アセアン文学賞受賞作『戦争の調査記録1975年1・2・3・4月』刊行
2016年05月29日付 VietnamPlus 紙
出版記念会にて。著者は左から2番目。
歴史資料小説『戦争の調査記録1975年1・2・3・4月』(チャン・マイ・ハイン著)は、幾分特別なところのある特別な作品である。
この作品の特別版をお披露目するにあたって、5月28日午前に開かれたハノイでの読者との交流会で、著者のチャン・マイ・ハイン氏は「この本を得ることができたのは、歴史の幸運と人生の縁によっている」と感懐を述べた。
「歴史の幸運」とは、著者が民族の対米抗戦に直接参加することができたことである。ベトナム通信社の特派員として著者は、フエからサイゴンまでの各都市のほとんどに進攻し解放した軍団の後に従い、幸運にも、独立宮殿における1975年4月30日昼の歴史的瞬間に立ちあい、目撃することができた。
「人生の縁」とは、「私には、この本を完成するために、助けてくれた非常に多くの人がいた」ことである。この本は1975年の春から「芽生えた」。「そのとき、私は32歳でしたが、歴史を復元するという熱い思いがありました」と著者チャン・マイ・ハイン氏は語った。
この作品は、その中に含まれている膨大な資料によって、「息がつまる」気持ちを読者に抱かせる。しかしまた、話の順序や展開によって、章回小説のように読者を魅了する。そこでは文学と歴史の境界は曖昧である。
『戦争の調査記録1975年1・2・3・4月』は、解放軍のフオックロンでの勝利(1975年1月)から独立宮殿での1975年4月30日昼の歴史的瞬間までの、ベトナム共和国政権最期の日々について書かれている。
その歴史的宿命の背景に、サイゴン政権の最高指導者やサイゴン軍のほとんどの将兵の姿が、鋭く的確な筆致で生き生きと描写されている・
戦争の変遷が、まるで長編のルポルタージュ文学のように、本の1ページずつに現れている。民族の偉大な抗米救国戦争は新奇なテーマというわけではなく、多くの大作家によってよく扱われてきた。
しかし、時間が経つにつれ、著者であるチャン・マイ・ハインは、客観的で淡々とした調子による「向こう側」からの視点や、詩人ヒュウ・ティン(ベトナム作家協会会長)がかつて認めたような「よく考えられ」て「とても深い」視点を選んだ。
言い換えれば、これは、貴重で膨大な資料による、戦争最期の数か月間のサイゴン政権が混乱・分裂し崩壊する過程のすべてに関しての詳細で全体的な素描である。資料の大半は原資料としての価値があり、彼が接触できた「向こう側」からの資料ともに、著者が戦場記者をしていた時に入手する縁があったものである。
『戦争の調査記録1975年1・2・3・4月』は、勝ち負けという概念を強調せず、正義に反することが必然的に崩壊する物語である。
「歴史上の出来事は1度しか起こらない、それと同じように各人の人生も1度しかない。しかし歴史の真の価値を理解し尽くし、一人の人間を正しく理解するためには時間が必要である。歴史と人生は常に、尽きることなく連続している流れのようである。今日現在の人生の中には、過去の基盤と貴重な精神的価値があり、同時に、将来の萌芽と強い生命力も含まれている」と、著者チャン・マイ・ハイン氏は述べた。
この作品は2014年に初めて読者の前に姿を現した。この第3版の中で、本書には人名リストと、1975年4月30日以降に著者が入手できた、参考にする価値がある21の原資料が付け加えられている。本書は国家政治出版社とタイハー書籍株式会社により発行された。
2016年末には英語訳版の『戦争の調査記録1975年1・2・3・4月』が読者にお目見えする予定だ。
それに先立ち、この作品は2014年ベトナム作家協会賞と2015年アセアン文学賞を受賞している。
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( 翻訳者:尾崎菜南、鈴木加奈、広瀬ないる )
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