モロッコ:西サハラに米主導の新局面が生じる

2025年10月28日付 al-Quds al-Arabi 紙

■西サハラ紛争に関する米国の立場が欧州に対するアルジェリアの圧力を緩和

【ロンドン:本紙】

米国が西サハラ問題の解決策として「自治案」を擁護したことにより、アルジェリアが欧州の一部諸国、なかでもスペインとフランスにかけてきた圧力が和らいだ。両国がモロッコの主権承認や自治案支持に踏み切ったことでアルジェリアとの関係に大きな亀裂が生じてきた経緯がある。

米国はモロッコの西サハラ主権を認めているが、今回、国連安全保障理事会に提出する決議案の起草にあたり、モロッコとポリサリオ戦線の交渉を「自治案」を土台に行う必要性を盛り込み、「真の自治」を明確にうたった。ドナルド・トランプ大統領は2020年12月にモロッコ主権を承認したものの、当時の政権には自治案を解決策として安保理に提案する時間的余裕はなく、その後のジョー・バイデン政権も承認を維持しただけで、この点に関する発展的なイニシアチブはとってこなかった。

アルジェリアは今回の米国の動きを批判したが、その口調は抑制的で、ワシントンのアルジェリア大使の召還や対米輸入の停止には踏み切らなかった。これは、西サハラをめぐる影響力の大きい国々、とりわけフランスとスペインに対して取ってきた措置とは対照的である。

アルジェリアは2022年、スペイン政府がモロッコ寄りの立場を示したとして駐スペイン大使を召還し、対スペイン輸入を停止した。ペドロ・サンチェス首相が自治案を現実的解決と位置づけたことが背景にあり、この危機は約2年続いたのち、大使の復帰と輸入再開に至っている。

フランスが昨年モロッコの主権を承認すると、アルジェリアは同年7月30日に駐仏大使を召還し、首脳相互訪問の延期や仏企業との契約の取り消しを行い、イタリアやドイツへの軸足シフトを進めた。

もっとも、今回は事情が異なる。アルジェリアは、意外性のある対応で報復にも出ることで知られるトランプ氏が率いる米国には強い調子で噛みつきにくい。むしろ、ロシアと中国の立場を当てにして、米国が安保理に提出した決議案の文言に影響を及ぼそうとしている。西サハラをめぐる新決議は今週にも採択が見込まれる。

スペイン政府に近い高位の政治筋は、米国の姿勢がスペインやフランス、さらには欧州連合に対するアルジェリアの圧力を和らげていると指摘する。自治案の国際的支援という流れを現在主導しているのは米国であるとの認識がアルジェリア側にも共有されつつあるためだ。

実際、西側諸国の大勢は、米国やフランスのようにモロッコ主権を支持するか、少なくとも自治案を最適解とみなしており、後者は事実上の主権承認に等しい。こうした潮流のもとで、西側が自治案支持を強め、アルジェリアがこれに背を向け続けるなら、この半世紀以上続く難題において、アルジェリアは西側全体と対峙する構図が一段と鮮明になる。


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翻訳者:国際メディア情報センター
記事ID:61075