「壁に耳」を復活させるべきか否か(9-49-1-1,2-1,4-2)
2013年12月15日付 The Voice 紙

 かつて軍情報局長であったキンニュン元大将が約2週間前に行われた書籍の出版記念式典で、国家情報局を再編成すべきであると語った。

 彼が軍情報機関の長として任に就いていたころ、「あらゆる壁に耳がある」と同氏の率いる情報機関の活動を指して語ったことがあった。
 そのような発言は、反政府派の政治家たちの活動を絶えず監視しているという警告でもあった。
 再編成する情報機関が、歴代政府の常套手段であったように、反政府派の政治家たちの活動を絶えず監視する政府の手先となることを、反政府派政治家たちと一部の国会議員が懸念している。
 一方で、一部は再編成すべきであると支持している。
 「国家が存在するならば、情報機関というものもあるのが当然だ。国家の安全を確保するために、また諸外国の攻撃から身を守るためにもなければならない」と民族代表院議員ウー・ポウンミンアウンが意見を述べた。
 警察の公安部(Special Branch)や犯罪捜査局(Criminal Investigation Department)、軍の保安局(サラパ)、テロ行為対策部と情報提供者らをすでに置いているため、さらなる組織を編成する必要はないと反論する国会議員もいる。
 国民代表院議員ウー・イェートゥンは、「政府に反対する国民たちを敵と見なして、摘発し逮捕するためだけに活動をしている。昔からそうだった。今も同じだ。私たち国会議員のことすら、詳細に取り調べることがある」と、同氏が現に直面している情報機関の問題について語った。
 1988年民主化運動に伴う政治的変動の終結で、軍部が権力を掌握した後、チョースウェ元大将とキンニュン元大将らが先導して、軍情報機関を編成し直した。そして、国民民主連盟(NLD)と他の反政党の活動の一切を絶えず取り調べ、反政府派の人々の多くを法律条例にかこつけて、逮捕し投獄した。
 1990年から2004年までの期間に、軍の情報機関が、何百という政治活動家たちと反政府派党員を逮捕、投獄し、尋問の際に人権を侵害したと諸外国の人権活動家たちが批判した。
 その期間内に軍情報機関と国家情報局が逮捕・自宅軟禁をした政治犯の数は、国民民主連盟の指導者であるドー・アウンサンスーチーやウー・ウィンティンを含め千に達する、と政治犯釈放を求める支援団体は話すが、その規模についての統計を今日になってもまだ出すことができないでいる。
 テインセイン大統領のもとで、国家情報局、軍保安局、警察公安部などの組織が過去20年強のうちに逮捕した2300人以上の政治犯が釈放された。
 キンニュン元大将が局長として指揮していた国家情報局を、国家平和発展評議会政府が2004年に解体して、キンニュン将軍以下、国家情報局の幹部であったフラアウン准将、チョーハン准将、タントゥン准将、ミンゾー准将、チョーテイン准将、テインスウェ准将、キンアウン大佐、サンプィン大佐、ミンアウンチョー大佐らを逮捕した。
 テインスェ准将とキンアウン大佐を含む軍情報機関高官38名は、汚職や不正行為のかどで、20年から100年超の投獄刑がそれぞれ下された。
 ミャンマーでは、国家の安全のために情報機関を編成したが、1980年と2004年に2度、解体された。
 その後、国家情報局を解体してから軍保安局(サラパ)、内務省帰属の警察公安部(Special Branch)、テロ行為対策部を情報収集のために編成したことを公安部に勤務する人が語った。
 それらの組織があるゆえに、情報機関をさらにもうひとつ設置すべきではないこと、また国家の安全に関しては、国軍と警察があるため、国家情報局を組織する必要がないことを、88世代学生グループの指導者のひとりであり、国家情報局に逮捕されたことのあるウー・ミャーエーが語った。
 「国家の安全のための組織は、ひとつはあるべきだ。しかしながら、現在、国軍と警察がある。軍情報機関という組織はこの国にさほど利益をもたらしてはいない」とヤンゴン管区域政府ヤカイン問題担当大臣ウー・ゾーエーマウンが自身の見解を語った。
 ミャンマーでは、歴代政府が情報局を結成したが、汚職や政治への過度の介入のために二度も解体されたこと、その過程で国民に対して圧力をかけたため、国民は情報機関を恐れながら暮らさなければならなかったことを、同氏が語った。
 「人々が自由に活動できるようになっている民主化改革に歯止めをかけかねない」と国家情報局について、同氏が意見を述べた。
 ミャンマーで、軍と民生の双方に関わる情報機関が是が非でも設置されなければいけないこと、そのような組織が民主主義の母国であるイギリスやアメリカ合衆国でも設置されていることを、大統領府のスポークスマンであるウー・イェトゥッが語った。
 ミャンマーの情報機関は憲法に明記されている国民の基本的人権を侵害しないで国家の安全を保障できるよう編成されていることを同氏が補足した。
 大統領府のスポークスマンであるウー・イェトゥッがそのように情報機関は国民の基本的人権を侵害せずに活動すると話してはいるが、差当たり国会議員でさえ、未だに詳細に絶えず取り調べられていることを国民代表院議員ウー・イェトゥンが語った。
 「本当に彼らの立場から改革を行うことが正しいと考えるのであれば、大統領をはじめ政府閣僚らが公式に発表するべきだ。国民が恐怖や怯えなく自由に活動できるよう改革すると」と同氏が意見を述べた。
 国民の安全のために、情報局をさらに編成すべきか、編成すべきでないかという点は、武装組織や反政府派団体が要求している憲法改正と関連づけて考える必要があり、世界の先進民主主義国家の情報機関は文民統制のもとにだけあると、ミャンマー政治評論家ネータンマウンは言う。
 「憲法を改正することができてはじめて、本当の文民政府として確立することができる。そうして、文民統制のもとにある情報機関を実現することができる」と同氏が語った。
 現在の情報機関は治安維持の能力において問題があること、紛争や爆破事件などを取り調べることができないことを同氏が補足した。
 「正直に言えば、今のところ、情報機関は治安維持のために、まったく貢献できていない。相互の協力関係もみられない」と見解を説明した。
 いずれにせよ、国家情報局を再編成すべきか、すべきでないか、国会議員の間でも、まだ様々な考えがある。
 けれども、11月に開催されたヤンゴン管区域議会で、国民民主主義新党の管区域議会議員ウー・チョーが国家の安全を守りテロ行為を防止するために、国家情報局をできるかぎり早く再編成すべきであるという旨の動議を提出し、その動議を管区域政府から連邦議会に上げることになった、と管区域議会議長ウー・セインティンウィンが語った。
 そのため、情報局の再編成に関するニュースが大々的に報じられてきており、国会議員を含む反政府派の政党や民間組織の間では、以前の政府のように反政府派の活動を「まるで壁に耳がついているかのごとく」取り調べるようになるのではないかという疑惑が、過去の黒い影のように広がっている。
 「ミャンマーの情報機関のイメージは大変に悪い。大半の国民が情報機関というものを政府に異を唱える人や民主化のために活動する人を逮捕して抑圧する人たちと見ている」とネータンマウンが語った。

署名記事アウンボーボーシェイン

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( 翻訳者:松浦宇史 )
( 記事ID:473 )