なぜ細部に微妙さがある作品が国家書籍賞を受賞したのか?
2018年04月23日付 VietnamPlus 紙
第1回国家書籍賞C賞を受賞した『タカと竹籠の青年』
第1回国家書籍賞C賞を受賞した『タカと竹籠の青年』

 『タカと竹籠の青年』(ブイ・ヴィエット・シー著)という作品が反感をもたらす内容でありながらも第1回国家書籍賞C賞を受賞したことについての論争に関して、国家書籍賞評議会文学書籍委員会のグエン・ファン・ハック委員長は「この作品にはいくつかの細部に微妙さがあるが、評価の過程において、最終的な結論を出す前に、私たちは真剣に取り組み、丁寧に検討し総合的に評価した」と述べた。

   ショックを催す描写法
 
 『タカと竹籠の青年』は蒙古軍との戦いにおけるファム・グー・ラオと、チャン・カイン・ズー、チャン・フン・ダオなどの何人かの歴史的人物について書かれた歴史小説である。
 2018年国家書籍賞評議会の評価によれば、作品は簡潔で生き生きとしており、資料に耽溺せず軽やかで明快である。
 しかしこの『タカと竹籠の青年』(作家協会出版)という小説の37ページでは、著者のブイ・ヴィエット・シー氏はチャン・カイン・ズーと、ティエン・トゥイ姫(フン・ダオ王チャン・クオック・トゥアン[訳注:チャン・フン・ダオ]の長男であるフン・ヴォー王チャン・クオック・ギエンの妻)という2人の人物間の男女関係を描写した。
 多数の読者は、著者は軽薄な表現を使って、低俗に描写したとしている。「率直に言って、私はこれが歴史小説だなんて信じられません。もし小さい子どもたちがこの反感をもたらす文章を読んでしまうことがあるのなら、本当に心配です」と、トゥー・フーンさん(ハノイ市タイ・ホー区アウコー通り464番小路在住)。
 上記と同じ意見を持つグエン・ヴァン・ナムさん(ハノイ市バック・トゥー・リエム区カウヴォン通り1番路地在住)は、「国家書籍賞を授与されれば、その本の普及率は大幅に上昇するでしょう。たくさんの人々は国家級の賞のフィルターを信じ、この本を探し読むでしょう。しかし、私はこのようなみだらで耽溺した文章がある作品に賞が授与されたときは、本当に落胆しました」と述べた。
 グエン・ヴァン・ナンさんは、よりこの問題について具体的に述べた。実際では、セクシュアリティは芸術作品の中では「禁止事項」ではない。たくさんの映画や文学作品でもこの問題について言及している、とのことである。
 しかし、芸術と低俗は紙一重である。「もし著者が慎重に扱わなければ、とても反感をまねきます。別に赤裸々で卑俗な描写をしなくても、読者は著者が何を言いたいのかわかるのです」と、チャン・ヴァン・ナムさんは述べた。

   それ以前の「フィルター」を信じる

 2018年国家書籍賞という栄誉に輝いた『タカと竹籠の青年』を選んだ理由について、グエン・ファン・ハック氏は「この本ははっきりとした主題を持っており、祖先の時代の外敵に対抗した英雄伝説を讃えていて、政治や思想面について違反はない」としている。
 「それに、私自身は現在のベトナム文学全体の中で見ると、これは非常に優秀で注目すべき作品、とまではいかないが、スラスラと読みやすいと思った。いくつかの男女の性的な場面の描写は、本の総合的な内容や思想、主題に影響を与えていない。私たちは賞を授与をする決断を下す前に審査し、丁寧に検討した」と、グエン・ファン・ハック氏は述べた。
 国家書籍賞評議会文学書籍委員長は、この問題についてより詳しく分析し、歴史的には、チャン・カイン・ズーも実際、私生活で奔放な人物であったと話した。
 「これまで、読者はよく英雄たちのキャラクター性を、歴史に名を残した戦果の角度から想像し、私生活という角度から考えることは少なかった。そのため読者がこの本の中に描写された箇所に反応することは理解に難くない。それに、東アジアの人々の伝統的な文化では、セクシュアリティや性行為に関係する問題にはためらいがある。しかし、歴史的人物について書かれた本であるのに、この本にあるような性的な場面の詳細な描写をたくさん使用することもよくないことではある」と、グエン・ファン・ハック氏は述べた。
 また別の角度から、国家書籍賞評議会文学書籍委員長曰く、『タカと竹籠の青年』という作品は今回授与される以前にベトナム作家協会の2011―2015年の短編小説を書くコンテストでB賞を受賞した。「それは権威ある賞の1つであり、私たちはこの”フィルター”を信じる」ハック氏は話した。

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( 翻訳者:佐藤明子 )
( 記事ID:4334 )