(Article)より複雑困難になってきたミャンマー和平への道 (2017年5月16日 (1),15)
2017年05月16日付 The Voice 紙

  まだ全国停戦協定(NCA)に署名していない7つの少数民族武装組織が、2017年4月15日に、シャン州東北部ワ自治区のパンカン町で面会した。
 ミャンマーにいる全武装組織のうち最も勢力のあるワ州連合軍(UWSA)が主催した5日間の会議のおわりに、政治的対話、協議をするための新しい方法として、連邦政治協議対話委員会(UPNDC)を結成することを決めた。
 ミャンマーの複雑な民族和平事業過程において、重要な一歩である第2回21世紀ピンロン会議を5月24日に開催すると政府が発表する9日ほど前に、その決定が明らかになった。この決定は、ドー・アウンサンスーチー国家顧問が先頭に立って行っているネーピードーの和平計画が信用でき安心であることに関連した調査と再度の友好をもたらす可能性のある新たな方法と考えられる。

2月の代表会議

 NCAに署名していない9つの少数民族武装組織を束ね、大きな影響力を持つ統一民族連邦評議会(UNFC)メンバーとの代表会議を、2017年2月にワ自治区パンカンでUWSAが開催した際に、対話の新たな枠組みの基本事項を決定した。この会議で、カチン独立軍(KIA)とシャン州発展党(SSPP)が新たな合意事項に賛同した。
 この合意事項には2つの成果がある。1つは、NCAに署名していない組織の要求事項に関し、ネーピードー(訳者注:政府の意)に対して妥協できる状況へと推し進めることである。UNFCの公式な政治的議論のための委員会である政治交渉代表団(DPN)は、3月3日に連邦政府の和平委員会と会議を行った後、同代表団が長期にわたって要求していた9つの事柄についてネーピードーと基本的な点で合意したと発表した。
 2つ目は、NCAに署名していない少数民族武装組織の中では、署名するのを望むようになった集団と引き続き署名を望まない集団という2つに分裂したことである。興味深いことに、UNFCに加盟している5組織がNCAに署名する準備が整っていると、政府が3月30日に発表した。しかし、1か月たっても実現しなかった。実際のところは、現在、新モン州党(NMSP)とカレンニー民族進歩党(KNPP)の2組織のみがNCAに署名する意向がある。

なぜ新たな議論のための委員会ができあがったのか

 政府と軍が先頭に立って進めているNCA事業と距離を置き署名せずにいる武装組織が新しい政治的議論のための委員会を組織することは避けられないと反論が出る可能性があった。この裏には本当の理由が複数あった。
第1に、民主主義への完全な移行に関して話し合いが多く行われている間でさえ、現在ネーピードーに置かれた行政機能を文民と軍(国軍)という異なる2つの権力の中枢が制御している。少数民族武装組織との政治的議論の準備を文民政府が行っている時に、国軍は未署名の武装組織を自らの計画に沿って扱っている。明らかな出来事は、6か月前の北部連合勢力に対する一方的な軍事攻撃と、北部国境地域であるカチン州とシャン州の前線で戦力を引き続き拡大していることである。
このように決定を下せる二種類の原則枠組があることによる二つの結果として、ネーピードー(政府)と、未署名の少数民族武装勢力の間で重要な連携にすれ違いが生じ、ミャンマーと中国の国境一帯で戦闘が突然起こった。戦闘は未署名組織に対話会談計画から距離を取らせたのみならず、連携関係のすれ違いによっても和平の絶好の機会を潰した。
 未署名の組織の一部も、連邦政府からの混乱した合図を自分たちは常に受けており、その状況が混乱と言行不一致を生じさせたと述べた。そのほか、ドー・アウンサンスーチーは前大統領ウー・テインセインとは異なり軍に対して少ししか統制ができないという彼らの考えは弱り目に祟り目である。文民政府、国運、少数民族武装組織の複雑な三者関係の中に、つながりが2種類生じていることが、和平に重要な関係者らの信用を完全に侵してしまった。
 第2に、政府は未署名の組織との会談において円滑に進める能力などのある交渉人を加えられなかった。そのため、連絡の行き違いが多くなり、中国やUWSAなどの第三者が仲裁に入るという結果を招いた。現在、未署名の組織はあとから生まれた代わりの組織をネーピードー以外で選択肢が増えた信用すべき人々と見ている。そのほか、国軍から度々攻撃されているカチン州のKIA、コーカンのミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)、タアン/パラウン民族解放軍(TNLA)、ヤカイン州のアラカン軍(AA)などの組織もUWSAを現在の危険な状況のなかで治安を改善することのできる組織として見ている。
 第3に、未署名の組織をNCAに参加させるための餌を政府は十分に与えなかった。それは、政治対話の前にNCAへの署名を規定していたNCA事業計画のためである。未署名の組織は署名済みの組織とは異なり、自分たちと関係のある民族が居住する地域で地域レベルの政治会談を開くのを妨げられていたため、政治対話と関係のある地域一帯に住む地元の人々の熱意は行き場を失うことになった。KIAのように強力な武装組織は、自らの土台となっている基地拠点を失わないよう、地元の人々との協議なくしてNCAに署名する意思はないことをはっきりと知らせていた。

展望

 国軍は、他のどの和平計画にも同意できないとはっきり述べており、ドー・アウンサンスーチー率いる民間団体として、NCAの原則枠組みは、権限を与えられた任務全てを十分に果たすよう全力を尽くさなければならないだろう。
 対話計画は未署名の組織と署名済み組織の両方からの反論や遅れのために明らかに後退している。一方では、新委員会を組織することに同意した人たちを含むUNFC/DPNも、その代表として政府和平委員会と引き続き話し合っている。ゆえに、NCAは少数民族武装組織の一部から支持を得ているままである。現在まで豊かな戦略をもって指揮監督できていないミャンマーの和平実施機関は、見通しの良いUNPC/DPNのような仲裁者らを傷つけるような危険があり、中国やUWSAのような第三者としての仲裁者を優勢にする性質がある。                    
     

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( 翻訳者:鈴木将吾 )
( 記事ID:3448 )