憲法改正と新憲法制定という論争(9-39-1-1, 2-1)
2013年10月07日付 The Voice 紙
2008年憲法を、改正するのか、それとも廃止し新憲法を制定するのかという問題が、ミャンマーの政治を揺さぶっている。一大勢力を有する国民民主連盟(NLD)は、憲法変更に向け、民意を問うと発表し、ミャンマー政治に詳しい各方面から批判の声が上がっていた。
そのさなかに、憲法を一から制定しなおすことを目指す少数民族諸政党との協議の結果、改正派と新憲法制定派に分かれるので、国民の意志を集約し、その結果を連邦議会が組織した憲法検討合同委員会に提出すると、国民民主連盟党首ドー・アウンサンスーチーが発言した。
民意を集約するというのは、投票による意思表示を言うのではなく、NLDが少数民族諸地域に出向いて、草の根的に人々に会い、憲法を説明して意見を集約することだと同氏は説明した。「議会を通じて行われることが、最も民主的な方法である」と氏は述べた。
ミャンマーの民主化への移行期に、憲法改正問題に取り組むことと、2008年憲法に記された国民の権利が十分に行き渡るよう仕事をすることと、どちらが本来なすべきことなのか、という疑問も生じてくる。ただ現行憲法には、国民が享受できる権利そのものがいまだ盛りこまれていないということも確かだ。
いずれにせよ、少数民族諸組織と諸政党は、現行憲法の変更に向け準備している。ただ立場はそれぞれに異なり、どれ一つとして同じではない。
憲法を変更するためには、新憲法の制定ではなく、議会の承認を得た憲法改正の手続きによるしか、現実的な選択肢はないと、カレン民族同盟(KNU)中央執行委員会委員パドーマンニェインマウンは見解を述べた。
ヤカイン民主党(ALD)議長ウー・エーターアウンは、「議会内でどんな改正案が出るのかを見守っている状況だ、投票数に基づき改正できないとなったらどうなるか。一から制定し直すというのはもっと困難だ。国会内における国軍の立場をまず低減させる必要がある。」と述べる。
国民民主勢力(NFD)とシャン民族民主党(SNDP)は、憲法改正のため、議会内で政党間の議論を通じてだされた論点を、改正事項としてまとめ、発表している。
憲法改正のみが、現実的な政治路線であり、新憲法を起草するとなれば、国軍と真っ向から対立することになると、ミャンマー政治の専門家の一部は口をそろえて言う。
議員の数で、最大議席数を獲得している連邦団結発展党(USDP)は、憲法検討作業に取り掛かっており、地域と州の権限の修正を中心に提出する旨、同党の副議長ウー・テーウーは述べている。
国民と政府の間の誓約ともいうべき憲法を改正することは、現在大多数の議席を得ている政党にとっても、威信に関わる問題である。[憲法の規定により]当初から4分の一の議席を得ている国軍にとっても同様である。現在の議会で、憲法を改正すると言う場合、野党である国民民主連盟と少数民族諸政党が、与党である連邦団結発展党を投票数で上回らねばならないが、それは容易なことではない。
88世代の元学生リーダーの一人ウー・ミャエーは、議会における憲法改正について、「国軍兵士の動向にかかっている。一から修正するとなれば、彼らを傷つける項目も入るようになる、そうなれば、議会内部から進めても、成功する可能性は少ない」とコメントしている。
憲法の変更についての国民の意志は、議会の委員会に影響を及ぼすと信じる、憲法の変更は、全議席の25パーセントを占める国軍兵士と与党連邦団結発展党がそれを望むか否かにかかっており、現時点で見極めるには時期尚早である、とドー・アウンサンスーチーは述べている。
国民民主連盟中央委員会の書記長ウー・ニャンウィンは、「やるべき時に、やるべきことをやるだけだ。投票で、決定を下すのが議会の仕事。NLDは数を数えて、仕事はしない。議会も、人々の利益にかなうよう協力して事に当たると信じている。」と述べた。
憲法改正のための憲法検討委員会は、7月最終週に連邦議会の承認を得て組織された。
憲法検討委員会に加わっている政党議員は、憲法の条文の各々について、小委員会を組織し検討するのであり、それら小委員会の見解を10月中旬に連邦議会に提出しなければならないことが決定している。
連邦議会内に至った憲法改正の手続きを、諸政党と一部の少数民族政党が承諾しているが、11の少数民族武装勢力により組織された統一民族連邦評議会(UNFC)は、それを受け入れていない。UNFCも独自の憲法草案と現行憲法を比較検討し解答を出す準備をしている。
現在のミャンマー政治において、大きな潮流となっている憲法改正問題はどの路線をたどるべきなのか、まだ今それが問われている最中である。
( 翻訳者:原田正美 )
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