧力をかける手段)として利用されている。
トリガー・メカニズムは、当初から既に、国際法的観点から深刻な欠陥を抱えており、実行段階においても世界的な合意を得ていない。中国とロシアがこのメカニズムに対して明白に反対の立場を示したことや、この2カ国がイランとの協力を正式に表明したことは、実際に対イランの世界的な合意を阻む大きな障害となっている。この二つの国連安全保障理事会常任理事国が、拒否権を行使して明白にその方法を法的違反であるとしたとき、他国は法的正当性や執行上の正当性に関して意見を述べることは出来ない。こうした合意の欠如は、このプロセスの心理的影響やメディアによる影響すらをもほとんど無効化している。為替レートが急騰するといった予測も、ほぼ誇張的で、実際には1ドル150万トマーンまで高騰することはなかった。そして、イラン社会もこのような脅迫を真に受けない姿勢を示した。
このような状況において、イランにとっての好機が訪れており、綿密な計画をもってそれを適切にコントロールし、自国の利益のために利用する必要がある。このうち最も重要な機会の一つは、安全保障理事会における大国の亀裂を深化させることである。中国とロシアの明確な立場は、一つの外交の拠り所として理解されるべきで、我が国の政府はこの亀裂を強化するべきである。これらの国によって示される反対の立場を真に捉え、積極的な外交を設計することで、西側諸国の目的達成に対する大きな障害を創出することができる。
―(2)に続く―
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翻訳者:KY
記事ID:61012